2019年6月の読書記録
2019年07月15日(月) 17:46
本&映画の紹介6月上旬のストックホルム電車旅の道中でかなり読めてしまって、後半失速。『ありのままのアンデルセン: ヨーロッパ独り旅を追う』のボリュームが主な原因かな。そして今週オーデンセへ行こうと思っていたけど、書くほうの進捗がいまいちなので行くの延期しました。
それにしても月村良衛さんの『影の中の影』が強烈に面白かったので、『私のイサベル』がかすれてしまったのはある意味残念。英語本とスウェーデン語本を1冊ずつのノルマも順調に達成しております。『やかまし村の春・夏・秋・冬』につきましては、DVDも借りてきて見ちゃいました。スウェーデン語字幕のみだったけど。ほのぼのしてて良かったわー。さすがに今の子ども達はちょっと違うんだろうけど。
読んだ本の数:11
読んだページ数:2892
ナイス数:55
私のイサベル (ハヤカワ・ミステリ)
ストックホルム旅のお供。スウェーデン人の新人作家が編み出す物語だというから、スウェーデン人の生活や考え方を知る参考になるかな……と思ったら、サイコパス殺人鬼と病んでる心理カウンセラーによるバトルであんまり参考にならなかった笑。イサベルがステラのカウンセリングに行く偶然とか、イサベルが瓜二つらしき叔母さんが一度も登場しないこととか、最後ステラの病状をゲロってしまう看護師の存在とか、いろいろ無理ゲーなんだけど、サイコママがどんどんイカレていくので、読むほうも加速しました。ナイス娯楽小説。
読了日:06月01日 著者:エリーサベト・ノウレベック
観光亡国論 (中公新書ラクレ)
“アルベルゴ・ディフーゾ”とか、“ユネスコサイド”とか、いろいろ勉強になりました。全体的には、ちょっと言葉を選びすぎている感が否めない。提案内容に深みや捻りがなくて納得はできるけど行政や企業を動かすだけの蘊蓄には聞こえなかったり、海外の参考事例も環境や文脈がちがいすぎていまいち参考にしにくかったり、と、ツッコミどころが多いのだけど、祖谷での取り組みでたしかに結果を出している人だからちょっともったいない。遠慮せずにもっと切り込んで欲しかったです。
読了日:06月03日 著者:アレックス・カー, 清野 由美
影の中の影 (新潮文庫)
月村良衛さん祭りまだまだ続いております。『土獏の花』につづき、異国の問題に日本人が巻き込まれちゃって大変な話。ロシアの武術システマを操って敵を美しく打ちのめしていくカーガーの姿を想像しながら読みました。テツの正体が明かされた瞬間がわたし的にはクライマックス笑。この物語を読むかぎりは、警察よりもヤクザのほうが人間できてますね。CIAもKGBも中国のなんちゃらも、いろいろ出てきて盛りだくさんでした。おもしろかった。
読了日:06月06日 著者:月村 了衛
The Canterville Ghost and Other Stories
アイルランドが誇る作家 Oscar Wilde(オスカー・ワイルド)が子ども達に向けて著した童話の中でも人気の高い物語7編を収録した一冊。ダブリンで見たイケメン貴公子風のオスカー・ワイルド像が、チャラ男風情なのに才能あふれているところも含めて以前お世話になった先生にそっくりで笑、しかも、描かれているたくさんの優しさが不似合いな感じがして実はなかなか入ってこなかった。お気に入りは「The Young King」と「The Selfish Giant」です。そうかあの子はキリストだったのかー。
読了日:06月08日 著者:Oscar Wilde
トリーズ(TRIZ)の発明原理40 あらゆる問題解決に使える[科学的]思考支援ツール
発明するつもりは欠片もありませんし、なんでこの本が我が家にあるのかもわかりませんが笑、問題を明らかにして、矛盾を捉え、それをどんなバランスでどんな角度から解決するかを考えるときの基本を教えてくれる良書でした。エンジニアとかデザイナーとかいう肩書で働く人には少なからず参考になるだろうし、リサーチャーにとっても、現象の見方、捉え方を深めたり広げたりするのに使えそうだし、改善案の幅を広げる参考にもなりそう。結局のところ、わたし達は「観察」し続けなければならないということも再確認させてもらいました。
