2025年5月の読書記録
2025年06月06日(金) 13:40
本&映画の紹介5月は初旬に連休があってプチ旅にも出たし、仕事も緩やかだったので読書は当然順調でした。
小説は『国宝 (上) 青春篇』も『樅ノ木は残った』も、重厚な物語でともにほぼ一気読み。国宝のほうはAudibleで聞きましたが、尾上菊之助の朗読がすごくて鳥肌ものだった(1.5倍速で聞いてなお)。
もし介護などにお悩みの人がいたら『眼述記 〜全身マヒになった夫が文字盤で最初に示したのは「さわるな」の4文字だった。』を超絶オススメします。介護は苦しいばかりじゃない!って教えてくれる、笑える一冊です。マジ笑える。笑っちゃいけないと思いつつ、笑いが止まらない。そういう愉快な、明るい読み物です。
お勉強本としては、再読ですが『京の大工棟梁と七人の職人衆』ですね。ものづくり界隈の人は読んでおいて損はないです。
読んだ本の数:15
読んだページ数:4436
ナイス数:157

運用資金は迷わず「eMAXIS Slim全世界株式」に投資。それで分散投資と安価な手数料を確保したうえで、入れっぱなしの長期投資。引き出すときに損失があったら運が悪かったと納得するべし。サンクコストに惑わされるな。本当は教えたくない…と前置きのうえで書いてくれた「個人向け国債変動金利型10年満期」についてはもうすこし調べてみよう。投資も保険も勧められる商品は売る側が有利な商品。惑わされるな。と、投資の参考書としては上々。息子への手紙感が高まる後半は昭和チックだけどオバサンにはよくわかる。ご冥福を祈ります。
読了日:05月01日 著者:山崎 元

著者が設計した小泊Fujiにて借り読み。最後の略歴まで面白い。4歳で「工夫してものをつくる楽しさに目覚め、6歳で上野動物園の園長に憧れた少年が、自分の人生をふり返る自伝的な著作。生まれ育った環境から学べることをすべて学び、問い続けた結果として成した建築の数々。無意識の器としての住宅と意識の器としての建築。これまであまり考えたことのないことを突きつけられて思いがけない良い読書となりました。ちなみに、宿自体は、環境も含めた箱としては素晴らしかったけど、家具や照明などの細部はイマイチだったというのが本音。
読了日:05月02日 著者:藤森 照信

『ベルサイユのばら』と言えばアンドレだ。亡きアンドレにオスカルが声をかけるシーンを思い出して今でも泣ける。閑話休題、著者の池田理代子さんはいつまでも挑戦を続けていてスゴイな。生き生きしてる。平田オリザ先生の『わかりあえないことから』も名著なのだ。「いちばんのおすすめは演劇をやるということ」というのも明言。人間関係だけじゃなく、ものづくりにおける想像力と共感力の鍛錬にも絶対になる。彬子女王の「石橋を適当にたたいて渡」ってきた人生もステキ。ノーベル賞の大隈先生が見おとりするくらい、他の3人の話が良かった。
読了日:05月04日 著者:池田 理代子,平田 オリザ,彬子女王,大隅 良典,永田 和宏

イワシの鱗が、木の年輪のように生育の記録を伝えるものになってるとか知らなかったわー。ニシンのおしゃべりのおかげでロシアがあらぬ疑いをかけられかけたとか、タツノオトシゴの育児の仕組みとか、いろいろ面白い。毛の生えた脚を使って水を飲み、目の下についた触覚から排尿するロブスターが大好物だと言える時代に生まれて良かった笑。他にも海の生物たちのアレコレを情緒的に語り聞かせてくれるのだけど、著者がフランス人だからかな……、なんか回りくどいというか、詩的に語ろうとし過ぎているというか、読後感がちょいダルイ。
読了日:05月06日 著者:ビル・フランソワ

Audibleにて。事前知識なく、著者名だけで選抜したら尋常じゃない面白さだった。尾上菊之助の朗読もスゴイよー。背中に彫り物を入れたやんちゃ坊主が歌舞伎と出会い、稽古に明け暮れ、血筋を超えて三代目を襲名。借金まで受け継いでがんばるのに虐め倒されるという不遇。出奔した跡取りとの再会までが青春篇か…。「青春だったね」と二人が笑顔でふり返られる日が来るのかドキドキしながら下巻へ。
読了日:05月09日 著者:吉田 修一

「鈴木」に対する対抗意識で読んでみた(なんのこっちゃ笑)。借金を抱えた人間による家族ごっこ。なんで彼女だけ先に家にいるんだろう?と、初っ端で思ったよ、たしかに。隣の家も偽物家族だな?とかも思った。どちらかと言うと本物のほうだったけど……。たった1年の健康的な生活で、価値が上がるほどに臓器が元気になるんかなー?とか、そういうこと言い出すと楽しめないエンタメ小説と思えば良し。とにかく、借金はやめよう。そんなかんたんにチャラにはしてもらえないんだ。
読了日:05月10日 著者:木下 半太

「現場」と呼ばれるフィールドへ出て、自分で体験を積み、感じたことを言葉にして発信。まえがきで著者が言うとおり、いずれも「表面をなぞっただけ」で深みがない。けれど、新聞連載という文字数制限の中で書けることの限界には挑戦してくれてるように思う。連載中、厳しいフィードバックも多かったに違いないことは「あとがきに代えて」を読むとわかる。どうがんばっても「当事者」になり得ない課題の数々に目をつむって沈黙し続けるよりも、上っ面でも良いからなぞって感じてみよう!という呼びかけの書。みんなで「想像力欠乏症」を治そう!
読了日:05月12日 著者:斎藤 幸平

