2024年9月の読書記録

2024年10月04日(金) 10:36

本&映画の紹介

9月はお休みもあったし、移動も多かったから大量に読めたぞ!感があったのだけど、ほとんどが伊坂幸太郎だった笑。殺し屋シリーズみたいな、縁遠すぎるエンタメ小説を読み倒して疲労回復を図るという変な月でした。それにしても、伊坂幸太郎がおもしろすぎるので、他のシリーズにも手を出してしまおうか……悩みどころ。

タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』と『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』と『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』の3冊は、ぜんぜん毛色がちがうけれど、本気研究者たちが、専門分野を素人にもわかるように説明してくれているという共通点があって、わたしのようななんちゃって研究者レベルの人にはいろいろな意味で参考になる良書たち。『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』の端々にシレっと放り込まれている著者の愚痴や辛口がけっこう笑えるので中では一番とっつきやすく楽しめるのではないかと。



読んだ本の数:11
読んだページ数:3580
ナイス数:184

聖なるズー聖なるズー
「動物は僕にとってパーソン(パーソナリティを備えていると認識できる存在)だ」と言って、ねずみへの愛を語るズーのザシャ。「~なにを愛するか(中略)について、他人に干渉されるべきじゃない」とも。獣姦と動物性愛は別物。言われてみればあたり前だし、ペットに洋服を着せて「わが子」として溺愛している人たちの自己満足もどうなのよ?と個人的には思っているので、本書を読む限りはズーのほうが正論のような気がしてる。と、ちょい上から目線でわかったつもりになってはいけない領域のような気もしてる。私の知っている世界はまだまだ狭い。
読了日:09月02日 著者:濱野 ちひろ

タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源
札幌でタコの卵を食した流れからのコレ。タコの寿命が思いのほか短くてすこし申し訳ない気持ちになったけれど、そんな感傷はともかく知らないことだらけで貪るように読んでしまった。タコには心臓が3つあって、酸素を運ぶのに鉄ではなく銅を使うために血液は緑色をしていて、腕?足?にも人間で言う「脳」の役割を担う仕組みがあって、ハイタッチをしたりなんかもするってマジか?地球上に現存するあらゆる生物はほぼ同じ年月をかけて今に至っているわけで優劣なんてないのだよ。タコ達が生きていける海を後世に残さなければならない。
読了日:09月04日 著者:ピーター・ゴドフリー=スミス

夜叉の都夜叉の都
『修羅の都』から『夜叉の都』。頼朝亡き後、「武士の府」を守るために奔走する北条政子を主軸に、自分を支え、伴走してくれたはずの弟 北条義時をもその手にかけるというエンディングまでノンストップ。謎に包まれている北条義時の死の真相を政子による毒殺というセンセーショナルな仮説でまとめる展開に唸ってしまったわぃ。あってもおかしくない。しかし、政子は毒を盛りすぎだ笑。当時の女性に取れる手段は毒しかなかったのかもしれないけどね。そして、夜叉を相手にみんな油断しすぎだぞー。
読了日:09月08日 著者:伊東 潤

進化の謎をとく発生学 恐竜も鳥エンハンサーを使っていたか進化の謎をとく発生学 恐竜も鳥エンハンサーを使っていたか
『タコの心身問題』からの流れで長らく積読していたコレにいってみたけれど、ダメ。お手上げ。生物は中学までしかやってないから基礎知識が足りない(いや、高校でも勉強した物理と化学の基礎知識が十分というわけでもない笑)。中高生向けにやさしく書いてくれていることはひしひしと伝わってくるのだけれど、おそらく5回くらい読んでやっと部分的にわかるくらい。そして5回読むモチベーションがまったく沸いてこない。ということで、発生学よ、さようなら。
読了日:09月11日 著者:田村 宏治

マリアビートルマリアビートル
9月のノルマ小説。ぶっ飛んでて面白かった。クソ生意気な王子が最終的にどれほど切り刻まれたのかは気になったけれど、伝説の殺し屋夫婦ならきっと期待を裏切りはしないと思わせてくれる緩やかなランディングがすがすがしい読後感をもたらしてくれました。絶対にただ者ではない!と思っていた塾講師が、リアルにただ者だったよね?そうだよね?と思いつつ、なにかありそう(前作関係してんのか?)。蛇のこととか、盛岡のコインロッカーとか、はっきりしない謎がまだまだあるので続くのか?とりあえず、前作を読もう。
読了日:09月14日 著者:伊坂 幸太郎

