2024年3月の読書記録

2024年04月04日(木) 16:02

本&映画の紹介

この年度末は、ビツクリするくらい仕事が少なくて、ゆるりと読書を楽しみ続ける3か月となりました。そしてうっかり司馬遼太郎を読み始めたら、それはもうエンドレス。小田原北条氏ではなく、金沢北条氏について勉強したかったのに、室町時代にはまり込んで、流れで『応仁の乱』の勉強おっぱじめてしまったぜ笑。小説としては『むらさきのスカートの女』も面白かったけれど、司馬遼太郎相手だと負けちゃうね。

お勉強本としては『コンテナ物語』と『NO FLOP! 失敗できない人の失敗しない技術』かな。前者は重厚なノンフィクションだけど「物語」と銘打っているだけあって小説のように楽しく読める。でもボリュームがスゴイから時間と気持ちに余裕のある人向け。後者はUX界隈の人は読んでおいたほうが良さげな一冊。そもそものニーズが存在するかどうかをサクッと確認するための方法をかなりわかりやすく指南してくれています。最後に「自分や社会のためになるか?」という自問自答の必要性に触れてくれているのも魅力的。

しかしどれか1冊だけオススメを選ぶとしたら『橙書店にて』かな。ゆったりとした春にふさわしい。本屋って大事だよね…を再確認させてくれる良書でした。



読んだ本の数:14
読んだページ数:4418
ナイス数:156

新装版 箱根の坂(上)新装版 箱根の坂(上)
金沢北条氏について勉強するつもりだったのだが別人だった笑。え?室町時代?伊勢新九郎?ダレそれ?みたいな状態で読み始めた爆笑。しかし司馬遼太郎の筆致に吸い込まれて止まれない。室町期の世情、男女のアレコレや時宗をはじめとする宗教と庶民の様子などを丁寧に教えながら物語を進めてくれるので(恥ずかしながら)一から学ぶことが多くて大変なのだけど、当時を共に生きる気分で読めて楽しい。”妹”と自分に言い聞かせて距離を取り続けた千萱とその子の窮地を救うべく動く新九郎。伴う兵庫と小次郎。舞台が駿河へ移るところで終わり。次。
読了日:03月02日 著者:司馬 遼太郎

コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版
「海運業とは船を運航する産業ではなく貨物を運ぶ産業だ」と見抜いたマルコム・マクリーンの前半はほぼ伝記。彼の挑戦と苦労と成果を語るために、港湾という場所とそこで働く労働者たちの生き様を描き、目先のことに捉われて不実に動く政治家や規制当局の歴史を紐解き、先行者利益が長くは続かない実態を詳らかにする読み応えのある一冊。コンテナのおかげでわたし達はモノを安く早く手に入れられるようになった。その恩恵と表裏一体なのが環境破壊。AI港湾の実現でまたもう一波乱ありそうな運輸業界。今後もお世話になるのでがんばってほしい。
読了日:03月04日 著者:マルク・レビンソン

新装版 箱根の坂(中)新装版 箱根の坂(中)
土地相続など一族内のもめごとを調停するのが公儀の役目。その見返りに下々は租税を差し出す。是非善悪の裁定機関として機能すればこその公儀そのものがお家騒動でわちゃわちゃすれば信頼を失う。室町時代後期、寺が力を持ち、百姓が一揆を起こして歯向かうようになった時流がわかりやすく描かれていた。勉強になるー。それよりも物語。早雲が駿河に下った当初の目的が決着し、最後は京都でしばしのんびりムード。というわけで、箱根の坂はぜんぜん出てこない笑。迷わず下巻へ行くが、この流れで太田道灌と応仁の乱を勉強しておきたい気分ナウ。
読了日:03月05日 著者:司馬 遼太郎

