2020年8月の読書記録

2020年09月07日(月) 17:16

本&映画の紹介

8月23日以降の6冊は、胃腸炎に苦しむ床の中での読書でした。『ゴーン・ガール』と『虚無への供物』はいずれも、読み止まることを許さない極上のミステリー小説。おかげで、お腹の痛みを忘れて夢中になれました。伊藤計劃の絶筆『屍者の帝国』も含めて、積まれていた小説を軒並み読んでやりましたとも。

8月に『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』を読んでますけど戦争反対。これを読むと、負けるべくして負けたことがはっきりわかるし、きっと負けて良かったんだと思う。命を捧げて闘ってくださった方々には申し訳ないけれども。

病に臥せったおかげで余裕の二桁読書でした。読みかけもたくさんあるので9月も楽勝です。


読んだ本の数:17
読んだページ数:4812
ナイス数:72


屍者の帝国屍者の帝国
19世紀の終わりの世界、人間が何よりも優先して屍者を生み出し、秘書や速記者として活用したり、戦闘員として戦地へ派遣したり……というこの物語は、進化したAIと隣り合わせの社会へ着実に近づいているわたし達の未来ともしかしたらそれほど違わないのかもしれない。と考えると憂鬱すぎる読後感。せっかく人生を全うしたのに、勝手によみがえさせられて、無感情に「生きる」ことを強いられるなんて辛い死後ですね。早逝した伊藤計劃は、そうしてまでも「生きる」ことを望んだだろうか……と考えてまた悲しくなるとか。
読了日:08月02日 著者:伊藤 計劃,円城 塔


Ikigai: The Japanese secret to a long and happy lifeIkigai: The Japanese secret to a long and happy life
「生き甲斐」が外国人にどう受け止められているのかを知りたくて読んでみましたが、これは「生き甲斐」ではなく「長寿の秘訣」の本でした笑。神道と仏教に、儒教も加えて3つを横並びに考えるのは強引だし、沖縄の大宜味村を日本の代表としてしまうのも乱暴。村の人たちの生活の柱にあるコミュニティの存在や畑仕事などは引退後の時間の使い方であって「生き甲斐」ではない。ラジオ体操に続けて、ヨガに太極拳に気功に指圧と出てきたら、もう日本の話じゃなくなってるし笑。総論としては、愉快に笑顔いっぱいで暮らしてれば長生きできるってさ。
読了日:08月04日 著者:Héctor García,Francesc Miralles


シャッター・マウンテン (角川文庫)シャッター・マウンテン
密かに開催していた北林一光祭りの締め。早逝しているので3冊しかないのだが。冬眠明けのクマが雪崩に巻き込まれる出だしで初作につづくヒグマの物語を期待したが、二作目に近いホラー小説でした。ちと残念。でも、霊がどうのの話だけじゃなくて人間の弱さや醜さもがんがん放り込まれてくるので色んな意味で気が気じゃない展開でした。とりあえずヘリのパイロットと嘱託医が速攻死んでしまってカワイソウ。次々と人が死んでいくので山の怖さは否応なく伝わりました。最後に登場の奥様がたくましく、美しかったのが救い。かくありたい。
読了日:08月06日 著者:北林 一光


スウェーデン式 アイデア・ブックスウェーデン式 アイデア・ブック
スウェーデンへ引っ越す前に一度読んでましたが、2巻を読む前に再読してみたら、良い本じゃないかー。毎月一冊あまり興味のない分野の本を読むってのも、スウェーデン語の絵本に挑戦するというのも宣言どおりにやっていて、我ながらエライぞ。でもせっかくなので「発想」のトリガーとしてセミナーで活用できるように、それこそ発想してみようかな……と思ってみたりなんかした。今回は間をおかずに2巻へいってみよう。
読了日:08月07日 著者:フレドリック・ヘレーン


ジニのパズルジニのパズル
『危険な読書』からの選抜8冊目。在日朝鮮人の少女が朝鮮学校の中等部へ進学して苦悩する様が描かれる物語だというあらすじを知ってから読み始めたら、舞台がいきなりアメリカだったので冒頭ぜんぜんついていけない。大混乱。しかし、ステファニーがジニに向けて発する愛がいっぱいでふつうに泣きそうになる。そしていよいよ朝鮮学校でのアレコレが語られて、ただでさえ大変な思春期の学校生活が何十倍も大変そうで苦しくなる。ラスト、ステファニーの腕の中で泣きじゃくるジニを想像してマジ号泣。家に帰れて本当に良かった。
読了日:08月10日 著者:崔 実


