『最善のリサーチ』出版間近

2024年05月14日(火) 17:41

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"JUST ENOUGH RESEARCH" WILL BE AVAILABLE IN JAPANESE
Since 2010, the 'A Book Apart' series has aimed to be enjoyable and concise, covering single topics. Under UX Days Publishing’s supervision, it will now be published by Mynavi Publishing. The first release on May 27 is 'Just Enough Research' by Erika Hall, titled 'The Best Research' in Japanese. The book is easy to read, well-translated, and provides valuable insights into UX research, especially about surveys. The Japanese edition is priced affordably at 2,739 yen compared to the original's higher price.

ひとつのトピックに絞ってサクッと読める分量にまとめることで「楽しく読める本」にしよう!ってなコンセプト(わたし訳)で2010年以来刊行を続けている『A Book Apart』シリーズが、UX Days Publishingの監修でマイナビ出版から出ることになったのです。

その第一弾として、5/27にいよいよ発売となるのが『最善のリサーチ』。

好評発売中の『ウェブ・インクルーシブデザイン』の中でも何度も引用されているErika Hall氏の著作『Just Enough Research』が『最善のリサーチ』という魅力的なタイトルでお目見えです。予約受付中!

出版社さんのご厚意で一足先にPDF版を読ませてもらいましたが、週末にあっさり読了しました。まさにサクッと読める分量だった。そしてサクッと読み切るには翻訳が大事ですが、ところどころに主従の係り受けが気になる文はあったものの、タイポはたぶん一ヶ所しかないし(ゼロではなかった……残念)、日本人にはわからないアメリカ文化に絡んだ記述にはしっかり簡潔な注釈がついているし(スタートレック多め笑)、気負わずに読み始めれば、気負う前に読み終わります。

「UX」という言葉が生まれて、リサーチャーの多くが「UXリサーチャー」を名乗るようになって、でも中にはマーケティングリサーチしかしたことがないのに「UXリサーチャー」を名乗っていたり、ユーザビリティテストのモデレーターしかできないのに「UXリサーチャー」と言い張ったり、この類の混乱はいまだに現在進行形だと思うのだけど、ひとつ全員に理解してほしいのは「UXリサーチャー」を名乗るからにはアンケートに代表される定量調査の設計や実施、結果の分析なんかもできる必要がある。少なくとも肝心なところは説明できなければならない。と思う。そんな裏事情には触れずにシレっと「アンケート」という章を設けて、「アンケートは、最も誤解されやすく、誤用されるリスクが高いリサーチ手法です」「アンケートは、すべてのリサーチ方法の中で最も難易度が高いものです」と書いてくれています。調査サンプルについて理解するために必要な数学の知識は「森に住むケンタウロス向けに企画しているウエストバッグのニーズを測るためのアンケート調査」という物語仕立て。ここがかなりわかりやすい(そして楽しい)。そして、とうとうアンケートの実施を止められなかったときに、何をどう計画し、準備して本番に臨むべきかも丁寧に教えてくれています。これがあれば、私にも定量調査を担えるぞ!と錯覚させてくれるくらいにわかりやすく笑。

というわけで、なにげにかなりおすすめの本書ですが、もうひとつ言っておきたいのは「安い」ということ。本家『A Book Apart』の原著は、日米の物価さをもろに反映していてとても高いのです。『Just Enough Research』をAmazon.jpで買うとしたら、ペーパーバックで約5,500円、電子書籍でも約5,000円というお値段です。これを、UX Days Tokyoとマイナビ出版の方々の(たぶん)努力で2,739円まで下げて、お求めやすい価格にしてくれました。というか、日本だとこのくらいでもまだ高いと感じる方はいるかもしれませんが、シリーズが出揃った暁には、まとめ買い割引きみたいなこともきっとやってくれると思うので(知らんけど)、このシリーズに関心を寄せてくれる方には、ぜひ出版を買い支えていただきたい!というご案内でした。