2025年4月の読書記録

2025年05月07日(水) 13:05

本&映画の紹介

4月は12冊。中旬以降、お天気が良くなってから遊びが忙しくて失速してしまいました笑。

春になって明るい日々なのに、全般的に「ダーク」な印象や内容の本が多めになっているのも興味深い。中でも断トツで暗く重苦しいのは『沈黙』でした。歴史を追いたいわけではないけれど、長崎へ行きたくなっちゃったぞと。

老いた親や自分たちの老後を見据えた社会保障系の勉強本が近頃は多めですが、『「おふたりさまの老後」は準備が10割: 元気なうちに読んでおきたい!68の疑問と答え』はリアルに参考になりました。おふたりさまも、いつかどちらかがおひとりさまになるわけで、子どもがいないということはわかりやすい相続人がいないということで、だからこそ厄介になるアレコレがたくさんあるらしい。早めに遺言書をつくらなければ……。

UX界隈の方々には、とりあえず『ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策』は読んでおくべき一冊です。もうすこし明るく学びたい人には、『「しやすい」の作りかた』がなにげにオススメ。日々の生活の中で観察力と想像力を鍛えることの大切さを教えてくれます。



読んだ本の数:12
読んだページ数:3624
ナイス数:188

ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ 争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追うウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ 争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う
読み始めるのに勇気を要する大作。700ページ超え笑。孤独相から群生相へと形態を変えたバッタが大群を成す。ハタオリドリはキャンピングカー並みの巨大な巣をつくる。ハダカデバネズミは蜂や蟻と似た真社会性動物。象はめちゃくちゃ嗅覚が鋭い。ハイエナも負けてない。ニオイだけで血縁者を見分けられる。シャチは居住域によって捕食動物がちがう。ザトウクジラはシャチに対する恨みを忘れない。かつて、人間よりも優秀なヒヒのヤギ飼いがいた。知らないことだらけで終始おもしろかった。人間だけが社会的なわけではないのだ。
読了日:04月02日 著者:アシュリー・ウォード

「おふたりさまの老後」は準備が10割: 元気なうちに読んでおきたい!68の疑問と答え「おふたりさまの老後」は準備が10割: 元気なうちに読んでおきたい!68の疑問と答え
すごく勉強になった。「相続税の配偶者控除」を受けて相続税を差っ引かれないようにするには期限内に税務署への申告書提出が必要。傍系血族しかいない場合は遺留分がないので、遺言書さえあれば全額を配偶者に残すことができる。遺言書がないと全相続人による遺産分割協議が必要となりこれが結構厄介。つまり、おふたりさまはしっかり遺言書を準備しておくことが大事だぞと。他にも、現在の成年後見制度は差別的という理由で国連から見直しを求められている。連れ子(いないけど)には相続権がない。家屋解体は残留物を処分してから、などなど。
読了日:04月04日 著者:松尾 拓也

護られなかった者たちへ護られなかった者たちへ
Audibleにて。中山七里さんにしてはグロテスクな描写の少ない物語でした。犯人は別にいる!ということにあっさり気づいてしまうあたりが、ちょっと物足りない読後感につながっているかもしれない。カンちゃん=円山までたどり着けなかったのは悔しいが、他に登場人物いないんだからそこしかないだろ!と、終わって自分に突っ込むなど笑。それにしても、公務員の仕事もいろいろだ。安定の職業と見せかけて、ストレスフルな仕事。弱者に鞭打つ対応をせざるを得ない社会保障ってなんなんだろ?という重たい社会問題を突き付けてくるお話でした。
読了日:04月07日 著者:中山 七里

だます技術だます技術
いろいろあるなー、しっかし。投資詐欺にだけは引っかからないようにしよう。うまい儲け話なんてあるわけないんだから。AIで声も似せて作れるようになってきてるし、ハイテク詐欺には本当に用心しないと。と思っていたら、投函チラシにやられるとか勘弁してよ。詐欺に騙されかけてる途中で気づけるようになるにはどうしたら良いのか?まで教えてほしかったけど、対策があまり参考にならなかった。確証バイアスの説明すこし間違ってるし。とは言え、悪はあの手この手で攻めてくることを頭に入れて疑いなら生活しよう(なんか悲しいが)。
読了日:04月09日 著者:株式会社ラック 金融犯罪対策センター,小森 美武,木村 将之,岡本 信秀,池田 芳輝,海老原 章,新林 直樹,田中 しおり,佐野 智弥

沈黙沈黙
月一ノルマ歴史小説4冊目。戦国が終わって江戸時代になり、内乱の要因としてキリスト教が弾圧されていたころ。宗教が救ってくれるものは少ないどころか争いの種だよむしろ…と考える無神論者からすると「沈黙」は当たり前のことで、目の前で命を奪われていく信徒を救えない自分(と神)に失望し続ける司祭ロドリゴの心の葛藤を追いかけて、わかったり、わからなかったり。キチジローの度重なる裏切りに対するロドリゴの心の揺らぎはまっすぐでわかりやすく、キチジローが生を欲して裏切り続けるのも人間臭くてずっと共感できた。
読了日:04月12日 著者:遠藤 周作

