豆炭あんかでポッカポカ
2011年05月09日(月) 12:00
日本発信四方山話, 富山五箇山でお世話になった合掌造りの民宿庄七は、築210年の由緒ある建物ですが、トイレや洗面所、お風呂などは改装済みで快適でした。ここなら外国人にもオススメしやすいです。庄七の場合は、合掌造りの家屋の他に別棟を2軒もっていて(さすが本家!)、町の道路整備の際に運良く移築(のついでの改装)を実現できたのだそうです。本来なら、お国の許可をいただかなければならなくて、大概許可はおりなくて、っていう残念な状況になるようですが、お話を聞いてみると、ラッキーだったってことみたい。
2階を見学させてもらったのですが、な〜んにもないがらんどうでした。畳が何枚か並んでいるくらい。「新しくお部屋でも作る予定ですか?」と聞いたら、「いんや〜、あった部屋を全部とっぱらってしまったんよぉ(方言適当。こんな雰囲気と思って読んでください)」とのお答え。2階に畳敷きの大広間があって、以前はよく学生の団体が来て泊まったりしていたけれど、何せ70代半ばのおばあちゃんと若旦那の二人で切り盛りしている宿なので面倒見切れない。でも部屋があることを知ってる学生さんらから問合せがあるとおばあちゃんがどうにも断れなくて、見かねた若旦那が「部屋があるからイカン」と言って、部屋をなくしてしまったのだって…。すごい英断です。カッコイイ。
ということで今は、1階にある客室のみを使った営業で、1泊10名以下または2組限定の宿としてこぢんまりやっています。そのこぢんまりが、わたし達にはとても良かった。あまり社交性がないのでね…、縁あって同宿することになった初対面のご家族と囲炉裏を囲んで賑やかに過ごすの実は苦手なのです。宿の女将や若旦那がしゃべくりな人で、夜遅くまで昔話とか聞かされたらどうしよーとかも心配していたけれど、庄七のお二人はそんな感じでもなくて、それでいて、質問にはすごく丁寧に分かりやすく答えてくれて、とても居心地の良い宿でした。逆に言うと、聞かなきゃ何も教えてくれないってことでもあるので、合掌造りの説明を聞かずとも聞かされたり、こきりこ節のライブにつきあわされたり、そんなもっとこってりした一夜をお望みのお客さんは他の宿に行かれると良いでしょう。
あと、5月にしてめちゃくちゃ寒かったので、寒い宿は耐えられないって人には、庄七はおろか合掌造りの民宿は不適です(笑)。2階にあがって造りをよくよく見てみると分かりますが、普通に隙間だらけの建物ですから。囲炉裏はあるし、寝室にはストーブも用意してくれていますし、庄七の場合はトイレの便座も暖かいですが、やっぱり明け方に布団から出てトイレへ向かうのには勇気がいります。
でも、お布団の中にはおばあちゃんが用意してくれた豆炭あんかが入っていて極楽でしたぁ。握り拳ほどの大きさの豆炭を専用の容器に入れ(写真[1])、フタをして(写真[2])、おばあちゃんお手製の巾着袋に入れて出来あがり(写真[3])。これ、なんと24時間も保温が続くそうな。火傷をしないようにと巾着袋は幾重にもなっていたけれど、裸足で触れると熱いっ。何も考えずに足をべったりのせて寝たら、低温火傷一直線です。しかしお陰さまで、火傷もなく、風邪を引くこともなく、まったりと合掌造りの宿で1泊すごせました。泊まらずとも合掌造りの内部を見学する術はありますが、泊まってみればより一層の体験ができるから、せっかく行くなら泊まってみることをオススメします。