2021年4月の読書記録

2021年05月10日(月) 18:34

本&映画の紹介

自主隔離期間中に借りた弟の家の本棚にあった小説の中から、未読の著者作品を中心にむさぼり読んでみました。楽しかったー。弟はどうやら警察小説が好きで、特に「拉致監禁」と「誘拐事件」に目がないようです。あまりにも連続してそんな事件モノを読みすぎて利用可能性ヒューリスティックのスイッチが入りそう笑。

帰国後も月に10冊以上の読書を続けられるかどうか心配でしたが、とりあえずひと月目はクリアー。10/12冊が小説ですけども……。弟チョイスの中では『慟哭』が圧倒的に良かったです。貫井 徳郎さんは初読だったので、他の著作も読みたい。『64(ロクヨン)』の横山 秀夫さん作品がたしか積ん読に1冊あったはずだから早めに読むことにしよう。

5月からは小説に偏らないようにしまーす。



読んだ本の数:12
読んだページ数:3859
ナイス数:209

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士
若かりし頃に習ったのは「日本語対応手話」であり、それとは似て非なる「日本手話」というのがあること、ろう者を両親に持つ聴こえる子を「コーダ」と呼ぶこと、「deaf(耳が聴こえない者)」と「Deaf(ろう者)」の使い分け、「独自の言語と文化を持つ集団」としてろう者を捉えなおそうとする動きがあることなど、知らない世界を丁寧に教えてもらいました。ろう者に限らず、弱者が辛い目にあう社会はなくすべきだし、弱者の声をきっちり聴こうとしない警察も正さなければならない。そこへ挑む運命を背負ったコーダの物語でした。
読了日:04月01日 著者:丸山 正樹

屍人荘の殺人屍人荘の殺人
弟宅での仮読みその①。冒頭でテロ事件を追うミステリーだと思い込んでからの、ゾ、ゾンビかよぉー笑。研究者が意図的に残した手帳を若人たちが見つけたところで「よし、ここから本格的にテロとの闘いだ」と期待するも、ゾンビとの闘いが続く。というか、ゾンビと闘う渦中に殺人事件勃発。犯人の根性もスゴイが、謎解きを諦めない探偵たちの心も強い。クズ男たちが死ぬのは当然の流れとして、犯人の正体は分からなすぎズルイと思ったけれど、まあ消去法でそうなるわけか。で、テロはクローズドサークルをつくるための仕掛けに過ぎなかったという…。
読了日:04月04日 著者:今村 昌弘

慟哭慟哭
弟宅での仮読みその②。幼女誘拐殺人事件の捜査が繰り広げられる裏で、男がいかにも怪しげな宗教にはまっていく。2本の線がいつかどこかで交わることを確信しながら読んでしまったらアウト。叙述トリックに絡めとられて逮捕の瞬間まで気づけない。気づけなかった。悔しくて悲しい読後感。彼は捕まってしまうのに、彼が追っていた犯人は捕まらないままだなんて……。子ども達よ、知らないオジサン(オバサンも)について行ってはいけないよ。たとえカワイイ子犬を連れていたとしても。
読了日:04月07日 著者:貫井 徳郎

優雅なる監禁優雅なる監禁
弟宅での仮読みその③。変態兄弟に拉致監禁され凌辱される地獄を見た美女が復讐を果たすまでの物語。前半のエロ描写が吐き気を催すレベルで読むのを止めようかと何度も思ったけれど、彼女がどうやって脱出し、復讐を遂げるのかが気になっちゃっての読了。男はやはり単純でバカだなぁってことがとことん描かれていました。アレだけのことをしておいて土下座すれば許してもらえると思ってるし、女の嘘や演技をかんたんに信じるし、ライバル心を煽られてあっさり共犯者を裏切るし、そして殺されると。救いのない兄弟であった。
読了日:04月10日 著者:大石 圭

プラ・バロックプラ・バロック
弟宅での仮読みその④。仮想空間で出会った人たちがこんなに身近にいましたってあるかな?そこが一番納得いかない。刑事が身内に捜査情報漏らしまくるところも現実世界ではなさそうだし。唯一ありそうだな…と思ったのは、警察内部の主導権争いぐらいかな(知らんけど笑)。というわけで、全般的に現実感が薄くて入り込めない物語でしたとさ。
読了日:04月11日 著者:結城 充考

時限病棟時限病棟
弟宅での仮読みその⑤。また拉致監禁かよっ笑。しかも、女子どっちか妹だろ?って予想できちゃったぞ、かなり早いうちに。あと、リアル脱出ゲームは自分に向かないであろうこともわかった。そういうドキドキは嫌だ。小説って、刑事が裏方の場合は良い仕事する感じで描かれるものですね。最後巻き込まれなくてホッとしました。それにしても、他人の本棚から適当に選んで読書するのがなかなか楽しい。拉致監禁と誘拐事件が好きらしいこともわかってきました。
読了日:04月14日 著者:知念 実希人