古本食堂古本食堂
神保町のBook Hotelでおすすめされた一冊を借り読み。ひとりで穏やかに古書店を営んでいた滋郎が堅実に蓄えてきた資産を受け継ぐことになった妹の珊瑚と、その甥の娘の美希喜が神保町を舞台に繰り広げる日常の物語。かなりの額の遺産相続が絡むので心中穏やかではない美希喜の母がけっこうリアルでおもしろい。進路に悩む女子大生と彼女に恋心を寄せる出版社男子や、ひそかな想い人の上京で心をざわつかせる珊瑚など、人間模様の合間に神保町の名店の味や語り継がれる名著などが登場して飽きない展開。巧みなおすすめでした。
読了日:04月14日 著者:原田 ひ香

国民健康保険料が高すぎる!-保険料を下げる10のこと国民健康保険料が高すぎる!-保険料を下げる10のこと
川崎市から横浜市に転居して国保料が1割増しくらいになりました。ほぼマックスの金額を納める優良個人事業主です。本書で紹介されている中で自分にも可能性があるとしたら「ギリギリ社会保険の加入対象となる働き方」をしながらちょこっと起業して二足の草鞋を履く…という戦略しかないのだが、「会社員」という働き方がねー、無理なんだよなー、だからこのまま高額の国保料を払い続けて制度を支えよう。というか、老後に生活する場所(市区町村)を選ぶときに、社会保障費の多寡を事前確認すべきだということがわかったのが本書からの一番の学び。
読了日:04月16日 著者:笹井 恵里子

教誨教誨
Audibleにて。母親に褒めてほしかったのだろうとはすぐに気づいたが、約束の内容がわからなくて、響子を故郷に戻してあげようと頑張る香純と同じ気持ちで物語を追った。が、母親による呪縛を誰にも言わずに死刑に処されれば、同じ墓に入れるっていう論理がぜんぜん理解できない。なんで?香純がアレだけ頑張って、やっと郷里に散骨なのに。母親が病んでいて、そのまた母親が毒を持っていて、その親族もろもろが猛毒をまき散らし続けてて、香純という解毒剤の到着は遅すぎた。そんな悲しい物語。元になる事件があったとか信じがたい。
読了日:04月18日 著者:柚月 裕子

一年に一度しか会えない日本の「来訪神」図鑑一年に一度しか会えない日本の「来訪神」図鑑
男鹿のナマハゲと宇和島の牛鬼くらいしか知らなかった来訪神。人口減少と少子高齢化で伝承していくのがどこも大変なのだろうけど、残していけると良いですね。特におもしろいのは、知覧町郡の新築のお宅にやってくる疫病神・貧乏神。悪神を雑にもてなして厄を一緒に持ち帰ってもらうという仕組み。そんなうまくいくんかいな? 今治市の大山衹神社に現れる目に見えない稲の精霊。その精霊と力士が一人角力をとるっていうから見てみたい。大真面目な三番勝負。精霊が勝つと豊作になるとされているので、精霊が二勝一敗で必ず勝利するとか笑。
読了日:04月20日 著者:フランそあ根子

ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策
ユーザーを騙して特定の行動に誘導すべく設計されたUIが本書の著者によって「ダークパターン」と名付けられたのは2010年。以来、世界中で注目を集め、研究され非難され、法律も整備されてはきているが消滅する気配はなし。多くの事例とその背後にある黒い企みが紹介されていてとても参考になります。2020年の選挙でトランプ陣営が使ったあくどい手口も紹介されてた。弱者からむしり取る大統領ってどうなの? それはそうと、ダークパターンをディセプティブ(欺瞞的)パターンに改めるのは日本語ではむずかしそうで悩ましいですね。
読了日:04月22日 著者:ハリー・ブリヌル

冬の本冬の本
年初に寄った奈良の本屋で激推しされて購入し、1篇ずつゆるりと読み進めていたら春になっていた笑。”本が発明されたのは、冬の日々の反復に耐えるための文字通りの「懐炉」の役割として…”と持論を展開し『ガリヴァー旅行記』をあげた吉田篤弘さん、”裏側に住む人の生活”に興味を持たせてくれる『ムーミン谷の冬』をあげた山崎ナオコ―ラさん、そして”刑務所という「こもり」が、冬のこもり読みにすごく合う”とマンガ『刑務所の中』をあげた久住昌之さん、私の中でのトップ3。とりあえず『刑務所の中』は買って読もう。冬まで待つべきか笑。
読了日:04月23日 著者:天野祐吉,佐伯一麦,柴田元幸,山田太一,武田花,友部正人,町田康,安西水丸,穂村弘,堀込高樹,ホンマタカシ,万城目学,又吉直樹,いがらしみきお,池内 紀,伊藤比呂美,角田光代,片岡義男,北村薫,久住昌之

「しやすい」の作りかた「しやすい」の作りかた
Audibleにて。「分け方」を変えれば課題が浮き彫りになって解決方法も見えてくるよという話。要は思考停止からの脱却。現状をよく観察し、別のアプローチがないかどうかを考えてみよう! 本書の良いところは、ビジネスに話題が偏っていないところ。著者は家族との日常生活の中でも観察しまくって、視点を変えた分類をさまざまに試してる。ビジネス書と思って読み始めるとすこし抵抗を覚えるかもしれないが、むしろビジネスとは距離を置いたところにヒントがあるかもしれないと思えるようになること大事。観察力と想像力は日々鍛えられる。
読了日:04月25日 著者:下地寛也