嘘で台無しの注意書き
2011年01月20日(木) 21:52
UXいろいろ, アジアのそこここ, サインやUIの話, モノ+コトの話, 中国写真[1]は上海で宿泊している巴黎春天大酒店(New World Mayfair Hotel)というホテルのバスルームです。欧米流のホテルに慣れている人には、普通のバスルームですね。
朝、シャワーを浴びているときに眼前の壁に写真[2]のような注意書きがあることに気付きました。日本人の滞在客も多いようで、英語、中国語、日本語の三ヶ国語で、バスタブの外にお湯を流さないようにという注意書きが記されています。
日本語の部分を読んで分かるとおり、理由は、バスタブの外に排水口がないからです。排水できないと困ったことになりますから、ホテルのためにも、自分自身のためにも、言われるとおりバスタブの外にお湯を溢れさせるような事態は避けたほうが良いですね。
中国語は読めませんが、文章量と文章の途中にある排水口という文字から想像する限り、日本語と同様に、理由まで添えてバスタブの外にお湯を溢れさせないようにとのお願いが記されているようです。
英語はただ、「Please do not let the bath-tub overflow.」となっていて、日本語や中国語のように理由が添えられていません。欧米人には言わなくても分かるということでしょうか? 逆に、中国や日本のお客さんにはその理由が分からないだろうから、きちんと理由まで添えて、納得したうえで、バスルームを正しく、快適に使ってもらおうと考えた結果の注意書きなのかもしれません。とするととてもよく配慮された記述です。単なる翻訳とは違う!
マニュアルのユーザビリティテストなんかをするとよく、「使い方や注意をただ書くのではなくて、どうしてそういう使い方が推奨されるのか、なぜそこに注意しなければならないのかまで書いてくれると納得したうえで使えるので嬉しい」という意見をよく聞きます。今回の例と同じ話ですよね。理由って大事なのです。そういうところまでこのホテルは考えてくれていているのかな〜と少し感心しながらシャワーを浴び終えて、バスタブの外に出ようとしたその時!!!バスタブの外に排水口を発見しました(写真[3])。ウソぉ〜〜〜〜(笑)。
ホテルの人から見たら、バスタブから溢れたお湯をしっかり排出できるほどの排水口ではないのかもしれませんが、客の目線で見たら明らかに排水口です。嘘(あるいは嘘と誤解されるような記述)は絶対によくありません。ユーザーに正しい(サービスや製品を提供する側から見たときの“正しい”)使い方をしてもらいたいのだったら、絶対に嘘の理由を添えるべきではない、と思いませんか?