読了日:06月11日 著者:高木芳徳
異文化理解の問題地図 ~「で、どこから変える?」グローバル化できない職場のマネジメント
外国人材を部下に持ったときの苦労の数々とその回避方法が紹介されています。いかにもありそう……と思って読んだけれど、実際には新入社員の扱いにも通じる部分が多そうです。後輩とか新人とかの面倒を見るのが面倒で会社員を辞めた口なので、自分の選んだ道は間違っていなかったと思えました笑。外国人材を部下ではなく、上司として持った場合はどうなんでしょうね? 素直に非を認めたら評価が下がるのではなかろうか? 日本企業か外資系企業かによってもそのあたりは違ってきそう。というところまで突っ込んでまとめてほしかったかも。
読了日:06月12日 著者:千葉 祐大
作家と一日 (集英社文庫)
“考えてみれば、生まれてこのかたペットを飼ったことがなかった”と言いつつ、一時的に猿と同居していたことがあるというふつうはない体験からの出だしがパンチ効きすぎ笑。旅先のホテルへのこだわりをはじめ、共感できる内容が多く、それにしても旅の話が多いな~、楽しいな~と思ってスイスイ読んだらANAの機内誌で連載していたものをまとめたものでしたとさ。ポルトガルで警察に連行される羽目になるとかあり得なーい。わたしの旅がいつもとても平和である(がゆえにもしかしたら面白みに欠けている)ことを実感させてもらいました。
読了日:06月15日 著者:吉田 修一
やかまし村の春・夏・秋・冬 (リンドグレーン作品集 (5))
Lund市立図書館にて発見し、居合わせた友人に激しく勧められて借りてきての読了。クリスマスにはジンジャーブレッドを焼き、雪が積もれば橇遊びをして、エイプリルフールにはウソをつきあって楽しむというのはおそらく今も健在。大晦日、溶かした鉛が固まる形を見て翌年を占ったり、復活祭には「水曜日のはり札」をつくってはしゃいだりっていうのはどうなんだろ?今もするのかな? 田舎暮らしの子ども達が素朴な暮らしの中でなにをどんな風に学んでいくのかを教えてくれる優しく、ときに愉快な物語でした。
読了日:06月19日 著者:リンドグレーン
Sagan om det röda äpplet
Google翻訳先生の力を借りての読了。とても愉快な物語でした。イラストの端っこにコソッと描かれていることが次の展開に絶妙につながっていて、ふつうに楽しく読みました。スウェーデンの人たちはリンゴが大好きなんですよねー。私有地でなってるリンゴも取って食べて良いのかな? 自然享受権が認める範囲はどこまでなんだろ? 果物屋さんちの木という設定だったのがまた悩ませる笑。法律的には銀行強盗のおじさん以外はだれも悪くないって話になるのか? リンゴひとつで点数を上げてもらおうとした少年の性根は悪いけど笑。
読了日:06月24日 著者:Jan Lööf
ありのままのアンデルセン: ヨーロッパ独り旅を追う
アンデルセンの故郷オーデンセへぶらりと行ってみる前の予習ってことで童話と並行してコレを読んでみたら、童話の見方が変わった。悪い方へ。残酷でありつつも美しく、読者を虜にする物語たちが、こんな変人の手によって紡がれたものだったとは……。勇気がないようで、ある。独りでいることを求めつつ、社交も捨てられないさみしがり屋。名声欲を満たすことへの執心。親と生まれと自らの外見に起因する特大のコンプレックス。そして、そんなアンデルセンが歩いた道を辿ってやっぱり毒づくイギリス人。総論としては、とても面白かったです笑。
読了日:06月27日 著者:マイケル ブース
書店の棚 本の気配
東京堂書店の店長まで務めた人の頭の中は、単なる本好きのそれとはかくもちがうものなのか……。「その本の存在が素直に自分の意識を呼び覚ましてくれる」から、その声に従って書棚を構成する……らしい。力強くこう言い切っていただくことで、ネット書店ではなく本屋に行って買う意義や価値が明確になって単なる本好きとして素直にうれしい。とりあえず、出てくる本のタイトルやそれを探しに来る常連さんのお名前がふつうじゃないので恐れおののく笑。バッハがお好きだそうで、それがとてもお似合いだと思った。
読了日:06月29日 著者:佐野 衛