2021年12月の読書記録

2022年01月05日(水) 14:05

本&映画の紹介

旅先のステキホテルに置かれていた本の借り読みも手伝って、12月の2桁読書も無事に達成です!

お勉強本も良いバランスで読めて、1年の締めくくりとしては上々でした。『スタンフォードの権力のレッスン』と『反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体』を続けて読んだのは特に良かった。知っているようで知らない国、大国アメリカに生きる人たちについての理解が進みました。

小説は『シンセミア』の上下巻を仕上げて、『ニッポンの文学』から抜粋した月一ノルマ本を読了しました。シンセミア自体は悪人と変態のオンパレードで、もしかしてこんな田舎が未だに存在するのかな?と考えると怖くなるレベルでしたが、その「ありそう」感がページを捲る手を止めさせてくれませんでした。つまり、おもしろかった。続編は2022年中に必ず片付けます。

選書サービスの走りとなった「一万円選書」が生まれた経緯を教えてくれる『一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』には、選書されることの多い名著がたくさん綴られているので、当選待ちの皆さんには特におすすめ。2022年もたくさん読書して、豊かな一年にしよう!と思わせてくれる、締めに最高の一冊でした。



読んだ本の数:12
読んだページ数:3708
ナイス数:62

シンセミア(上)シンセミア(上)
『ニッポンの文学』からの抜粋12冊目。上下巻なので月初めからしっかり読み始めたぞ。とりあえず、登場人物が多くて覚えるのに必死。群像劇ってそういうヤツでした笑。そして、全員イカれてる。中学生から爺さんまで全員イッちゃってます。いちばんの変態が交番のおまわりさんっていうのも悲しい。間を置くと、せっかく覚えた登場人物たちを忘れてしまいそうで止められない。ピストルを拾ってしまった少年がその後どうなったのかも気になってやめられない。「文学」の定義が自分の中で揺らいできてるけど、気にせず下巻へ突入します。
読了日:12月02日 著者:阿部 和重

スタンフォードの権力のレッスンスタンフォードの権力のレッスン
権力は「影響力」ではない。社会をコントロールする能力であり、権力の交換をめぐって交渉が行われる文脈に完全に依存する。権力を小さく見せてこそ発揮する文脈だってもちろんある。要は使い方。そうは考えない人が権力を握り、使い方を間違えたところに悲劇が起こる。与益原則に従うあたたかい自分を「演じ」られるリーダーこそが権力を持つ立場につくべきだと、意外だけどそういう話。言われてみれば「ありたい自分を演じ」ながら右往左往するのが人生ですものね。つまり、日本の政治家に足りないのは演技力なのかもしれない笑。
読了日:12月04日 著者:デボラ・グルーンフェルド

引き出す力; 相手が思わず話してしまうひとつ上の「聞く力」引き出す力; 相手が思わず話してしまうひとつ上の「聞く力」
取材をして記事にまとめるために「読者が読んでおもしろい話」を引き出すのと、ものづくりに活かすために「つくり手のためのヒント」をユーザーから引き出すのは似て非なるものなので、このとおりにやっちゃダメ!という面もある。が、とは言えどちらも「コミュニケーション」ではあるので、心構えや場づくりの秘訣などはそっくりそのままだったりもする。「幹の質問」と「枝葉の質問」というメタファはちょっと参考にさせてもらっちゃおう。調査現場で培った(似たような)スキルを、わたしもこのくらいやさしく書けるようになりたいです。
読了日:12月07日 著者:上阪徹

シンセミア(下)シンセミア(下)
『ニッポンの文学』からの抜粋13冊目にしてラスト。いったいどうやって終わらせるのか?と興奮しながら読んでいると、変態おまわりがやっちまったあたりからものすごい勢いで死人の山が築かれていき、開いた口が塞がらない状態での読了。大鼠の視点が入ってきたあたり、もうコレ以上登場人物(鼠だけど…)を増やしてくれるな!と思ったが、彼の命も長くなかった。結局金森年生の田宮家への執着の背景が語られずじまいなところに、阿部和重として再登場してきたラストの伏線が気になりすぎる。けど、疲れたからしばらく休みたい笑。
読了日:12月11日 著者:阿部 和重

忍びの滋賀: いつも京都の日陰で忍びの滋賀: いつも京都の日陰で
京都旅行の一部を滋賀滞在にしまして、そのお宿にシレッとあったので読んでみましたところ、腹がよじれる面白さでした笑。音的に千葉や佐賀と間違われやすいし、京都の影に隠れてるのも地理的に仕方ないし、その宿命は源氏物語にも描かれるくらいでして。ぶっちゃけ特産品もパッとしないし(失礼)。でも、来てみて分かるけど、かなり「ちょうどいい」感じ。都会すぎず田舎すぎず、どちらへのアクセスも良くて行きたきゃ行ける。最高じゃん?老後の落ち着き先候補として急浮上したよ。
読了日:12月19日 著者:姫野 カオルコ