現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。
気になって訪れる個人書店にほぼ必ずある本書。長らくの積読を経ての一気読み。とっとと読めば良かった笑。おもしろい。ブルシャスキー語をはじめとするマイナー言語の現在を(いやいやながら)現地に赴いて聞き取り、学び、残そうと奮闘する本気言語学者さんが、なんちゃって言語学者や知ったかぶりの素人や、現地の協力者らに対する不平不満をシレっと愚痴りながらフィールドワークの苦楽を共有してくれます。相手の人数や性別だけでなく、どこから来たか(近所または遠く、麓または頂)に応じて挨拶の仕方が変わるカティ語が興味深かった。
読了日:09月17日 著者:吉岡 乾

パリの国連で夢を食う。パリの国連で夢を食う。
「そこそこ」なカルチャーが蔓延する組織。空席ができなければ就職も昇進もあり得ない組織。「そこそこ」で満足する人たちが既得権益を守るための静かな闘いを繰り広げながら、できるだけ長く勤めて年金という老後の保障をゲットしようとしていて……、ということで、国連はよっぽどの熱意と幸運の持ち主でないと入り込めない職場でありつつ、日本で言うところの「お役所」を世界規模にして、優秀な人材を骨抜きにしてしまうブラック企業だということが確認できました笑。夢を食らってもぬけの殻になる前に自力で抜け出す行動力がやはりスゴイ。
読了日:09月17日 著者:川内 有緒

グラスホッパーグラスホッパー
平安神宮の東神苑にかかる泰平閣に腰かけて雅な景色を眺めながら殺し屋シリーズの1冊目を読んでみた。「人は誰でも、死にたがっている」とは自殺させ屋の鯨の言葉。誰もがけっこう必死に生きていて、死ぬべし…と促されたら案外すんなり自殺してしまうと。説得力があるように感じてしまった自分も危ういのかもな。先に読んだ『マリアビートル』で謎だったただ者には見えないけどただ者だった塾講師の正体がわかってスッキリ。素人が闇社会に潜り込んでも無駄だよね。劇団に所属する子ども達がいるというのが一番の闇だった。
読了日:09月20日 著者:伊坂 幸太郎

検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?
「ナチズムは国家ではなく、国民・民族を優先する思想」だから「国家社会主義」ではなく「国民社会主義」と訳すべきだという前提がとにかく大事。ヒトラーにとっては「ナショナリスト(国民主義者)≒社会主義者」で、彼のあらゆるふるまいは純粋な「民族共同体」の実現に向かっていたというとても単純な図式が根っこにある。それを踏まえて<事実>を捉え、研究者が積み重ねてきた膨大な知見を使って<解釈>したうえで、個人的な<意見>を述べよと。解釈をすっ飛ばして意見へ飛ぶと誤った判断に陥りがちです。という研究全般に言える示唆の書。
読了日:09月20日 著者:小野寺 拓也,田野 大輔

ヘルシンキ 生活の練習ヘルシンキ 生活の練習
「日本と比較して安いのは果物とニシンと乳製品ぐらいだ。幸福な感じがしない」というのがめっちゃリアルで笑った。獲れる農作物は限られているから高くなるし、税金はご存知のとおり高いし、スウェーデンの場合しか知らんけど他にもいろいろあって、とにかくそれほどバラ色の生活が送れるわけではないんだよ@北欧。ただ、日本に比べればダイバーシティな社会で片親家庭くらいで特別視してられないというのが本当のところだろう。とりあえず、ヘルシンキと京都を行き来する生活というのは良いな。6~9月は北欧、残りは日本というのが理想だ笑。
読了日:09月22日 著者:朴 沙羅

AX アックスAX アックス
殺し屋シリーズの3冊目。我慢できずに読んでしもーた。家族の物語の合間に殺しが顔を出すという、これまでとはまったくちがう筋立てで飽きさせないな~。奥さんの恐妻っぷりをあまり好きになれなかったけれど、若き日の馴れ初めで幕引きとかズルイ…。ただ者じゃないと見せかけてただ者だった塾講師がまた出てくるのを期待してたけどハズレ。代わりにクリーニング屋。まっとうな道に戻れて、恩返しもできてよかった。伊坂幸太郎、読みだすと止まらない。次は阿部和重との合作か、祭りの開幕かな(他の小説読む暇なくなるなー)。
読了日:09月27日 著者:伊坂 幸太郎