読んでもらえない張り紙

2011年05月12日(木) 17:00

UXいろいろ, 日本発信四方山話, 富山, サインやUIの話, ヒトについて

写真を見て、すんなり読める人は少ないのではないかと思います。

 


屋  



とか、





って何?ってまず思いますよね?

書いた人は、左から右へと読んでもらえると考えたでしょうが、余計な均等割り付けをしたうえに、助詞や句読点を省いたおかげで、意図とは違う“まとまり”として読み手の目に情報が飛び込んでしまいます。

認知心理学の用語で“チャンク(chunk)”というのがあります。ぱっと見たときに意味的な塊を感じさせる単位のことです。例としてよく挙げられるのは電話番号。10桁の数字をただ「0311115285」と並べるよりも、間にハイフンをいれて「03-1111-5285」としたほうが(番号適当です。かけないでください)、出だしの2桁は市外局番、次の4桁は市内局番…という具合に意味的・視覚的に塊を認識しやすくなり、覚えるのも簡単になります。よくできた情報デザインは、そういうところにまで気を配って、人間が楽に情報を読み取ったり、記憶したりできるようにしているものなのです。

で、写真の張り紙は、チャンクの使い方を間違っているというか、チャンクを意識していないというか、とにかく余計なチャンクが意図せず出来あがってしまっているために、かくも読みにくくなってしまっているというわけです。ちょっとした張り紙を作るときにも、ちょっとした意識の違いで読んでもらえる張り紙と素通りされる張り紙が出来あがるってことを表す好例でした。ちなみに場所は、富山の旅行中、大観峰の屋上展望台へ向かう狭〜い階段です。

★—–認知心理学をきっちりお勉強された古田@道具眼さんから(わたしがきっちり勉強していないことが明るみになったな、コレで…泣笑)ご指摘をいただきました。認知心理学で言うところの“チャンク”は記憶研究を発端にしていて、上の例に挙げた電話番号のように、まとまりを意識させることで記憶負荷を下げ、保持を助ける役割を担うものです。なので、元々の意味でいうチャンクは今回の事例にはあてはまらないかもしれません。今回の例は、単に情報を知覚する際の話で、記憶は関係ないからです(注意の張り紙をいつまでも記憶しておく必要はありません、からね)。
ということで、専門家からすると少し?な記事になってしまっているかもしれませんが、情報を伝えやすくするには、「意味のまとまり」を意識して、見えるようにすることが大切ですよっていう、一般論として受け止めていただければイイと思うので、勇気を出して本記事保存します。