不道徳お母さん講座: 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか不道徳お母さん講座: 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか
もっと不道徳な内容を期待してた笑。3章でやっと現代日本にたどり着き、著者の軽口に拍車がかかったあたりが唯一リラックスして読める部分。その他は過去の文献や資料を参照しながら「母親は無償の愛で子供に尽くす聖なる存在」であるべきという刷り込みが国家ぐるみで成し遂げられてきた経緯を真面目に追いかける展開でした。国家の母性推しを利用して参政権を獲得する流れもあったわけで女子だけが被害者とは言えないのだろうけど、日本のジェンダー格差が埋まらない背景にある歴史がかなり納得のいく形で綴られてます。この著者おもしろい。
読了日:03月08日 著者:堀越英美

新装版 箱根の坂(下)新装版 箱根の坂(下)
華麗な軍装ではなく、流鏑馬で綺羅を見せる大将。かっこよすぎる。64歳で小田原城と西相模を手にした後、17年!待ってからの三浦攻め。敵が油断しまくるまで待ってから「積年のうらみを晴らせ」と兵を送り出す早雲。道寸には結局逃げられて口惜しい。さらに待つこと4年。85歳で最後の大勝負とは、元気だなしかし笑。自らの戦はすべて「十のうち四」という年貢を維持して民を守るため。盟友たちとの舞台の描写が涙を誘う。小次郎も兵庫も生きてたのね(後半の出番すくなかったな笑)。88歳で病没。すごい生涯でした。
読了日:03月10日 著者:司馬 遼太郎

橙書店にて橙書店にて
熊本の橙書店。そこで緩やかに流れる時間と空間に居合わせる人たちの日常や非日常が穏やかに語られていた。自分がやりたいと思ったこと、背伸びし過ぎずにできそうだと思ったこと、自分だけじゃなく誰かのためにもなりそうなことを、地道にひとつずつ積み重ねてきたら村上春樹を迎えるほどになっちゃったって笑。素敵な店主さんなんだろうなー。本屋もステキだろうなー。熊本までわざわざ行きたいけど、白玉(猫)がいるしな……。仕方ないから代わりに横浜の「本屋・生活綴方」へ行ってみようか。
読了日:03月13日 著者:田尻 久子

世界の天変地異 本当にあった気象現象世界の天変地異 本当にあった気象現象
人類が引き起こした地球の温暖化にすべての原因があるわけではないのだろうけれど、昨今の極端な気象現象のほとんどはおそらく自分たちが蒔いた種。日本は特に大きく影響を受けているとされるけれど、これを読むと世界中が危機的な状況にあることがわかる。多すぎたり少なすぎたりする水。強すぎる風がもたらすさまざまな嵐。溶ける氷と降りすぎる雪。気象に影響するすべてが複雑に絡まり合って、どこにどんな症状が現れるかわからないのがコワイ。しかし、写真は美しい。今年も酷暑に耐える準備をしなければね。
読了日:03月14日 著者:マッティン・ヘードベリ

むらさきのスカートの女むらさきのスカートの女
2024年のノルマ本3冊目。『こちらあみ子』や『あひる』の作家さんの手によるものだと解説を読んで知るという。どうりで、社会の中でしか生きることのできない人間の「闇」の部分がなぜか明るく楽し気に、救いがありそうな雰囲気で描かれていてスイスイと読んでしまう。心のどこかでハッピーエンドを期待しながら、しかし黄色いカーディガンの女の常軌を逸した生活が加速度つけて狂っていくところの躍動感に不謹慎ながらワクワクしたりなんかもして。公園で遊んでいる子ども達も遠くない将来に病んでしまうと思うと切ない。
読了日:03月17日 著者:今村 夏子

おしゃべりな脳の研究――内言・聴声・対話的思考おしゃべりな脳の研究――内言・聴声・対話的思考
幻覚や幻聴の経験はまったくないし、頭の中にある思考に「音」を感じた経験もない……と思っていたけれど、ろう者の内言や聴声に手話や読唇が現れるというあたりを読みながら自分の内言にも「リズム」や「抑揚」はあるかもしれないな…と思い直す。いやしかし、意識的な内言と無意識のそれとでは違うという話もあるのでそのリズムは意図的に作り出してしまったものかもしれない。とかいろいろ考えさせてくれるけれど、すべての研究がまだ途中なので目の覚めるような結論はもたらされない。消化不良。
読了日:03月19日 著者:チャールズ・ファニーハフ

