2024年10月の読書記録
2024年11月08日(金) 18:46
本&映画の紹介10月は久しぶりの余裕2桁のように見えるけど、再読が2冊に小説が4冊とかでちょっとズル笑。しかし、Booklive!で新書フェアをやっていたので、新書もちょい多め。
読書好きさんには『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が、イギリス好きには『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』が、そしてすべての日本男性に読んでもらいたいのが『こんな世の中に誰がした? ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために』がおすすめです。いい加減、女子の苦労をわかってもらいたい笑。
小説は『献灯使』がいろいろと考えさせてくれました。
『バウルの歌を探しに バングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録』を読んで、ほんの少しだけ海外旅行へ行きたくなったけれど、バングラデシュではないなー。
読んだ本の数:12
読んだページ数:3350
ナイス数:124
こうしてイギリスから熊がいなくなりました
紙で買えばよかった。挿絵がシュールで美しい。表紙も「サーカスの熊」に情愛を持ち、逃がしてあげようとしたじーさんが絞め殺されているところだし笑。人間の都合で閉じ込められたり、利用されたりしてきた熊たちが、イギリスから、人間世界から去っていく物語の数々。北海道では、ヒグマが山から下りてきまくっていて大変ですが、動物たちが安心して暮らせる自然を、人間と距離を置いてくれる環境を維持することの大切さを皮肉たっぷりに教えてくれました。こんな本との出会いを期待できるAOAO SAPPOROのセレクトが最高。
読了日:10月03日 著者:ミック・ジャクソン
こんな世の中に誰がした? ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために
先輩たちが男社会とどうやって闘ってきたかが綴られています。求めたのは「男女雇用平等法」だったのに「男女雇用機会均等法」にすげ替えられて不当な条件下での競争を余儀なくさせられたこと。奥さまたちに低賃金での労働を受け入れさせ、主婦であることを密かに強いてきた見せかけの「専業主婦優遇制度」たる配偶者控除。第3号被保険者制度は嫁の介護に対するごほうび。でも、年金制度のおかげで「親に仕送りをしなくても良い」状態にあるという認識はなかった…。国の制度も悪ばかりではない。けれど、まだまだ改善が必要なのだよー。
読了日:10月04日 著者:上野千鶴子
なぜ働いていると本が読めなくなるのか
「現代の労働は、労働以外の時間を犠牲にすることで成立している」という状況になぜ陥ってしまったのか、労働と文化的生活を両立するためにはどうすべきなのかを労働史と読書史を並べて俯瞰することで紐解いていこうというなにげに深イイ一冊。教養とは「自分から離れたところにあるものに触れること」とか、情報とは「ノイズ(他者や歴史や社会の文脈)の除去された知識である」とか、端的な定義が結構こころに刺さってくる。上野千鶴子さんの「半身で関わる」の引用もタイムリーでビビった。よし。これからもモリモリ読書しよう!
読了日:10月08日 著者:三宅 香帆
おどろきのウクライナ
長期化するウクライナとロシアの闘いの現状を教えてもらうつもりでタイトル買いしたら、アフガニスタンとイスラムの話からスタートしてウクライナにたどり着くまで長いのなんのって笑。西側諸国に対するロシアのルサンチマンや、ロシアの陰に鳴りを潜めている中国の思惑とか、アメリカキライを理由にロシアや中国に味方する国の多さなどを踏まえて、遠くない将来に勃発する可能性の高い台湾有事に、日本は本気で備えなければならないのだよ!という啓蒙の書でした。「中国はジェネリック」という表現が妙にしっくりきたなー。
読了日:10月12日 著者:橋爪 大三郎,大澤 真幸
献灯使
10月のノルマ小説。あってもおかしくない未来の日本の話。切ない読後感。コロナのとき、不謹慎を承知で書いてしまうけれど、重症化しやすいのが子ども達じゃなくて良かったなって思ってしまった自分がいたのを思い出した。この物語ではまさに逆。高齢者は死ねなくなり、子ども達は育つことができない。子ども達を介護する高齢者たちの想いや多くを望まない子ども達の健気な様子が描かれる。鎖国か……。それは日本が望んだことではなくて世界の要請なのかもしれない。大きな地震に見舞われる恐怖と備えを忘れないようにしよう。
読了日:10月14日 著者:多和田 葉子
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策
