UXPA2017レビュー

2017年06月14日(水) 17:18

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UXPA2017 REVIEW
I learned a lot from the "New Mobile App Heuristics" by Jonathan Haber, which would be a good reference to evaluate smartphone apps, and I'm curious to know if all the heuristics would apply to the Japanese mobile users. The remote testing sounded one of the hot topics, which could be a good sign of increased needs of qualitative research in the context of use more than before. The discussion between the presenter and the audience held in the session about "Evaluating Complex Systems" was full of learning opportunities. So, now, I find I tended to attend the sessions about usability though there were various other topics. Probably because I'm lately often contacted by marketing research agencies in terms of usability evaluation project. That could a current trend in Japan, maybe?

アプリにいちゃもん付けるんじゃなくて、どんな発表があったのかを書いてくれよ~、と思われている方が多いことでしょう。満を持して(少し)書きます。

今回聞いてきた発表の中で速攻参考になりそうだったのは、カナダはカルガリーに拠点を置くスマホアプリ開発会社 Robots and Pencils のJonathan Haber氏による『New Mobile App Heuristics: guidelines to quickly boost the user satisfaction of your app by 50%』です。Jakob Nielsen氏が1995年に発表した10個のヒューリスティクスは、リアルに評価の現場で使われることは少ないにしても、ユーザビリティガイドラインとしては普遍的なものを網羅していて専門家としては頭に入れておいて間違いのないものです。が、時代は移り変わり、テクノロジーは進化を続け、わたし達が日々利用するスマホアプリの場合も同じヒューリスティクスで事足りるのか?と、言われてみれば確かにそろそろ見直しがあっても良いですね。ってことで、スマホアプリのユーザビリティ評価ガイドラインとして、新しく12個のヒューリスティクスを紹介してくれたのがこちらの発表でした。親指の太さや指の長さを考慮しようという、極めてわかりやすくモバイルっぽいヒューリスティクから始まって、ゴール達成までの画面数は少なくしようとか、選択肢を少なくしたり、デフォルトを賢く設定したりして認知負荷を下げてあげようとか(これはスマホアプリじゃなくても当てはまるけどね)、熟達度に合わせて違う使い方をできるようにしてあげよう、外で使うことも考慮したコントラスト設定をしよう、見るだけのときと何かアクションを起こそうとするときの切り替えをしやすいように出入り口を明確にしよう、などなどざっと適当に訳しましたけれど、いずれも頷けるもので、かつ評価をするときに頭の片隅に置いておけるように簡潔にまとまっています。ワーディングも含めてまだ検討の余地があると思っているらしく、今後も変わっていくだろうし、社会や技術の変化に伴って変わっていくべきだと考えているそうで、その真摯な態度も高評価を後押しします。

そういえば、リモートテストに関する発表や専用ツールの紹介も多かった印象があります。ラボで実施する伝統的なユーザビリティテストやデプスインタビューにとどまらず、リモートテストでリクルーティングの難点を乗り越えたり、フィールドに出て、利用文脈の中でより質の高いリサーチを実施したいと考えるリサーチャーが増えているということですかね。確かに日本でも、ニーズが増えている感じあります。ブーム再来か。IBMの皆さんによる『360° Review of Remote UX』では、使えるツールを一挙に共有してくれてました(写真[2])。太っ腹。それをここで共有しちゃう私も太っ腹。とりあえず、Muralというのを使ってEmpathy Mapを作ったり、BOXを使ってノート共有したりとかしてみたい。そんなの使わせてくれそうな仕事、カモン。

労働統計局にお務めの二人が発表してくれた『Evaluating Complex Systems: Strategies for Testing Systems You Don’t Understand』も個人的にはとても参考になりました。自分がユーザーには絶対になり得ないような特定の職業人に向けたシステムのユーザビリティテストやユーザー調査の依頼が最近おおいので。発表者も同業者からヒントをもらいたかったらしく、セクションごとに会場からTipsを募るという発表スタイルで、その会場にいる先輩というか、重鎮たちから出てくる手法やTipsがとても良いものが多かった。さすが年の功。被験者に回顧インタビューならぬ回顧思考発話をしてもらうと良いとか、被験者2名にコラボラティブにタスクをしてもらうと思考発話が出やすいとか、一番感心したのは、タスクの正解フローがはっきりしないときにはコールセンターに電話して聞くと良いってやつ! 確かに誰よりも親切にわかりやすく教えてくれそうだ(笑)。あと、パイロットセッションはなんとなく一回だけって思い込みがあるけれど、小難しいシステムを評価するときは、二回か三回か想定しておくべきだと。確かにそれなら安心感も高まります。最後に『ウェブユーザビリティの法則』の著者としてお馴染みSteve Krug氏が「そこまで苦労してもプロのユーザビリティ屋が理解できない部分はユーザビリティに問題ありってことだと勇気を出して指摘せよ!」と仰ったのがとても力強かった。

[1] 今回一押しの発表! [2] リモート調査に使えるツール [3] 会場から意見を募ります!

他にも細々と学びがあったけれど、こうやって振り返ってみると、ユーザビリティ評価の話ばっかりだな(笑)。もっと上流のユーザーリサーチやエスノ、アジャイルどうのとか、スプリントがどうしたとかいう話ももちろんありました。ユーザビリティばっかじゃないってところは強調しておこう。でも最近の自分の仕事を振り返ってみても、このところユーザビリティテストの仕事がまた増えてきているのは確かです。UXブームに乗っかって、マーケの会社とかがUXできます!ユーザビリティ評価します!って言っちゃって、困って、私のところに流れてきてるよーな気がしている今日この頃。

さて、来年のプエルトリコ開催に向けて、浮かれポンチ(昭和と言われたけどめげない…笑)は発表という大義名分を手に入れなければ…とぼんやり企んでいるのであった。