2022年7月の読書記録
2022年08月17日(水) 09:36
本&映画の紹介7月も順調でした。借り読みが多くて積読本はあまり減ってないけども。
『アフターデジタル2 UXと自由』で紹介されている中国の事例が本当に勉強になるし、日本がどれほど遅れているかを思い知らされる。UXerは読んだほうが良い。『ミスマッチ 見えないユーザーを排除しない「インクルーシブ」なデザインへ』も、ものづくりに関わる人たちが知っておくべきことがよくまとまってました。
小説は、『三体』祭りで疲れたのでゆるいものを読みたかったのに、3冊全部、暗くて重苦しい内容でした。せっかくの明るい季節に読む本じゃないのでオススメしません。
「はやくゴールデンカムイのアニメはじまらないかな~」とじれてる人には『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』が良い予習になるでしょう。多少のネタバレは覚悟してください。
読んだ本の数:14
読んだページ数:3255
ナイス数:97
Life Changing:ヒトが生命進化を加速する
『自然って何だろうか』からの抜粋4冊目。そうか……、はじまりはオオカミ→犬だったのか。人類は、生きるために野生動物を家畜化し、選択交配により効率を上げ、人工授精により望ましい遺伝子を残し、テクノロジーの進化を支えに遺伝子検査やクローン作成に着手し、そして生物多様性の衰退が急速に進む今の時代になって、家畜の野生化をはじめとするさまざま手法により生物多様性の喪失を食い止めようと躍起になっている。「手つかずの自然」なんてものは存在しないというのを再確認しました。気づくのが遅かったようにしか思えない。
読了日:07月02日 著者:ヘレン・ピルチャー
精神科医が教える ちょこっとズボラな老後のすすめ: 第二の人生、その「ストレス」手放してみませんか?
最近重たい読書が多めなので、ゆるいのを読みたくなった。で、コレ笑。足るを知り欲張らないこと、頑張りすぎず無理しすぎず、適度なところで何事も手を打っていくべしと。つまりLagom。老後になるのを待たずにLagomでいこうと思う。「自分のお金は自分のためにこそ使う」はぜひ実践したい。そろそろサプリメントで栄養補給とか考えたほうが良いかな?と思っていたけど、まず白湯で良さそう。ってな感じで、意外とあっさり影響受けたりする。そうやってさほど考えずに素直に従うのもちょこっとズボラのうちだよねー。
読了日:07月03日 著者:保坂 隆
アフターデジタル2 UXと自由
上海に拠点を置く著者だからこそ書ける中国の事例がとても参考になる。「UXとテクノロジーが牽引する社会」がアフターデジタル。「DXの目的は新しいUXの提供」であり、「UXに還元してこそのデータ」であり、すべてに通底するのは「ユーザーの置かれた状況を捉えること」ということで、全力でユーザー調査の必要性を説いてくれている笑。残念なのは「UIインテリジェンスの全体構造図」がわかりにくいことかな笑。ぜんぜん頭に入らない。いや、自分の理解が足りないということだと謙虚に思っておくべきか……。
読了日:07月05日 著者:藤井 保文
真鶴
真鶴出版にお泊まりしつつの借り読み。お林を駆け抜けて霊的なものを…まったく感じなかったけれど笑、木々が厳かにドッシリと蔓延る森で著者(と、京)はなにかを感じ取ったということだろうか。手放すためにも通わなければならなかったと。「距離」を考えさせられる物語だった。目の前にいても遠い。そこには居ないのに近い感覚。女三人という設定が、母の腹から生まれる子、子を産む母、そこには入り込めない男、失踪してなお女たちの心に重たく残る男。川上弘美さんが時おり差し挟む美しい日本語が物語の重さをそろりと変えていくそんな物語。
読了日:07月10日 著者:川上 弘美
世界で一番好きな店
真鶴出版で借り読み。お店への想いは、味だけではなく文脈とセット。出会い方、過ごし方、コミュニケーション、そして別れ。味よりもそちらの方が記憶のウェイトは大きいのだろうなぁ。お別れしたお店への想いはさらに大きくなる。つまり、閉店しているお店が多くて残念笑。でも、茨城県のまるで縁がなさそうな町にある木鉢坊で「じゃっぱ」を、荻窪は中華徳大で「ほうれん草炒飯」のらんらんトッピングを食べたいぞ。閉店する前に行こう!
