2024年4月の読書記録

2024年05月17日(金) 15:16

本&映画の紹介

4月も本職の仕事はあまりなかったのだけど、春が来て、気持ちよく遊び回れるようになり、リアルに遊び狂っていたので読書はそれほど進まなかった笑。しかも、鎌倉・金沢界隈の遊びをより楽しくするための本が多め。

「肝心の金沢北条氏は「ヤバそうだから出家しよ」という感じで弱っちかった笑」なんて感想を書いた『北条氏の時代』の後、『鎌倉幕府の陰の立役者 かねさわ実時 北条義時の孫の生涯』という自費出版本を図書館から借りてきて読みまして、「弱っちかった」と思ったのは義時の子どもで実時の親父だったということが判明。称名寺や金沢文庫を後世に残したのは「北条実時」さん。彼は出世欲をそれほど持たず、本家を支えることに徹して、しかし本音は、表舞台でトップに立つよりも、2番手、3番手で良いから本を読んだり、写経したりしていたい!という思いだったっぽい。ちょっと親近感。

ということで4月の読書は「12冊」が本当の数字です。で、メガヒット的な一冊はなかったのだけれど、人生に迷っている人には『おまえの俺をおしえてくれ』と『新しい封建制がやってくる: グローバル中流階級への警告』が良いかな。UX界隈のお勉強本が一冊も含まれていないのは反省だ。しかし、仕事があまり来なくなったからもう勉強しなくても良いかー(勉強を怠っているから仕事がこなくなったとは考えない笑)。



読んだ本の数:11
読んだページ数:2907
ナイス数:105

自由の丘に、小屋をつくる自由の丘に、小屋をつくる
この著者にちょいはまりしている。新刊を見つけて思わず買ってしまった。小屋づくりにはまったく興味ないが笑。同い年だということが判明した。わたしも若い頃、国連の仕事をしたい!と一瞬夢を見たことを思い出した。それを実現し、そしてをそれをバッサリ捨てて帰国し、物書きとして生きていくために自分を追い詰めつつ、子どものために小屋をDIYする。途中で本人も言っているが、この人の強みは自分を過信していないこととすんなり他者を頼れること。さらには手を差し伸べてくれる人がまわりにいること。これからも愉快に生きて書いてほしい。
読了日:04月01日 著者:川内 有緒

マンガでわかる能・狂言: あらすじから見どころ、なぜか眠気を誘う理由まで全部わかる!マンガでわかる能・狂言: あらすじから見どころ、なぜか眠気を誘う理由まで全部わかる!
5月に見に行く薪能の事前講習会参加に備えて急いで予習。能と狂言それぞれの特徴と違い、舞台のつくりや意図、長く演じられてきた名曲のあらすじや見どころをざっくり勉強しました。とにかく能についても狂言についても「何も知らない」という状態だったので、マンガでゆるりと導入は正解だった。講習会での先生の説明も、これを読んでいたからすんなり入ってくるところがあって助かったー。先生のご指導のとおり「台詞を理解しよう」なんて思わず、雰囲気に入り込むための事前知識をもうすこし蓄えて本番に臨みたい。
読了日:04月05日 著者:

つくる人になるために: 若き建築家と思想家の往復書簡つくる人になるために: 若き建築家と思想家の往復書簡
内田樹先生を介して知り合った建築家と思想家が日々考えたり、感じたりしている小難しいこと笑をぶつけ合い、刺激し合う往復書簡集。Lagom(という言葉は使っていないけど)についてだったり、プロセスを楽しむことの価値だったり、手触り感のない電子書籍って嫌よねーってことだったりが語られていて、読むほうも同意したり、頭をひねったり、いろいろでした。紙が心地よかった。
読了日:04月07日 著者:光嶋裕介,青木真兵

ちいさくはじめるデザインシステムちいさくはじめるデザインシステム
わたしはフリーランスなので「デザインシステム」をつくるとか、使うとかぜんぜん関係ないのですが、あったので読んでみた的な笑。チームや組織が大きくなればなるほど必要性を増すシステム。むかしつくるのを手伝ったことのあるユーザビリティガイドラインは、デザインシステムの一部にあたるのだろうけど、きっとアレは使われずに埃をかぶっただろうな……。つくり始めるにも、使い続けるにも、「ちいさくはじめる」というのが本当に大事なのだろうと思うし、そのための指針と具体例がよくまとまっていました。
読了日:04月09日 著者:大塚亜周,稲葉志奈,金森 悠,samemaru,圓山伊吹,植田将基,関口 裕,8chari,後藤拓也,小木曽槙一,桝田草一

