2020年12月の読書記録
2021年01月05日(火) 17:40
本&映画の紹介中山七里(の犬養隼人シリーズ)祭りと河合莞爾(の鏑木刑事シリーズ)祭りがあったのでこれらだけで小説5冊というのはちょっと勢いよくやり過ぎたか笑。旦那に「なに読んでるの?」と聞かれるたびに「事件」と答える愉快な12月でした。シリーズものは止まらなくなるから、しばらくお預けにしよう。
さてオススメは、『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』です。2020年後半の時点で知っておくと(たぶん)良いことが、とてもわかりやすくまとまっていました。テレビで適当なことを言う人たちに左右されることなく、自分で判断できるようになりたいなら読んでおいて損はないでしょう。
UX業界人には『行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する』と『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』です。特に後者はUX王子に教えてもらった一冊です笑。本当は紙で持っておきたい本だけど、取り急ぎ電子書籍で読了。そういえば、紙本を買うと電子もついてきますの逆のサービスとか、そろそろ欲しいなー。電子書籍で試し読みして、手元に置きたくて紙本を買うという流れはぜんぜんありだと思うんだー。
読んだ本の数:14
読んだページ数:4338
ナイス数:112
ハーメルンの誘拐魔 刑事犬養隼人
もっとも印象に残るのは、書店員さんによる解説だ笑。子宮頸がんワクチンの恩恵を受けた人がたしかに存在するのに、その数はデータとして確認できない。副反応に苦しむことになった患者側ばかりに焦点をあてると事態を正しく認識できないという指摘はすばらしいし、親友のカバンを持って立ち尽くしたままにされた美鳥を主人公にした妄想もうまい。本編のどんでん返しを想像できてしまったのは、どんでん来るぞと頭がわかっているからだよなー。つまり、純粋に楽しめなくなっている自分がいる。中山七里作品は連続して読むとダメなのかもしれない。
読了日:12月01日 著者:中山 七里
仕事にしばられない生き方
子どもに向かって「(こういうオモチャを)子ども騙しっていうのよ」と言える母との問答は、自分の欲望を客観視するための訓練だったと。14歳にして追い詰められて、「自分を支える、もうひとりの自分」を発見したと。働かず借金をこさえ続ける昔の相方からは「知的な栄養をふんだんに与えられてきた」と。絵にも物語にもダメ出しを喰らいまくったけどそのおかげで「見えてくることがいっぱい」あったと。彼女の人生は子どもの頃から「苦労」に満ちていたけれど、それをすべて「学び」と受け止める強さを持って生まれてきたのですね。尊敬。
読了日:12月02日 著者:ヤマザキ マリ
ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人
連続して読まないほうが良いのでは?と思いつつ、止められなかった。そして犯人あっさり見当ついてしまった。シリーズ4作目にしてもっとも返しがゆるい。それはそうと安楽死の問題はこれからどんどん深刻化しそう。安楽死と見せかけた殺人がやっぱり混じりますよね。そのあたりも想像ついちゃったなー。映像化されてるって知らなかったけど、犬養隼人は小栗旬くんだと思って読みました笑。中山七里作品はしばらくなしにしまーす。ひどいレビューだな、しかし。
読了日:12月05日 著者:中山 七里
行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する
行動を生じさせるために必要なのはCREATEアクションファネル。そしてそれらの前提条件が実際に揃うかどうかを見定めるためには文脈(ユーザー、環境、行動)を探れ!と。つくる前に効果測定の準備をすべしってところも、行動変容デザインを達成したければ人の認知を知るべしってところからスタートしているのも良いし、日本国内の事例を付録としてつけてくれているのも最高。事例として頻出するOpowerの電気家計簿が実は日本ではあまり根づかなかったので、次作ではぜひ文化差まで踏み込んでもらいたい。かなりオススメ参考書。
読了日:12月06日 著者:Stephen Wendel
ロウソクの科学
『危険な読書』からの選抜12冊目。ファラデーって誰だっけ? あー、右手の法則の! あれ?左手だっけ? くらいに基礎知識を忘れ去ってから読むと意外にも勉強になって楽しめる笑。イギリスの上流階級に属する勉強熱心な方々に対してくり返し提供されていた「クリスマス講演」の中でもファラデー本人イチオシだった「ロウソクの科学」の回がなぜか本として刊行されたものが今に伝えられているわけですが、ロウソクの炎を眺めつつ、ちょっとわたしも実験しちゃえ…と火遊びしたくらいにして危ないって笑。
読了日:12月09日 著者:ファラデー
認知バイアス 心に潜むふしぎな働き
大好きなパスツールの言葉が出てきました。そうです日頃の努力が物を言うのです。それはさておき、参考にしたい話題や事例や解説がてんこ盛りでありがたい! 特に6章「言語がもたらすバイアス」と7章「創造(について)のバイアス」は読み直して、ユーザー調査の文脈に落とし込むぞ! それにしても「認知バイアス」直球タイトルの本がブルーバックスから出る日が来るとは感慨深い。大勢が読んで、認知の癖を理解するようになれば、騙される人が減ったり、思いやりを持って人に接することのできる人が増えて社会は平和になる……かもね。
読了日:12月11日 著者:鈴木 宏昭
朝が来る
佐都子がひかりを抱きしめるラストで涙腺崩壊。これ以上、ひかりが逃げなくて済むと思ったらたまらなかった。佐都子もひかりも母親が毒を持っていましたね。父親の影の薄さも毒っちゃ毒だし。佐都子がその毒に侵されず、素敵な親になっているのがすごくうれしいし、ひかりには、実の親のことは忘れて、佐都子をお手本に前向きに人生をやり直してほしい。親から受け継ぐ考え方や価値観を自分が生きる時代に合わせて解釈し直していくのは大変だけど、みんなが前向きに取り組めば、社会は変わっていけるのだと思いたいし、そんな社会を見たい。
読了日:12月14日 著者:辻村 深月
Lagom: The Swedish Secret of Living Well
LAGOMは「多すぎず少なすぎず」「ちょうど良い」のように量的なバランス感覚として説明されることが多いけど、「ストレスをためず、楽に生きていくための自分なりの基準点」のようなとらえ方がしっくり来ることがやっとわかってきた。負荷の高い仕事ははっきり断るし、お金の心配をせずに済むように税金を払い、無駄遣いはしない。なにか買うときは、似たような買い物でもう一度悩む必要がないように今回じっくり考えるし、質の高い良いものを買う。「考えずに済むようにする」っていう(言葉は悪いが)怠惰の精神が裏にあるんだわコレ!
