その文脈で“誘導”?

2015年08月18日(火) 18:16

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SHOULD BE CAREFUL WITH USING TERM “LEAD”: User researchers are not supposed to lead or guide conclusions. We are trying really hard to learn what users think and believe, and never lead or guide the conversation. Some project mangers with whom I happened to work lately, however, used the term “lead” to explain the tasks for a usability testing, or how great the moderator was to “lead” the conversation to fill all the questions in the scheduled session time. Those who are to manage a user-centered design project should learn the basics at least.

ユーザーインタビューの教科書』刊行に合わせて、今年は、インタビューやらユーザーテストやらを勉強したくてうずうずしている方々のお勉強にお付き合いするイベント(セミナーとか、勉強会とか、いろんな呼ばれ方がありました)にてお話する機会を何度となくいただいてきました。そこで必ずと言っていいほど質問にあがる“誘導にならない聞き方”について。今日はそれについての解説を…ではなく(すみません、この解説はとりあえずパス)、驚きの文脈で“誘導”という言葉に出くわしたときの私の悲しみを書きます。

クライアントの口から“誘導”なる言葉が出るのは聞きたくないですよね。「あの聞き方は誘導になっちゃってましたよね?」「この応えは誘導の結果だから外して考えたほうがよくないですか?」…インタビューやユーザビリティテストを終えて、観察室にいらしたクライアントからこんな言葉をかけられたら凹みます。プロとして、してはならない聞き方をしたという事実を真摯に受けとめ、同じ失敗を繰り返さないように精進するしかありません。でも、この文脈の“誘導”は、耳に痛いとは言え、納得のいく使われ方です。

しかし先日、違う文脈で“誘導”という言葉が出てきました。まず一回目は、人間中心設計とかユーザビリティテストとかをきちんと学ぶ努力を怠ったまま、とあるユーザビリティ評価案件のプロジェクトマネージャをなぜか担っちゃっているA氏がクライアントに“タスク”を説明するときでした。「僕、先日はじめてユーザビリティテストを観たんですが、一つずつ誘導しながら進めていくものなんですね」とか言っちゃって、横に居た私の目は点(笑)。A氏としては、操作の流れを細かく分けて、ユーザーにはそれを順番に実施してもらって…というタスクの在り方を伝えようとしたわけですが、それを“誘導”と言うのか…と。言うまでもありませんが、割って入ってタスクの意図や設計指針について簡単に解説しまして事なきを得ました。ビックリしたな~もう。

そして次はグループインタビューの会場にて。60代男性3人のグループインタビューとかって、それはもう終わったときの疲労感は半端ありません。それでも予定どおりの90分ほぼジャストでインタビューを終えて、しばしの休息をとっている私のところへいらしたのは、クライアントのB氏。ユーザーインタビューをはじめて観察したそうです。ユーザーさんの口から次々に出てくる発言に、喜んだり冷や冷やしたり、90分間それはもうとても勉強になったと感激しておられて、そんな感想を聞かせてもらえるのは私としては本当に嬉しくて、疲労感も吹っ飛ぶぞ!と思っていた矢先、「90分にあれだけの話が収まるなんてさすがですね。巧みに誘導されるものですね」というお褒めの言葉をいただきまして、嬉しいんだけど固まりました(笑)。“誘導”の部分を“司会”とか“進行”とかいう表現に改めるべきだという話をしなければ…と疲れた頭の中で考えていたら、すんでの差でプロマネC氏が先に口を開き、「誘導に関してはプロですから、そこは」と得意げに言いましたとさ。え~、私って誘導のプロなんですか?マジですか? 

というわけで結論。プロマネの無知が一番ヤバイ。

お心当たりの方は、産業技術大学院大学の履修証明プログラム『人間中心デザイン』あたりを受講しましょう。昨日から願書受付中です。