2020年5月の読書記録

2020年06月08日(月) 17:53

本&映画の紹介

5月の読書も平常運行でした。日本に帰ることができない日々なので、紙の積読本が増えない。これは好機だ!ってことで、紙の積読本を読破するのを今年の目標に追加します。まだ30冊くらいあるけどね……。

うしろめたさの人類学』が超絶オススメです。人間や社会についてじっくり考えたい人は読むべき一冊。わたしももう一度じっくり読みたい。小説3冊はどれもおもしろかったけれど、いちばんは『ギケイキ: 千年の流転』かな。でも、義経ファンは読まないほうが良い笑。


読んだ本の数:10
読んだページ数:3102
ナイス数:107



小説 琉球処分(下) (講談社文庫)小説 琉球処分(下)
一番の衝撃は、日本と戦うための武器を手に入れるために亀川親方率いる頑固党が百姓たちに「加勢金」を強制するくだり。それを悪政と思うことなく下々から吸い取るだけ吸い取って、日本政府が上に立とうとすることには全力で抵抗するのだからどっちもどっちか。一番のゲスはそんな展開を裏で糸引く商人なのだが、結局鉄砲手に入らなくてもめげずに脅しをかけてくるあたりに彼らの凄さを見た。琉球国が沖縄県になったことで、せめて百姓たちの暮らしぶりが良くなったのなら良いな…と思うが、そんな庶民の暮らしがあまり描かれていないのが終始残念。
読了日:05月03日 著者:大城 立裕


アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 (集英社新書)アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」
『熱源』を読んでアイヌのスイッチが入ったので、以前から気になっていたこちらを。アニメしか見ていないのでちょいちょいネタバレてくるけれど、アシリパ(リは小文字…といちいち書くの面倒だなしかし)さんの中にポーランド人の血が流れていることバラされたところで『熱源』とのリンクは間違っていなかったことを確信(だからどうした笑)。『琉球処分』を並行して読んでいたこともあり、同じ日本でもちがうことたくさんあるし、知らないことまだまだあって、スウェーデン語の勉強してる場合じゃないぞと思った(なんのこっちゃ)。
読了日:05月06日 著者:中川 裕


うしろめたさの人類学うしろめたさの人類学
先に読んだ旦那に「ものすごく考えさせられる本だ」と言われ、「どう考えさせられ、どう考えたのか?」と突っ込んで聞いたら「自分で読んで考えるべきだ」と言われ、実際に読んでみたら「たしかに考えさせられる本だった」としか言いようがなかった。日本とエチオピアを行ったり来たりする著者とともに思考が行ったり来たりしてぜんぜんまとまらないのだ。著者の言う「うしろめたさ」は認知的不協和と同義語であろうか?とにかくモヤモヤが晴れないどころかどんどん雲が厚くなっての読了。わかったつもりで終わりたくないので近々再読する。
読了日:05月09日 著者:松村圭一郎


Last Night in SwedenLast Night in Sweden
スウェーデンに暮らす人たちの生活を赤裸々に教えてくれるとても良い本だった。スポーツ系のクラブで汗をかいたり、コーラス部で歌ったりしている人が多いのは予想どおりだったけれど、人魚になりきって泳ぐスイミングクラブとか、本気ビンゴセンターとか笑える活動もあったなー。夜のシフトで働く人たちの話やその子どもたちを預かる夜の託児所/保育園の存在などもリアルに紹介されていて、スウェーデン社会についてかなり理解が進みました。これを半額で手に入れられたのはラッキーとしか言いようがない。
読了日:05月11日 著者:Petter Karlsson