フィリップ・ワイズベッカーの郷土玩具十二支めぐりフィリップ・ワイズベッカーの郷土玩具十二支めぐり
京都は嵐山のお宿にありましてスルリと読了。各地に残る郷土玩具を外国人が紹介する趣向はおもしろいですが、現代の日本人には響かなくなってしまった歴史あるアレコレを後世に残すための仕掛けとしては足りなそうな雰囲気でした。とりあえず、買ってきて我が家に飾っても良いなぁと思ったのは、栃木のきびがら細工オンリー。「玩具」という枠組みで考えている限り、伸び代は小さくならざるを得ないんだろうなぁ…と思った。
読了日:12月20日 著者:フィリップ・ワイズベッカー

物物物物
京都は嵐山のホテルで借り読み。蒐集家も写真家もエッセイストも誰一人知らない笑。でも楽しかった!いちばん素敵だったのは、71ページの裁縫道具。鳥のクチバシに布を挟んで仮縫いとかしたいぞ!アメリカで買ったイギリス製の犬なんて、スウェーデンで見つけてたら絶対買ってる。見れば見るほど落武者にしか見えないけど笑、こういうペアの置き物を探し回ってたのは良い思い出です。145ページのクリップも欲しいなー。こういうアンティークを上手に見つけるオバサンになりたい。
読了日:12月20日 著者:猪熊 弦一郎,ホンマ タカシ,岡尾 美代子,堀江 敏幸

スープスープ
レシピ本というより、エッセイ。著者がそのレシピと出会ったときのエピソードが語られていて、読み物としてふつうに楽しかった。しかも私は汁物が好き。されど旦那曰く「汁物は一品に換算されない」と言うので気合を入れて作る気になれないのがスープ。でも、ミネストローネつくりたいなぁ。はまぐりのスープも飲みたいなぁ。カリフラワーもなんとかしたいわぁ。と、お料理それほど好きじゃないオバさんのお料理欲を十二分に掻き立ててくれました。新作スープで旦那をギャフンと言わせたい笑。
読了日:12月21日 著者:細川 亜衣

ヨーガン レールとババグーリを探しにいくヨーガン レールとババグーリを探しにいく
大学を卒業するときに母が買ってくれたヨーガンレールのワンピース。長く着ていたけれど、どこかでつけてしまったシミに気づいて着なくなり、でも捨てられずにいたら、母が仕立て直して普段着にしてた笑。こうして20年以上現役でい続けてくれるものづくりをしているのがヨーガンレールという人だと、この本を読んで再認識しました。「手仕事の速度で作っていれば環境への影響はきっとない」という彼の言葉にもうなづける。同じ想いでものづくりをする職人さんを探し、自分が使いたいと思うものだけを作る。有言実行のデザイナー。尊敬しかない。
読了日:12月23日 著者:ヨーガン レール 高木 由利子 高橋 みどり,原由美子 安藤雅信 赤木明登

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体
「知性に対する俗物根性の勝利」と言われたアイゼンハワー大統領の登場により「反知性主義」という言葉が生まれた。ここだけ拾うと「知性」という言葉やそれを持った人々への反感や抵抗を指すように聞こえるがちと違う。エピローグにあるとおり「反知性主義とは、知性のあるなしというより、その働き方を問うものである」というところが大事。知性が知らぬ間に越権行為を働いていないかどうかをメタ認知するところまでが知性であり、そのメタ認知を欠いた(自称)知識人と彼らが振りかざす権威や権力に対する抵抗が反知性主義ということでした。
読了日:12月23日 著者:森本 あんり

悪党たちは千里を走る悪党たちは千里を走る
密かに開催中の貫井徳郎祭り。12月の1冊はこちら。これまでのものとまったく雰囲気の違う表紙が示唆するとおり、こんなコミカルな作品も書ける人だったのか!と別の驚きをももたらす作品でした。豪華な暮らしをしているように見せかけるだけで精いっぱいのなんちゃって投資家とか昔の金持ちとか、がんばってマジメに生きることに疲れて犯罪者に成り下がり、でもちっさい詐欺しかできない小悪党止まりの人とか世の中にはゴロゴロいるんだろうな……。そんな人たちに絡んでしまった巧くんがまっとうに育つ気がしない笑。
読了日:12月27日 著者:貫井 徳郎

一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語
2021年の締めの読書。一万円選書にたどり着くまでの苦労やブレイクしてからも欲張らず真摯に取り組み続ける姿勢が丁寧に語られていました。選書カルテやよく選書する本まで惜しみなく公表し、他の書店さんにも「どうぞ真似して」と大盤振る舞い。当選して一万円選書を満喫したのは2016年でした。他の書店さんの選書もいろいろ試してみていますが、今までのところいわた書店を超えるものはありません。この本で紹介されていた本たちを読破してから再応募すれば、鉄板からは選べない状況でなにを届けてくれるのかとワクワクできそう。
読了日:12月30日 著者:岩田徹