新しい封建制がやってくる: グローバル中流階級への警告新しい封建制がやってくる: グローバル中流階級への警告
「日本は(中略)高齢化が急速に進む一方で快適な暮らしが送れる、アジアにおけるスイスのような存在になりうる」ってホンマかいな? それはともかく、再分配や補助金を通じて社会正義を成そうとする考え方や政治は国民の依存心を助長するばかりで権力を有識者と呼ばれる少数派の手に集約させるだけ。中流・労働者階級が向上心を持ち、行動すること、し続けること、それができる環境を整えること、そして有識者らが示す安易に見える道に流されることなく抵抗する選択肢を忘れないこと。つまり結構大変だけど、庶民のひとりとしてがんばりたい。
読了日:04月09日 著者:ジョエル・コトキン

対訳 21世紀に生きる君たちへ対訳 21世紀に生きる君たちへ
初読は借り読みだったので、司馬遼太郎記念館にて購入のうえ再読。他者をいたわることのできる自己を確立すべし。他人の痛みを感じること、他人にやさしくあること、それは生まれ持っている感情ではなく訓練によって身につけるべきもので、その訓練とは「相手の立場になって感じる」習慣を持つこと。つまり「共感」の大切さと、それを身につけるには訓練が必要なことを説いてくれています。適塾をつくった緒方洪庵への敬意も綴られていました。教えることこそが学びであり楽しみ。そう言い切れる教師がもっと増えると良いですね。
読了日:04月11日 著者:司馬 遼太郎

象の旅象の旅
瞬間的に脚光を浴び、そして忘れ去られる。一過性のブームに翻弄される象と象遣いの旅を著者が語って聞かせる物語。随所に皮肉が散りばめられていて愉快痛快で同時に切ない。「どうであれ、友よ、お前の行き先に不安はない、ぼくは違う、ぼくは象遣いで、寄生虫で、おまけなんだもの」と行く末を案じていたスブッロのその後が、幸せなものだったら良いな。記録がないからわからないというのもやっぱり切ないじゃないか。動物園の存在意義とか、ダイバーシティとか、なにげにいろいろ考えさせられた。とりあえず『白の闇』も読んでみよう。
読了日:04月12日 著者:ジョゼ・サラマーゴ

北条氏の時代北条氏の時代
金沢北条氏を学ぶ前によりメジャーな鎌倉北条氏について。北条氏自らが将軍職についたり、官位を得たりしようとしなかったのは「御家人による御家人のための幕府」という立ち位置を守ることが自らのためだったから。義時、泰時、時頼までは自力で得宗(北条本家の当主)の地位をつかみ取ったが、時宗以降、世襲制になったあたりから終わりが見え始める。鎌倉から室町への転換は足利尊氏(源氏の血筋)の謀反。肝心の金沢北条氏は「ヤバそうだから出家しよ」という感じで弱っちかった笑。
読了日:04月16日 著者:本郷 和人

新装版 炎環新装版 炎環
鎌倉幕府と北条氏についてのお勉強読書。来年のノルマ本のはずが前のめりで読了。頼朝の実弟のひとり全成目線の物語「悪禅師」、「義経記」では極悪のチクリ魔とされている梶原景時を主人公とする「黒雪賊」、北条政子の妹で全成の嫁の保子を中心に語られる「いもうと」、そして源氏が滅び、執権政治が盤石のものとなるまでの北条四郎の物語「覇樹」の全4編。「覇樹」を一番物足りないと思うくらいに先の3編がかなり極上の仕上がり。王道から逸れた視点なので史実とは異なるフィクション多めとは思いつつもページを手繰る手が止まらなかった。
読了日:04月20日 著者:永井 路子

おまえの俺をおしえてくれおまえの俺をおしえてくれ
わたしも、土門さんの導きで人生をふり返りたいぞ…。と、それはさておき、壮絶な子ども時代をまとめた前半は涙なしでは語れないし読めない…はずが、なぜか笑ってしまった笑。彼の筆致が笑いを誘うのかな。生活のために続けていた新聞配達で”変わらぬ給料の中に見えない「己の時給UP」の法則を生むことができた”とかスゴイ。サラリーマンがなかなか手にできない法則だ。ちっこい身体でヤンキーに立ち向かったところでしょうもないと自覚し、自分の立ち位置を子どものうちにメタ認知したのもデカイ。そして周囲に頼れる素直さが人生成功の鍵。
読了日:04月21日 著者:徳谷柿次郎

JR上野駅公園口JR上野駅公園口
4月のノルマ小説をギリギリで読了。上野動物園には宮家の方々がお越しになることがあるので立派な応接間があるんですよね。それは知っていたけれど、彼らのお越しに先立って行われる特別清掃「山狩り」はまったく知らなかった。そして、山狩りの度に「芝生養生中につき立ち入り禁止」のエリアが増えるということも。息子を失い、ホームレスになる覚悟での再上京。切なすぎる。でも他人事なんだよな…自分にとってはもちろん宮家にとっても。宮家が寄り添う国民の中に山狩りされるホームレスは含まれていないという現実を突きつけてくる物語でした。
読了日:04月30日 著者:柳美里