読了日:07月11日 著者:ふもと出版
AIの雑談力
AIに雑談をさせるために人間の雑談を研究した結果を共有してくれていて、つまり人間の雑談に関する知見の宝庫。人間が雑談の中で取り上げるトピックは多岐に渡るが、意味により分類すれば「自己開示」が最多。「自己開示の返報性」を考えると、人間にしろAIにしろ自己開示できるようになることが最初の一歩とも言える。質問の分類もおもしろいし、参考になるなー。このくらい細分化して教えてあげれば初心者でもインタビュー設計を進めやすくなるかな? ということで、なにげにかなり参考になりました。ボットの進化にも期待しています。
読了日:07月12日 著者:東中 竜一郎
寝る脳は風邪をひかない
月1回とは言え、14年間も連載を続けるってスゴーイ。尊敬しかない。かなり専門的な内容を一般人が読んでわかる文章にしつつ、さらに所定の字数内(わずか見開き2ページ分)に収めるという所業を毎月かぁ……。かなり新しい研究にもとづく話もあるし、すべてに裏付けとなる研究論文が添えられていて信ぴょう性が高い。3章「村八分を数学的に証明する」と4章「ヒト度を高めてみませんか?」が特に参考になりました。もうすこし咀嚼してから活用したい。
読了日:07月15日 著者:池谷 裕二
ミスマッチ 見えないユーザーを排除しない「インクルーシブ」なデザインへ
誰にでも合うものを目指していたら、誰にも合わないものが仕上がった…とならないようペルソナをつくり、ペルソナの気持ちに寄り添った人間中心設計を目指してきた業界が次に向き合う問いはおそらく「どの人間が人間中心設計の中心にいるべきなのか?」だ。そこで「平均人」しか考えられないようであればインクルーシブデザインは遠い。one-size-fits-allがユニバーサルデザインで、one-size-fits-oneがインクルーシブデザイン。後者を大勢のユーザーへと拡張するというのが軸。そしてまずはアクセシビリティ。
読了日:07月16日 著者:キャット・ホームズ
小さな泊まれる出版社
真鶴という小さな港町にある「泊まれる出版社」ができるまでの道のりと想いが綴られていました。あえて綴らなかった葛藤もなんとなく見え隠れしていろいろと考えさせられます。お金を中心に回る「資本主義」から、暮らす人の幸せを中心に考える「暮らし中心主義」へ。儲かるかどうかではなく幸せかどうか。良い言葉だと思う。「モノからコトへ」はもう人口に膾炙しすぎて陳腐にすら響くようになってきたから、密かに「暮らし中心主義」を唱えよう。真鶴はいろいろ程よくて、Lagomを思わせる良い町でした。しかし猫も多い。
読了日:07月18日 著者:川口 瞬, 來住友美
漂う子
2022年のノルマ本15/26冊目。「居所不明児童」というデッカイ社会問題を軸にした親による児童虐待を考える物語でした。「死に方まで親父に決められちまったよ」と呟いて死んでいった兄を思い出すシーンが切ない。本筋とはかなり逸れたところだけど、なにげに大事な伏線だと思う。親になることを受け入れられずにいる主人公の心の葛藤が最後に落ち着いてくれてうれしい。それにしても、登場人物の中に大小はともかく虐待を受けて育った人が多すぎ。これが社会の縮図だとしたら、日本社会はもう戻れないところまできてると思わざるを得ない。
読了日:07月19日 著者:丸山 正樹
ファーストラヴ
2022年のノルマ本16/26冊目。またしても児童虐待…。親に愛されたくて仕方なかった少女が父親を殺してしまったらしい。なぜ?を探る国選弁護人と臨床心理士の間にもなにやら因縁があるらしい。いろんな謎が気になってスイスイ読めました。生きるって誰にとっても大変なことで、ちょっと愚痴ったり、すこしだけ暴れたり、復活したり、また凹んだりをくり返しながら生きていくんだな。彼女は暴れすぎてしまった…というか、そもそも暴れてなかったという終わりに脱力。我聞さんが良き夫で良き兄で、最後完全に持っていった笑。
読了日:07月24日 著者:島本 理生
アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」
ウポポイへ行く前の予習。まず「カムイ」がイコール「神」ではないという基礎知識から復習です。カムイの世界から人間の役に立つために降りてきてくれたと考えられるモノすべてにカムイが宿っていると。伝承されているウエペケレによればカムイが不心得なことをしたときは抗議をしても良いし、人間に悪さをするものは「ウェンカムイ」と呼ばれ人間により罰を与えられることになっている。ということで、たしかに「神」とはちがう。その他もろもろの雑学を授かって、いざウポポイ(民族共生象徴空間)へ。
読了日:07月27日 著者:中川 裕
風のゆくえ 北の動物たちを描く
界ポロトにて借り読み。北海道の大自然とともにある動物や鳥を、身近に感じつつも畏敬の念を持ち、距離を取りつつも機会があればお近づきになりじっくり観察をさせてもらってからのドローイング。絵はどれもとにかくスゴイ。今にも飛び出しそうな鳥たち。細部まで手抜きなく描かれています。動物たちの「瞳」が印象的でした。
読了日:07月28日 著者:増田 寿志
49歳、秘湯ひとり旅
界ポロトにて借り読み。私も49歳。あとひと月ちょいで50歳。「誰も来るな!」と念じながら露天風呂をひとりじめしたり、1泊じゃ物足りなねぇ!と連泊基本だったり、そのうち1泊は素泊まりにして外でご飯にしたり、昔のようには食べられないとか、身体が言うことを聞かないとか、若い頃「お子さんは?」と聞かれるの嫌だったとかまで、いろいろ同じ過ぎて吹きまくり笑。ひとり旅、行きたくなっちゃったなー。50歳の記念にどこか行ってしまおうか、ひとりで。
読了日:07月30日 著者:松本英子