「自分の一生を賭けるような心構えで物事やっておればね、何をやっても通用しますわ」とは、大工棟梁のお言葉。超大型台風を「千載一遇の経験」と考える親方は今のご時世ではダメ上司なのだろうけど、自分がつくったものが強烈な自然環境下でも踏ん張る仕上がりになっているかどうかを見定めようとする気の持ちようが根底にあってのこと。逃げ遅れただけかもしれない庭師さんの経験談が最後にあるという巧みな構成にも唸る。どの職人さんも、目先の仕上がりだけでなく、それを補修する必要が生じた未来まで見据えて取り組んでる。プロ職人の心意気。
読了日:05月14日 著者:笠井 一子

喜久雄と俊介が焼き鳥屋で昔を懐かしむシーンが思いの外はやくてほっこりしたのもつかの間、俊介の左足まで…というところでは絶句した。その息子のひき逃げ事件で俊介に変わって頭を下げる喜久雄。娘の家の火事に孫娘の火傷。次から次へと不幸が襲い掛かってくる。それでも精進し続けて、最高峰まで昇りつめてもまだ先へ続く道をまっすぐ進んでいこうとする喜久雄の半ば狂った最後がうれしくて悲しい。素直に喜べるのは徳ちゃんが来てくれることだな。尾上菊之助の朗読もすごかった。数時間の映画に小さくまとめて欲しくない。そういう物語でした。
読了日:05月16日 著者:吉田 修一

旦那リクエストで買ったのだが、どういう意味だろう?笑。野菜の水上げや水切りはしたほうが良いとか、肉は常温に戻して火にかけるべしとか、わかってはいるんだ。でも面倒。そういうのをちゃんとやろうと思うと、台所に立つ時間以外の時間も計画的にしなくちゃならなくて、仕事してるとそれどころじゃないっすよ(いや、仕事のない日もやらないが笑)。しかし思い立ってご指導どおりに肉じゃがをつくってみたらたしかに煮崩れしなくてすごぉー。いや、ちょっと煮崩れしてるくらいが美味しいと思う(負け惜しみ的な…笑)。ほどほどにがんばります。
読了日:05月17日 著者:小田 真規子

月イチのノルマ歴史小説5月分。父が持っていた上下2分冊(昭和62年50刷改版)をもらってきて読んでます。「良人」と書いて「おっと」と読ませているところが終始気に入らない(どうでも良いところ笑)が、それにしても登場人物を覚えるところが大変。隼人ってふたりいるよね(ちがう?) 日本史をきちんと勉強せずにきたので伊達騒動がわからないわけだ。東北の地理もよくわからんから地名で呼ぶのやめてくれー。しかし、原田甲斐の良い男っぷりに惚れ惚れしつつワクワクしながら読んでます。いろいろ忘れないように速攻下巻へ。
読了日:05月18日 著者:山本 周五郎

権力に相応しくない人が権力に引き寄せられがちで、不適当な採用戦略がそれを悪化させる。腐敗しやすい人を寄せ付けないためには競争が必要だが、石器時代の脳にわたし達は判断を惑わされ、不適当な理由で不適切な指導者を選んでしまう。人間がそういう問題を抱えていることを理解したうえでの制度改革が必要。腐敗しにくい誠実な人にこそ立ち上がってもらえるような社会づくり。選抜には籤引き制やランダム化が有効。適切な異動と監視の導入。監視の目は上層部へこそ向けるべし。進化と認知科学の本と言っても良さそうな内容で勉強になりました。
読了日:05月20日 著者:ブライアン・クラース

上下2分冊(昭和62年50刷改版)の下巻を読了。最後はまさかの感じであっさり切られんのかよ原田甲斐! 久馬は敵方だったけど原田に惚れこんじゃって寝返って、それで済んでるところに多少の違和感。丹三郎も七十郎も死んじゃって、それでもお家のために信念を貫き通すところは見事だが、酒井がやってることも煎じ詰めれば徳川家のためであって(私欲がないとは言い切れないが)、無駄な争いだったなぁ……。あと、甲斐と宇野の精神的な結びつきがエロすぎる笑。宇野なくして、甲斐は頑張れなかったということか?
読了日:05月23日 著者:山本 周五郎

全身マヒで胃ろうの監修者。著者との意思疎通は手作りの文字盤。追って著者自身も癌になり入退院を繰り返す。そんな渦中で大人になっていく2人の子ども達。添えられているマンガが笑えるんだコレが。文章に書かれていることのリピートではなく、+αの情報が描かれているのでマンガの細部も読み飛ばせない。父に用事を言いつけられないよう、娘が父の瞼を押さえつけてるのが一番笑った。娘の我慢しない感じ(多少はしてるのだろうが…)が清々しい。ラスト「監修者の告白」もなぜか笑える。愛のある家族の日常をふつうに楽しませてもらいました。
読了日:05月29日 著者:髙倉美恵

橙書店の店主が各所で推薦してきた本の数々。お店の本棚には、こんな本が並んでいるのかー。翻訳ものが多め。差別をはじめとする社会問題をテーマにする本も多い。読みたいと思ったものを数えてみたらちょうど12冊だったので、2026年の月一ノルマ本にしようかな……。橙書店まで買いに行きたいくらいだけど、猫がいるらしいし、その前に遠いし。「本を読むと想像力が鍛えられる」って本当にそうだと思うから、わたしも読み続けよう。自分の知らない世界や価値観に出会うために。
読了日:05月30日 著者:田尻久子