くらしの仏教語豆事典(下)くらしの仏教語豆事典(下)
上巻の記憶が遥か彼方だが、積読本消化目指して読了しました。醍醐味、投機、納豆、蒲団あたりのへぇ~度が高かったけれど、一番は旦那です。旦那と布施がおなじ「ほどこし」を意味するとはね…。旦那=金銭や物品をほどこしてくれる人とか言われたら、旦那を旦那と呼びたくなくなった笑。いや、遠慮なくほどこしてもらえば良いのか?
読了日:08月10日 著者:文:辻本 敬順 絵:寄藤 文平


Tio små blommor Tio små blommor
図書館で借り読み。花瓶にある10本の小さな花が、1本ずつ減っていくお話。1から10の数字を勉強するための絵本です。お父さんがなぜか映画館へ1本持っていくところからスタート。誰にあげるんだ?とか疑問に思っちゃダメ笑。牛さんに食べられたり、Fikaのおともになったり、おじいちゃんのお茶に浸されたり、しおれたり、友だちにプレゼントしたりして減っていくんだけどお父さんが誰と映画に行ったかは謎のまま。動詞がいくつか分からなかったが、挿絵のヘルプもあってこのくらいなら辞書なしで物語を追えました。かんたん過ぎたかも。
読了日:08月12日 著者:Emma Virke, Ida Björs


すばらしき日本語 (ポプラ新書)すばらしき日本語
「相手の知識量を推し量りながら話を進める技術」を駆使した話し方こそが「頭のいい話し方」だと解くくだりが良かった。会話をしながら「相手の頭の中身を推測する力」はユーザー調査をするときの肝です。書いたり喋ったりする日本語がイケてない人が薀蓄たれるの聞いてムカチンくるのは、「頭の悪い話し方」が気に入らなくて、そういう話し方しかできない人がまともなリサーチをできるはずないって、思ってたんだ、わたし。という気づきを楽しく与えてくれる一冊でした。著者の書く日本語はリズミカルで楽しいけど、わたしは猫が嫌いです。
読了日:08月15日 著者:清水由美


アイデア・ブック2(トゥーボ)アイデア・ブック2(トゥーボ)
子どもたちが柔軟に頭を使って、大人には真似できそうにない発想を繰り広げる様を事例たっぷりに教えてくれる良書。子育てに悩むお父さんお母さんにおすすめの気楽なガイド本です。同性愛についてどう説明しようかと悩むお母さんに浴びせた子どもの一言が超絶おもしろい! 日本人にはなかなかわからないかもしれないけど「先入観」を説明するときのネタに使わせてもらっちゃおう。
読了日:08月16日 著者:フレドリック・へレーン,テオ・へレーン


メンタルモデル ユーザーへの共感から生まれるUXデザイン戦略メンタルモデル ユーザーへの共感から生まれるUXデザイン戦略
汎用性が高く、さまさまな分野、領域で使えそうなことと、最後のまとめにビジュアルデザイナー的資質があまり求められないことがすごく良い。それなのにこれが日本で普及しなかったのはなぜか? 理由のひとつはすぐにわかりました。この本の翻訳が酷かったから笑。タイポは当たり前にゴロゴロあるし、文が終わってないとか、てにをはおかしくて係り受けがよくわからんとかそんなんばっか。でも調査の肝のひとつとなるリクルーティングを丁寧に解説し、結果的にはペルソナもできちゃうよという展開も良い。少し自分で試してみたくなりましたー。
読了日:08月16日 著者:


コロナ後の世界 (文春新書)コロナ後の世界
「トランプ大統領の再選リスク」と言ってるところで吹いた。人種差別による分断の懸念も大きいことは明らかで言及も多い。大統領選を控えたアメリカ人にはそれ以上の関心ごとはないってことか。しかし、ニューヨークを脱出して空気の綺麗になったフロリダで仕事してます!みたいな人の話だけ聞いてると、トランプ大統領が再選を果たしてビツクリしたなーもう(2回目)みたいなことになるんだろうな…。とりあえず、メインインタビューは2019年末に行われているらしいので「コロナ後の」というのは本を売るための戦略でした。
読了日:08月19日 著者:


新装版 人間の檻 獄医立花登手控え(四) (講談社文庫)新装版 人間の檻 獄医立花登手控え(四)
刃物を持った悪漢たちを美しく投げ飛ばす様子がありありと目に浮かぶ。叔母さんが(おそらくかなり甲高い声で)小言を言い、雑用を押し付ける様もすんなり想像できる。この叔母さんの娘おちえは間違いなく叔母さんそっくりのおばさんになるのに、頬を赤らめ、目を潤ませてすり寄って来れば愛おしいと思う男がいる。それもわかる。とにかく、藤沢周平の手にかかれば、あらゆるシーンがすごい臨場感で迫ってくるのです。なぜか紙本の4巻だけずっと積ん読棚に紛れてましたので読んでみたら、案の定もっと藤沢周平を読みたくなってしまってる。
読了日:08月23日 著者:藤沢 周平


失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)失敗の本質―日本軍の組織論的研究
日露戦争という成功体験への固執とその後の進化(特に通信技術)の軽視、長期的展望を欠いたままでの宣戦布告、戦果の過大報告や報告の省略、海軍と陸軍の軋轢と連携下手、それを操縦できない上層部のダメっぷり、学歴重視の人材登用と人情論上等!の人事考課、創造性を育まない押し込み教育などいろいろある中で、根本にあって最大の失敗要因は、過去の成功の過剰学習が第一次世界大戦に深く関わらなかったことにより強化されたことというこのようだ。そんな日本軍の失敗が、戦後の政府と政治に生きているような気がしないのが怖い。
読了日:08月24日 著者:戸部 良一,寺本 義也,鎌田 伸一,杉之尾 孝生,村井 友秀,野中 郁次郎


ゴーン・ガール (上) (小学館文庫)ゴーン・ガール (上)
なぜか上巻だけ積読していたので、とりあえず読み始める。エイミーが良い子すぎてひく。この親に育てられて、グレずに素直に育つはずない。アメージングでいることを強要され続ける地獄。そんな境遇に負けない強さを身につけ、自分の力で伴侶を見つけて幸せな生活を送っている…はずだった。旦那のほうは、絶対浮気してるぞコレは…と思ったら案の定だった。なんか一方的にエイミーがかわいそうな話だけど、そういうことなのか? 視点が交互に入れ替わる構成が読みとどまることを許してくれない。下巻お預けとか考えられないです笑。
読了日:08月26日 著者:ギリアン フリン


ゴーン・ガール (下) (小学館文庫)ゴーン・ガール (下)
エイミーの日記が全部ウソですって? 下巻冒頭でいきなり声が出たわぃ笑。いやー、予備知識なく読み始めたから展開についていくの必死。エイミーに良い子の要素が欠片もなかったという衝撃。しかし、ジェフとグレタに全財産もっていかれたときには一瞬同情してしまった。反省。エイミーを甘く見たツケを払うことになるデジーもかわいそうだが、エイミーから見たら敵の器じゃなかった。だってエイミーは悪魔だもの。そしてニックはろくでなしでポンコツだった。どうか全力で子どもを守ってほしい。
読了日:08月27日 著者:ギリアン フリン


新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)新装版 虚無への供物(上)
長らく積まれていたが、『ニッポンの文学』でも紹介されていたので意を決して。ミステリー好きの登場人物たちが、身内の死をネタに推理合戦するという異様な盛り上がり。戦後間もない頃にゲイの皆さんこんなにカミングアウトして楽しくやっていたとは驚き。とりあえずオマージュはほとんどわからないし笑、推理はどれもツッコミどころ満載だし、犯人はたぶん最も怪しくなく描かれている彼なのだと見当がついてしまったのだが、事実と推理がゴッチャになって、なにがなんだかよくわからんくなってきた。しかし、止まらないので下巻へ即。
読了日:08月28日 著者:中井 英夫


新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)新装版 虚無への供物(下)
犯人は予想どおりだったけど、叔父さんをそこまで憎んでいた理由はよくわからんかった笑。推理合戦は甲乙つけがたいポンコツ揃いだったことが判明して愉快。でも、関連があると思って見ればそう見えてきてしまうという人間の認知の歪みを考えさせられるオチでありました。犯人がだれかということではなく、そこが驚きの結末なんだな(たぶん)。日本三大奇書のひとつと言われているらしいけれど、奇書っぷりもわたしには読み取れませんでした。未熟者です。すみません。
読了日:08月30日 著者:中井 英夫