翳りゆく夏翳りゆく夏
弟宅での仮読みその⑥。20年前に起きた病院からの嬰児誘拐。すでに時効を迎えたこの事件の再調査を命じられた元記者が良い仕事をしすぎてしまってまさかの真犯人発覚。20年の月日を経ての取材で明るみになるような事実を警察は見逃したわけで、先入観で曇った目の恐ろしさを思い知らせるが如く、次々と伏線が回収されていく気持ちの良いスピード感もありました。加害者の娘と被害者の息子、ともに素敵な大人に成長しつつあることが大きな救い。あと、家政婦の千代さんの存在もなにげにでかい。
読了日:04月16日 著者:赤井 三尋

64(ロクヨン) 上64(ロクヨン) 上
弟宅での仮読みその⑦。警察内部の上下関係がひどすぎて頭痛がするレベル。刑事部と警務部の間に立つキツイ立場の中間管理職で、家族の問題にも悩まされ続けるブサイク刑事が主人公。映画で主役を張った佐藤浩市の顔が浮かん少し読みにくい。「被疑者との同化を試みる。心の来歴を見極める」、そうして相手の気持ちに寄り添えば自白を促せる……と、取り調べに向かう刑事の態度には共感を覚えるも、小説に描かれるのは自白への「誘導」が多いから共感しちゃダメなところかもしれない。とりあえず謎が薄っすら見え始めたところで終わり。すぐ下巻へ。
読了日:04月19日 著者:横山 秀夫

64(ロクヨン) 下64(ロクヨン) 下
弟宅での仮読みその⑧。尊敬される上司というのは、警察に限らず一握りしかいないものなのかな……。部下に「ウスノロ」と吐ける下衆上司がいるからこそ、松岡は映える。言える範囲ぎりぎりで語り、部下に真相を読み取るチャンスを与え、同時に組織全体や事件全容を俯瞰した最適の判断を繰り出せる彼のような刑事がいるから、三上も踏ん張れた。その彼に「また一緒にやらんか」と言われたときの三上の胸中たるや。ロクヨンを締めくくるその時に、尊敬する上司を支える広報官でいるぞ!と決意を固める終わりが実に秀逸でした。
読了日:04月21日 著者:横山 秀夫

あなたはこうしてウソをつくあなたはこうしてウソをつく
疲れているときや時間圧が高いときはウソをつきやすい。他者に有利をもたらす状況でもウソをつきやすい。女性は利他的なウソを、男性は利己的なウソをつきやすい。若い人のほうがウソをつきやすい。といったあたりまでは感覚と合っているのですんなり読める。経済学・経営学専攻の学生、銀行員、さらに「創造性が高い人」がウソをつきやすいというあたりは切り口が面白いけれど歪んだ解釈に繋がりそうで危うい。著者も気をつけながら書いてくれているけれど、サラッと読んでわかった気にならないよう慎重な読書が望まれる。
読了日:04月21日 著者:阿部 修士

蹴りたい背中蹴りたい背中
『ニッポンの文学』からの抜粋4冊目。高校進学直後の女子がどんな想いで日々を過ごすのかが見事に描かれておりました。読んでいると、懐かしくて苦い過去の記憶がするすると呼び戻される。彼女には一人になる勇気があるようで、ない。たしかに誰かを求めてる。でも側にいてくれる(否、なぜか側にいる羽目になる)男子のキテレツっぷりと接するうちに背中を蹴りたくなるわけですなー笑。蹴られたとわかっているのに蹴られていないことにできた彼はなにげに良い子かもしれないとも思う。彼の頭の中も知りたい。そう思わせてくれる青春の物語。
読了日:04月23日 著者:綿矢 りさ

図解 感染症の世界史図解 感染症の世界史
2月に読んだ『砂戦争』がとても面白く信頼できる一冊だったので、同著者のこちらで感染症とコロナ禍の今について軽くふり返り。Quarantine(検疫)の語の由来みたいな雑学から、抗生物質の乱用がもたらし得る薬剤耐性菌の怖さといった深刻な未来への警鐘まで幅広く網羅されていました。森林伐採をはじめとする自然破壊を続け、畜産や養殖に抗生物質を使用し、過密飼育を常態化させ続け、人間がこれまでのように気楽に大陸間移動を続けるとしたら、感染症との闘いは避けられないようです。これが向き合わなければならない現実。
読了日:04月27日 著者:石 弘之