読了日:12月16日 著者:Lola A Akerstroem
ABC-huset : Vi hälsar på hos bokstäverna!
各アルファベットで始まる単語を見開き2ページにぎっしり。絵さがしをしながらボキャブラリーの勉強ができるスウェーデンの絵本。解説が韻を踏んだ詩っぽくなっていて、英語に訳してもよくわからないという難書。でもイラストがかわいい。Fはサッカー大好きっ子のお部屋、Jはクリスマスのお部屋、Pはパジャマパーティ開催中のお部屋、Sは靴が大好きな女の子のお部屋という感じで、スウェーデン人の暮らしの様子を想像できるようになってるのも魅力。しかし、オバサンになると単語ひとつ覚えることがこれほど大変になるという……。
読了日:12月18日 著者:Fia Eliasson
デッドマン
『粗忽長屋の殺人』が衝撃的な面白さだったので、河合莞爾祭りの開催となりました。これがデビュー作だそうですが、読ませますねー。最近読んだ刑事事件小説では刑事が腐ってることが多かったけれど、鏑木刑事率いる本シリーズは、自らの命を棒にふってでも市民を守り、正義を貫こうとする気概にあふれる刑事たち(しかも2人は超若手。こんな抜擢絶対ないぞと思うレベルの20代半ば)で、すこし心が穏やかになりました。事件は残忍だし、ロボトミー手術の功罪がテーマという重たさではありますが。鏑木刑事の地味な主役っぷりもかなり好き。次へ。
読了日:12月20日 著者:河合 莞爾
悪の脳科学
営業マンって、素早くラポールを形成できるかどうかが命ですよね、たしかに。喪黒福造のスゴ技に比べれば、わたしがつくるラポールなんて弱っちいなしかし笑。脳科学者である著者が人の認知バイアスを説明するときに使う言葉が端的で科学的でわかりやすい。認知バイアスを勉強してきた人にとっては新しい話はあまりないかもしれないけれど、どう説明してあげるとわかりやすいのかを知りたければかなり参考になる良書。『笑ゥせぇるすまん』を今さら読んでみようか……悩ましい。
読了日:12月21日 著者:中野 信子
ドラゴンフライ
遠足さながら4人で楽しく群馬出張して来いってあるかな? おまけに職権乱用して道中のスピード違反。そんなどうでも良いことが気になってしまった笑。前作でプロローグを忘れちまってる失態を犯したので、今作ではゴルフ帰りの兄ちゃんを忘れないように!と心に留めながら読んだものの回収されるのはかなりの後半だった。疲れた。2作続けて政治家が悪でした。真っ黒でドロドロ。実話を元に……とか言われてもすんなり信じられてしまいそうなのが悲しい。
読了日:12月23日 著者:河合 莞爾
新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実
専門家の頭の中にある知識や背景の大部分は言語化されるときに省かれてしまうと。その語りだけを素人が聞いてもわかるようにするには「インタビュアーがまず勉強すること」が大事だと冒頭で持論を展開する編集さんの真摯な態度と粘っこいインタビューと、彼がインタビューに先立って勉強してくれたことが三つ巴で本書をとてもわかりやすいものにしてる。今後も不安を払拭することを目的とするPCR検査の受診はそれほど重要じゃなく、ワクチンの登場に一喜一憂せず三密回避と手洗いを続けるべきであることがよーくわかりました。スウェーデンのことにも触れてくれていてありがたい。
読了日:12月27日 著者:峰 宗太郎,山中 浩之
ダンデライオン
「3ヶ月がんばってたったの267円。ならばこのカフェオレを飲まずに寄付すればよかった…」と、ボランティア活動の矛盾を口に出して先輩に詰め寄る彼女の賢さを数ページに渡って綴ったのは大切な伏線だったのだ。そんな賢い彼女も恋に溺れて道を誤ってしまったとは切ない。かなり自信を持って伏線を拾えているつもりなのに、どこかモヤモヤが残り続ける展開はいつもながらにスゴイ。そして悪党はいつも政治家っていうのも分かっていながらムカつくわぁ。大切な部下の心のわだかまりがキレイに整って、さぞや爽快であろうカブ。また会いたい。
読了日:12月28日 著者:河合 莞爾