入り口の草履

2017年05月10日(水) 11:01

UXいろいろ, 日本発信四方山話, 岐阜, サインやUIの話, リサーチャーの知恵袋
SANDALS AT THE ENTRANCE
The inn I stayed offered 3 open-air bath to be used all to oneself. No reservation was needed. When you find a vacancy, you are welcome to take it. There were 2 pairs of Japanese sandals at the entrance, and I thought 1 out of 3 bathes was used by someone elses, though all the 3 bathes were available. The sandals were actually there to convey another message. The message was this was where you should take your sandals off. For foreign guests, the sandals could have been a great signifier, but I got a wrong message. If the message board was located on the sandals, do you think the message would become clearer for both?

奥飛騨にある福地温泉にて一泊しました。年度末の疲れを癒すにはやはり温泉しかない!ということで。作戦見事に成功しまして、渓流沿いにある露天風呂を一人占めというご褒美にありつきました。気持ち良すぎてなかなか出られなかったです。

[1] 渓流沿いの露天風呂へ [2] 作戦成功で独り占めです [3] 翌朝もう一つも独り占め

その渓流沿いの露天風呂とは別に、お宿には貸切風呂が3つありました。いずれも内風呂と露天風呂のセットで、それぞれかなりの広さでした。予約制ではなくて、行って、空室なら入ってよし!という仕組みです。建物の入り口で草履を脱ぎます。普通です。最初に行ったとき、入り口には脱いだ草履が数組、たしか5組並んでいました。2組と3組という感じでまとまりになっていたと思います。そのときはどうとも思わなかったので写真なし。こう考えました。

「これはつまり貸切風呂2つが利用中ってことで、きっと1つは空いてる!入れる!」

で、たしかに空いているところがあったので迷わず利用したわけですが、空室は実は2つだったっぽい。あんなにたくさん脱いだ草履が並んでいたのに、なぜでしょう…。

[4] 貸切風呂の露天はこんな [5] 入り口に草履2組ありました [6] メインの入り口は靴脱がない

気付いたのは翌朝です。もう一度、一人で広~いお風呂を満喫してやろうと建物へ行きましたところ、またしても草履が2組ありました(写真[5])。5時起きで来たというのに先を越されたとは悔しい…。と思ったけれど、空きがあって良かったと思いなおしてお風呂へ向かう。と、3つの貸切風呂がぜんぶ空室でした…。そして確かに人の気配もない。ここまで来てやっとの閃き! 外に並んでいた2組の草履は“ここで草履を脱いでくださいね”を外国人のお客様に伝えるための例というか、印(専門用語でいうならアフォーダンス改めシグニファイア)だったのです!

この旅館の建物は全般的に古民家風になってまして、メインの入り口は、靴を履いたまま敷居をまたいで入る感じでした(写真[6])。貸切風呂のある建物への入り口は段差がなくて、たしかに外国人には“ここで草履を脱ぐべし”というのは伝わりにくいかもしれません。“お履物はこちらでお脱ぎ下さい”と、英語も添えて書いた案内を置いてはいたし、マットも敷いて、ここで脱ぐんですよアピールもしてありましたけど(写真[5])、確かに、1組、2組、脱いだ草履を置いておくのが、一番伝わりやすそうですね。でも、そのシグニファイアを必要としない日本人の私には“先客あり”という誤ったメッセージが届いてしまったというわけです。“お履物はこちらでお脱ぎ下さい”の案内が草履の上に載っていたら、メッセージを適切に読み取れたかも…。そうしたら、外国人の方に伝えたいメッセージが弱まってしまうでしょうか? これはなかなか深イイ問題です。