水はどこからどう出るの?

2010年09月09日(木) 17:47

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EPICのワークショップで知り合ったイギリス人エスノグラファーが、ガラディナーの途中でどうしても聞きたいことがあるんだけど…とカメラを片手にやってきました。見せられた写真は案の定、はじめて日本に来た外国人が必ず食いつくトイレのアレです(写真[1])。

 

[1] 日本ではお馴染みの… [2] P社製のおしり洗浄ボタン [3] TOTOのおしり洗浄ボタン

イギリス人曰く…、どういうことに使うための製品なのかは人に聞いてもう分かっている、と。このおしりマークのボタンが身体のあの部分を洗うためのボタンだということも分かっている、と。どういう状況でこのボタンを押せばイイのかも大丈夫。知っている、と。

何が分からないんだ?と思って話を聞くと、便座に腰掛けて、用を済ませ、いざこのおしりマークボタン(写真[2])を押したら、どこからどんな感じで水が出てくるのか想像できないから怖くて試すことができない!というのが彼女の主張でした。なるほど。確かに、ノズルはボタンを押して初めてニョキニョキ出てくるので、まったく初めて使う場合にはどこから水が出てくるのか分からないですよね。このアイコンだと、便座の下のあっちこっちからシュワワワワワ〜っと、すんごい勢いで出てくると誤解してもおかしくありません(さすがにそれはないか?!)。英語で状況を説明するのは無理な感じだったので、現場検証です。彼女をトイレへ連行し、便座を手で押さえて(便座が重みを感知しないと動かないからです)、水が飛び出すあたりに手の平をかざして、いざおしり洗浄ボタンをプッシュ!

わたしの手の平一枚では勢いよく噴射される水を除けきれず、わたし達は比較的水浸しになったのでした(笑)。

ユーザーの知識レベルや文化的背景に応じて、インターフェイスのデザインも悩みどころが違うっていう、すごく基本的な話を再確認させていただきました。“便座が重みを感知しないと動かない”という知識がなければ、動作確認をすることすらできないわけで、外国人に最初の一歩を踏み出してもらえるようにインターフェイスをデザインするのはきっとすごく難しいことに違いありません。一方、日本人ユーザにとっては既にたくさんのことが当たり前になってしまっている分、操作部分のデザインからは抜け落ちている情報が、言い換えると、落としても問題にならない情報がたくさんあるということでもあります。

ちなみに以前、アメリカのGoogle本社で見かけたTOTO製英語版ウォシュレットの操作ボタンには、着席する人のアイコンと下から噴射される水のイラストが描かれていました(写真[3])。便器のどの辺りからどんな風に水が噴射されるかまでは伝えきれていませんが、下からそれっぽい角度で噴射されるっていうところまでは伝わるようになっている…かな? でも、おしり(Rear)とビデ(Front)に同じノズルが使われるようには見えなくなっちゃっているかもしれません。ビデ用は、前(文字どおり”Front”)からノズルがニョキニョキ現れそうな気配ですよね?

アイコンも、利用状況やユーザの既有知識を踏まえて考えなければならないことが山盛りで大変ですね〜。各社、お疲れ様です。