ユーザー調査のセミナーに引用できる認知バイアスや事例を探して再読。セミナーで人間の認知特性について紹介した後、事後アンケートで「調査だけではなく日常のコミュニケーションにも役立てられそう」という感想をよくいただくのだが、この本にはまさに!上司と部下や親子、あるいは教師と生徒の間のコミュニケーションを円滑にするためのヒントが満載。調査もコミュニケーションも、上達するには「メタ認知を働かせながらのふり返り」が有用だと毎度言っている話が本書の締めにもなっていて、わたしのスッキリ感がスゴかった笑。
読了日:10月15日 著者:今井 むつみ
鎌倉残影 歴史小説アンソロジー
鎌倉幕府の歴史をこんな簡潔にまとめられるのか!と驚かされる『恋ぞ荒ぶる』。後鳥羽院が頼朝の長女大姫と交わしたかもしれない若き日々が回想される『人も愛し』。他の物語では登場頻度の低い頼朝の妹 有子が目をかけ頼りにした(根性なしで卑屈な)画師が開眼するまでを描いた『さくり姫』。主役級だけど主人公にはなれずじまいだった和田義盛の視点で頼朝亡き後の鎌倉を描いた『誰が悪』。そして締めは、藤原兼子や頼家の遺児のひとり鞠子、そして北条政子の暗躍をまとめた『女人入眼』。鎌倉時代の大枠がわかってから読むとかなり面白い。
読了日:10月17日 著者:朝井 まかて,諸田 玲子,澤田 瞳子,武川 佑,葉室 麟
入院・介護「はじめて」ガイド
約5年前に仕事の予習本として買ったコレを再読。介護ライフの「はじまり」として主要な3ケースは、①脳卒中 ②認知症 ③がん。3つのケースをすべて抱える当事者になりました。あわわわわ。兄弟姉妹がいることの有難みを感じる日々です。ひとりっ子の皆さん、かなり大変なことになるので早めに勉強することをお勧めします。ちなみに、本を読んでもわからないことが山積みですな。国の仕組み、むずかしい。手続きは当然煩雑。要支援1で歩行補助杖をレンタルできる!と一瞬喜んだけれど、手続きのほうが大変だから買うのが早いよね笑。
読了日:10月18日 著者:
5A73
そうそう、アメトークで知って読みたいと思っていたのだった。で、刑事ものの推理小説ですねーと、ワクワクしながら読み始め、少し先の死人(というか、自殺者)まで先に示されるので頷いたり推理したりしながらグイグイ読んで、そしてオカルト小説でしたというオチにガツカリ……。「それが幽霊文字だと知らないうちに」シールを見ないと連鎖に巻き込まれてしまうというのが「シール」の秘密か。シールに限定しておかないと読者も連鎖に巻き込まれてしまいますもんね。なるほど…なんだけど、巻き込まれるくらいのオチのほうが良かったかな。
読了日:10月20日 著者:詠坂 雄二
仲野教授の この座右の銘が効きまっせ!
「あの山本義隆の言葉」が良いな~。「あの」って言われても知らん人だけど笑。「自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を表明できるようになる」ためにわたし達は勉強するんだ、そうなんだ。「座右の銘は自分宛」が大事な心がまえだとわたしも思う。だから若い頃から密かに大事にしている自画自賛系の座右の銘があるけど誰にも言わない笑。著者が主観で、実はスゴイ人たちが残した「座右の銘」とされてるアレコレに頷いたり、いちゃもんつけたりし続けて、読者も頷いたり笑ったりできる一冊。ふつうに勉強になりました。
読了日:10月26日 著者:仲野 徹
考える旅人 世界のホテルをめぐって
富士屋ホテル創業者の血を引く著者。一般的に考えれば、とても恵まれた生い立ちで、それを誇りにしつつフル活用して「旅する作家」を生業にしていらっしゃる。きっとわたしの知らないステキホテルを紹介してくれる!と期待して読んでみたけれど、擬洋風建築とかクラシックホテルとか、わたしの範疇ではないことを再確認するだけの読書だった笑。富士屋ホテルには一度だけ泊まったことがあるけれど、掃除がまったく行き届いていなくてガツカリしたことしか覚えていない。まー、老舗には老舗の大変さがきっとおありなのだとは思いますが。
読了日:10月28日 著者:山口 由美
バウルの歌を探しに バングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録
密かに続いている川内有緒さん祭り。「行くならヨーロッパ」と若い頃に憧れてしまって引っ張られて、アジアへの興味が薄いままになってる。バングラデシュと聞いても食指が動かない。でもバウルは気になる。表紙のポンチ絵はもっと気になる。「大切なのは自分を知ること」「自分の中に旅して行け」、歌うと「本当の人間になれる気がする」。バウルたちの言葉が著者にひとつの結論を導く。「自分自身を知るという長い旅路」を求めていたという自分の心の声に気づいてスッキリしただろうな~。そんな本心をメタ認知してまっすぐに生きる彼女がステキ。
読了日:10月30日 著者:川内 有緒