服従の心理 (河出文庫)服従の心理
通称アイヒマン実験について、聞きかじりではなく一度しっかり勉強しておこうと(今さら)思っての読了。本文もさることながら、「さて、以上が通常の訳者解説である」ではじまる蛇足部分がはっきり言って最高でした。やはり山形浩生さんはスゴイ。ミルグラムという「権威」が残した実験結果を鵜呑みにすべきではないよねたしかに。「服従は信頼の裏返しである」という蛇足のまとめを読んで、奇天烈な政策を打ち出しつづける日本政府への信頼が揺らぐ今、なにげにタイムリーな読書だったと気づきました。
読了日:05月15日 著者:スタンレー ミルグラム


北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか
スウェーデンの社会の仕組みがとてもよくまとまっていて勉強になりました。1990年代初期の金融危機があったからこその今であること、そのときに整えた税制と社会保障システムに労働インセンティブを高める工夫がたくさん盛り込まれていて、それがうまく機能していること、自立意識の強い国民性と社会的連帯という一見矛盾する価値観が並存する仕組みと国民が高負担を受け入れる心理など、うなずきすぎて首おれるかと思った笑。刊行後ちょうど10年なので、その間の変化を追いたい(ので増補改訂版希望)。
読了日:05月17日 著者:翁 百合,西沢 和彦,山田 久,湯元 健治


ギケイキ: 千年の流転 (河出文庫)ギケイキ: 千年の流転
『危険な読書』からの選抜5冊目。良家に生まれたぼっちゃん達の奇天烈で壮絶な人生を、まさかこんなに面白おかしく読ませていただけるとは思っていなかった。弁慶がこんなにイッちゃってる兄さんだったとは知らなかった実は。日本史苦手というか嫌いな領域なのだ。いやしかし、歴史ざっくりしか知らなくても、現代に蘇った義経がかなりわかりやすく解説してくれるし、義経のアホに聞こえるけど頭は悪くなさそうな物言いが要所要所で突き刺さってくる。そしてまさかの頼朝兄さんと合流直前で終わりってどういうこっちゃねん怒。
読了日:05月18日 著者:町田 康


Dom som kallas vuxnaDom som kallas vuxna
大人の様子をじっくり観察している子ども達が抱く疑問の数々に対して、大人たちがこっそり本音をぼやいて教えてくれるという魅力的な絵本。スウェーデン語の勉強になるうえ、スウェーデン人の心の中を垣間見られるというすばらしい参考書でした。大人はどうしていつも急いでいるの? 誕生日のプレゼントに大人はどうしてつまらないものばかり選ぶの? 大人はどうして歩きたがるの? 大人はなぜコーヒーが大好きなの? 大人はどうして暗闇がこわくないの? などなど、答えが気になる疑問の連続でした。
読了日:05月22日 著者:Annica Hedin, Hanna Klinthage


カエルを食べてしまえ!カエルを食べてしまえ!
ジャケ買い笑。嫌な仕事を「カエルを食べること」になぞらえて、考えずにとっとと済ませてしまえば後が楽になるし、効率も上がるよと。いろんなところで言われている自己啓発をざっくり簡潔にまとめた一冊です。わかっとるがな……ってことしか書いてないけど笑。「カエル」はマーク・トウェインの言葉がきっかけだと冒頭に書いてあるが、読んでる途中で何度も「なんでカエルなんだっけ?」となったから、やっぱりこのメタファはすこし無理があるのではないかと……。カエルを食べるという食習慣との距離によって受け止め方が変わってくるね。
読了日:05月23日 著者:ブライアン トレーシー


山猫の夏 (小学館文庫)山猫の夏
ほぼ日の学校長が某所でオススメしてくれた長編小説。内緒だけどあまり魅力を感じていなかったし、読みはじめてからも加速つくまで時間がかかったけれど、駆け落ちしてまで愛を貫こうと行動力を見せていたいいとこのボンボンがあっさりゲスに転じて生首になり、じいちゃん出てきたあたりからが本番。ロミジュリの前フリが長かった。でも「おれ」が山猫の右腕として成長するために必要だったんだなきっと。クライマックス間近の658ページにあるタイポが余計な笑いを誘ってしまったのが残念でしたー。
読了日:05月28日 著者:船戸 与一