神流では“民泊”を

2013年11月13日(水) 18:34

UXいろいろ, 日本発信四方山話, カエルあれこれ, 群馬, モノ+コトの話

HOMESTAY AT KANNA: Kanna is such a small town with a population of 2,300 people and only 7 accommodation facilities. Where would over 800 runners and their families stay overnight? They stay with a local family! Thanks to the family’s hospitality, the runners turn out to start the day with a hangover, but they know each other by the morning. The host families are able to cheer not only the general runners, but also the runners who drank together on the evening before among some other unidentified runners. Runners are also able to enjoy looking for their host among the audiences. I think this is a great design to solve a big issue regarding the accommodation, and build a bond between hosts and visitors at the same time.

神流町の人口は約2,300人です。草津や伊香保のような古くから親しまれている温泉街があるわけではなく、富岡製糸場のように世界遺産登録を目指すに値する歴史的、文化的遺産を有するわけでもなく、よって普通なら通りがかって終わり…となっておかしくない田舎町です。ゴメンなさいね、地元の皆さん。でもそれが神流を初めて訪れた東京モンの素直な感想です。

でもって、町のオフィシャルサイトで紹介されている宿泊施設はなんと7軒しかありません。そんな町にいきなり800人を超えるランナー(+応援の家族)が訪れるのですから、それはもう全員のためにいかにして“寝る場所”を確保するか…が最大級の問題です。そしてこの問題は町の方々のボランティアにより解決される仕組みとなっていました。宿泊施設に収まりきらない人たちは、町に住む皆さんのお宅にお邪魔して、一晩寝かせていただくんです。その名も“民泊”。わたし、こう見えて人見知りだし、無駄に気ぃ遣いだし、初対面の他人様のお宅で寝泊まりするなんて普通に考えたらあり得ないのですが、そこは“エクスペリエンス”という言葉のマジックにより、思わず申し込んでしまったのですよ、民泊を。

しかし結果としましては、とても楽しい一夜でございました。見ず知らずの連中を一晩お泊めしまっせ!と名乗りをあげてくださるご家族ですから、こっちの社交性なんてなくても大丈夫。幸いなことに、同宿となった茨城からお越しの3人組の社交性が半端なく高かったこともあって、わたし達は出されたモノを食べ、「できれば日本酒じゃなくてビールを…」と図々しくリクエストしたモノを飲み、ちょいちょい出てくるボケに鋭くツッコミを入れ(これは得意)、そうこうしてる間に時は経ち、もう寝ないとヤバイって!というくらい遅くまで(0時近かったと思う…)飲み食いしてたら、ランナーは二日酔いにもなるっつーの。やはり、奥様に笑顔でビール缶を差し出されたら断れないっ。コレ、民泊の落とし穴でした。でも、絶対に起こしてくれるだろうという安心感はあった。「頑張ってね!」と持たせてくれた飲み物やスナック(写真[1])にもジーンときました。走らない私の分までご用意いただいて恐縮です。玄関にはカエルの置物(写真[2])があったりしてやたらと親近感わきました。家の前の道路の向こうには、神流川が流れていて(写真[3])、せせらぎが耳に心地いい、素敵な場所と素敵なご家族に本当にお世話になりました。寝ぼけた旦那が障子を蹴破ったりしなくてマジ良かった。

 

[1] お土産を持たせてくれました [2] 玄関のカエルに親近感 [3] 朝靄のなかの神流川

ちなみに、民泊のもう一つ優れたところは、互いを特定できるようになるところだ思います。酒を酌み交わし、互いのことを話し、遠慮し合いながらのほんの数時間とは言え、同じ時を過ごすことで、ランナーは沿道で応援してくれるご主人や奥様を探して「行ってきます!」と手を振りたいと思うのだろうし、ご主人や奥様も「気をつけてね」とか「頑張れー!」と、不特定多数のランナーにエールを贈るだけではなく、“うちに泊まった子たち”を見つけて、やっぱり応援したくなる。トレランは山道を走って登って降りてくるレースだから、ロードのレースに比べると途中の応援が少なくならざるを得ません。山奥の縁もゆかりもない土地でのレースだから、応援にきてくれる家族だって普通はあまりいないでしょう(わざわざ応援に行った私はエライのだ)。だからこそ、民泊でお世話になったご家族の笑顔と応援は貴重なものに違いありません。来年いかれる方、ぜひ民泊を申し込んでみてください。