2021年5月の読書記録
2021年06月02日(水) 12:41
本&映画の紹介5月も変なラインナップになってしまったけれど、小説に偏らず幅広い読書はできたようです。
ひとりで出版社を営む著者の仕事に対する想いが詰まった『古くてあたらしい仕事』は、ものづくりに関わるすべての人に読んでもらいたい良書です。きっと背筋が伸びます。自著と交換してきた『寄生蟲図鑑』は当たりでした。緊急事態じゃなくなったら目黒寄生虫館に絶対に行く。
小説からのオススメは、『偶然の聖地』です。『なんとなく、クリスタル』はあまり楽しめなかったけど(比べるものでもないが笑)、これはいつの間にかのめり込んで読んでました。小説を読み慣れてない人にはハードル高いかもですが。
読んだ本の数:11
読んだページ数:2485
ナイス数:118
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「それは、ぼくのものづくりの志向と、彼らの求めているものが乖離していった結果かもしれないし、単純に、彼らの目の前にもっといいものが現れたせいかもしれない」みたいな刺さる台詞を、しかも美しい日本語でさらっと書いているスゴイ本。ものづくりに携わるすべての人が読むべき一冊だと思う。読者というユーザーのみならず、本という商品をつくる過程、届ける過程、売る過程にいるすべての人に対する配慮や敬意も欠かさない著者の真摯な生き方に尊敬の念をいだきつつ読了。彼がつくった本もぜひ読みたい。
読了日:05月01日 著者:島田 潤一郎
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丸善丸の内本店でバカ売れしているらしい。人間の認知特性を知ることの大切さがじわじわと認識されつつあるということか。どういう風に書くとバカ売れするのかな?と思い読んでみましたが笑、見開きでお題ひとつを簡潔に、イラストも交えて楽しげにまとめてある感じです。マーケティングに活かす話は、どうしても人間の認知特性につけ込んで売りつけるって感じになるのが嫌だ。騙されない賢い消費者を育てるほうに認知の話を活かしてほしいのだけどなー。ビジネス書である以上「売る」側に刺さる内容にしないとならんのですよね……。
読了日:05月03日 著者:
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まだ30代だったころの酒井順子さんが食にまつわる密かなこだわりを綴ったエッセイ集。20年前の本です。はっきり言って強烈に印象に残る話は少ない。でも、ずーっと共感しながら読める。日本人の「食」とそれへのこだわりはそれほど変わっていないんだなーきっと。とりあえず餃子が“完全食”だということがわかった笑。同感です。
読了日:05月08日 著者:酒井 順子
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『ニッポンの文学』からの抜粋5冊目。これまた20年前の作品。『蹴りたい背中』に続いて高校生が主人公。期待の俊英の清冽なデビュー作として知られる作品を今さら読んでみましたが、頭の柔らかい高校生が次々と謎を解いてくれて清々しいのはたしかだけれど、オチが『夏のお嬢さん』かよーってなった笑。郁恵ちゃんの曲のほうがさらに20年前だけどさ。なにはともあれ、青春でした。古典部の4人の20年後はどんなかな? 摩耶花の恋は実るのかなー(かなりどうでも良いところ笑)
読了日:05月10日 著者:米澤 穂信
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Google Maps以外の地図を見なくなって久しい…というのは多くの現代人に共通するのではないかと思う。いや、もしかしたら、Google Mapsのおかげで地図をより頻繁に見るようになったと言うほうが正しいかも。でも、見ているだけで読んではいない。地図に記されている膨大な情報を、わたし達は日々スルーしながら生きているんですね。じっくり地図を「読み」ながら街の成り立ちを知るという贅沢な遊びへの誘いでした。小学校の大きさや駅の規模から距離感を掴むとはなるほどね。
読了日:05月12日 著者:今和泉 隆行
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「間違う」のではなく「つまずく」のだと。なるほど。言葉は時代とともに変容するし、文脈によって使われ方や解釈が異なり得るし、人によって受け取り方もちがう可能性がある。だから「正解がある」とは考えないほうが良い。伝わったことが伝えたこと。言葉はコミュニケーションに使う手段に過ぎないわけで、正しいかどうかではなく伝わったかどうかで評価がなされるべきものだという論点が実に明快。話すとき、大事なことなら二度言おう。聞くとき、相づちを打ち、わからなければ質問しよう。「伝える」ために歩み寄ることが大事。
読了日:05月18日 著者:飯間 浩明
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冒頭の「きのこの基礎知識」は今さら聞けない……感じの情報が盛りだくさん。強制隔離中のお弁当。そのアレルギー表示に「マツタケ」があり、この低予算弁当には絶対に使われない食材だろ!と悪態をついたりしていたのですが、マツタケや椎茸でアレルギー反応を起こす人もいるんですってカワイソウニ。岩手県ではきのこ類は他の人の山に入って採っても良いという暗黙ルールがあったそうな。Allemansträttenではありませんかー。でも最近はマナーの悪い都会もんが来るようになりパトロールが必要になったのだそうです。残念な話。
読了日:05月19日 著者:堀 博美
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とある本屋による選書1/6冊目。入り込むのに苦労した。イシュクト山ってどこだっけ?なんでそこを目指すんだっけ?世界医って何?みたいな疑問に答えてくれるわけではない注釈たちはまさに『なんとなく、クリスタル』方式であった。ところがその注釈が面白かったりもして、頂きを目指す旅にもだんだんワクワクしてくるという不思議な展開。SFないしは妄想好きにはたまらない小説ではなかろうか。あと、旅好きにも。この著者のもっと普通の小説も読んでみたいと思わせてくれる良き出会いでした。
読了日:05月24日 著者:宮内 悠介
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幼体と成体で宿主が異なる場合、幼体の宿主を「中間宿主」、成体の宿主を「終宿主」と呼び、中間宿主を飛ばして終宿主にたどり着いてもその虫の一生は成立しないらしい。きっちり中間宿主に寄生して育ち、それが終宿主に食べられるよう仕向け、ばっちり食べられて終宿主に到達し、さらに子が中間宿主に入り込めるようにする仕組み。なにげにスゴイ。衛生管理の行き届いた先進国に生まれ育ったおかげで知らずにきた寄生虫の世界を覗き見て、のめり込んでしまった。とりあえず、緊急事態が開けたら目黒寄生虫館へ行こう。
読了日:05月28日 著者:
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とある本屋による選書2/6冊目。旅の道中に一気読みでした。心中事件の生き残りである女性を取材した記者のルポルタージュを著者が世に出した体の物語。ルポを読み終えてからの「女性の遺体発見」でキレイに煙に巻かれていたことを知る。そして『~出版にあたって』と題した著者による解説風物語を読みつつ、ルポに戻って確認したりとかして後半大忙し。これは確かに未体験の面白さでありました。
読了日:05月29日 著者:長江 俊和
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とある本屋による選書3/6冊目。他人の本棚を見るのって面白いですよね。著者はそれを「仕事」にし、さらにそれをネタに本まで出してしまった天才。英語の本の紹介ズラリという展開ですが、日本を代表して(予想どおり)村上春樹とカズオ・イシグロがちょいちょい登場。『AKIRA』やコンマリなど変化球も少々。この本で紹介されていたものから12冊を抜粋して2022年の月イチ課題図書にしようと思います。あと、2ドル入れるとランダムに本1冊が出てくる自動販売機「ビブリオマット」を見にトロント行きたい。
読了日:05月30日 著者:ジェーン・マウント