日本史のなかの神奈川県日本史のなかの神奈川県
金沢文庫界隈を走り回るための参考書。やはり鎌倉幕府成立以降がおもしろい。能見堂と金龍院はすぐ近くなのでなるはやでお邪魔しよう。小田原駅前の銅像って北条早雲だったのかー!ってこともわかったので次に行ったときはかならず拝見。なにより興味深いのは、関東大震災の影響で水田に突如あらわれたという旧相模川橋脚。茅ケ崎へ行く用事が思いつかないし、文庫から果てしなくアクセス悪いのだけど、見に行きたいなー。神奈川県内にも知らないところがたくさんあって楽しいです。
読了日:03月20日 著者:

インタビュー大全: 相手の心を開くための14章インタビュー大全: 相手の心を開くための14章
「中途終了型発話」の活用、「自己開示」と「自己呈示」の違いなど、「なるほど、そういう言葉があったのね」という気づきをいくつかいただきましたが、総論として、記事を書くために実施するインタビューとユーザーインタビューは似て非なるところが多いということの再確認が中心だったかな。そして「インタビュアー」と「インタビュイー」の紛らわしさも再痛感。たぶん、一か所書き間違えていた。番外編としてまとめられている記事を執筆するところが個人的にはいちばん参考になりましたー。
読了日:03月23日 著者:大塚 明子

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱応仁の乱 – 戦国時代を生んだ大乱
『箱根の坂』からの流れで苦手な日本史に挑戦。「室町時代に京都で起こったすったもんだ」くらいの理解だった応仁の乱についてお勉強です。大枠は細川(東)vs.山名(西)だが、発端は畠山のお家騒動。裏で足利の跡継ぎ問題も絡んだせいで全員が後に引きにくくなる。畠山義就が政長に勝ちそうなところで山名が余計なことをしなければ終わったものを、自陣に対する面子キープが重要な細川がまたキレてさらに長期化。山口の大内政弘が西軍キーマンの一人だったとかまったく知らなかったなどもあって、一回読んだくらいじゃ頭が追い付かない笑。
読了日:03月25日 著者:呉座 勇一

Google×スタンフォード NO FLOP! 失敗できない人の失敗しない技術Google×スタンフォード NO FLOP! 失敗できない人の失敗しない技術
長らく積んでたが良い本だった。企画や起業に先立って読むべき1冊。自分のアイデアがロングイット(この訳語はイマイチだと思う)ではなくライトイットであることを確認することがとにかく大事。アイデアをXYZ仮説として書き出し、ズームインしてxyz仮説に改め、OPD(Other People's Data)ではなくYOD(Your Own Data)を集めて検証すること、金と時間をかけたプロトタイプよりもサクッとプレトタイピングすること、結果を判断する際には、身銭を切っていない意見やいいね!は無価値とすること。
読了日:03月27日 著者:アルベルト・サヴォイア

そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかいそんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい感想
わたしもなりたい「植物観察家」。ちょうど春だし、あちこちに新芽が出てきているから始めるには絶好のチャンス。アメリカシャクナゲの雄しべを触ってみたいなー。ナギイカダの花を見つけたいよー。カラスウリのレースがほどけていくところも見てみたい。いやいや、自力で見つけられるかどうかわからない植物よりもまず、玄関先にあるヒメシャラの観察から始めよう。引っ越しで弱ってしまった植木たちも、もうすこし細かく寄って見てみることにしよう。老眼がはじまると、ちまちまとしたところを逆に見たくなるものだよね笑。
読了日:03月29日 著者:鈴木 純