2010年8月の読書記録

2010年09月27日(月) 12:12

本&映画の紹介
もう9月が終わろうとしていますけれど…(笑)。
学会やら出張やら鬼スケジュールの仕事やらで手が回らず、今さらになってしまいましたが、8月の読書記録をお届けします。かなり読みました。汗だくになりながら。

読んだ本の数:18冊
読んだページ数:5836ページ

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫) 獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)
「迷いを心に持ちながらも、常に学んでいく姿勢を子どもたちに伝えられる教導師こそ、よい教導師なのだ」とは、エリンの師、エサルの言葉。人並み外れた探求心と発想力と、そして運命に導かれるだけでなく、エリンの人生には素晴らしい人と獣との出会いがあったことが分かります。環境や状況を観察する意思と力の大切さを教えてもらいました。諦めないための体力と忍耐力も大事。ただ、悪役の正体がありきたりで、分かりやす過ぎたところは残念でした。
読了日:08月26日 著者:上橋 菜穂子

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫) 獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)
とても大事な伏線の数々が冒頭から目白押しです。母のふとした言動を、持ち前の探求心と本能で拾いとり、大切に記憶にとどめていく主人公のエリン。養蜂を通じて獣の医術師としての礎を築いていく場面が胸にじんわり来ます。ジョウンとの日々が静かで平和で温かい分、彼女を待ち受ける運命の過酷さが増すに違いない!と思うだけで泣けてきます。
読了日:08月25日 著者:上橋 菜穂子

四つの嘘 (幻冬舎文庫) 四つの嘘 (幻冬舎文庫)
高校時代の若くて愚かな嘘と、23年の時を経てアラフォーとなり、親となって(1人を除く)もまた繰り返される切実な嘘。過去と現在を行ったり来たりしながら、一見緩く、でも根っこのところで太く繋がっている四人がそれぞれに幸せを追い求める姿に実は少しずつ共感してしまう。女子のための小説。男子にはきっと面白くないです。
読了日:08月23日 著者:大石 静

13階段 (講談社文庫) 13階段 (講談社文庫)
死刑制度の是非を問うのがぶっとい骨子。その柱の周囲で、死刑台へ向かって階段をのぼっていく死刑囚の心情と死刑を執行する側の苦悩、冤罪で人生の幕引きをすることになるかもしれない恐怖、仮釈放されたことで得られる自由と縛り、被害者の家族の知られざる苦悶、ひとつの”罪”をきっかけにどれほどの人間が苦しむことになるのかを教えてくれる物語でした。読み終えて、わたしは死刑には反対かな…と今は思っています。
読了日:08月22日 著者:高野 和明

日本の作法としきたり 日本の作法としきたり
いやはや勉強になりました。無神論者としてさまざまな儀礼をパスしているわたし達ですが、日本社会で生きていくにはどうにも欠くことの出来ない儀礼も多いわけで、第三章の”死者を悼み、おくる作法”はかなり参考になります。これまで随分と思い違いしていることがありました。
読了日:08月21日 著者:近藤 珠實

ドミノ (角川文庫) ドミノ (角川文庫)
すごいドタバタ劇。そのドタバタの一部始終をかなりクリアに想像しながら読めました。前評判どおり。米原万里の言う”小説における人口密度”を遙かに超える人間模様が絶対にあり得ない繋がりなのに繋がっていく絶妙さ。一時中断とかしたら大事なことを忘れてしまいそうで止められない。”玲菜ちゃんのお母さん”は字数的にも内容的にも登場人物の一人に入って当たり前と思っていたけど、名前をもらっていなかった。アホな母親をさりげなくシカトするなんてこれまた絶妙。さわやかな読後感です。
読了日:08月19日 著者:恩田 陸

生かされて。 生かされて。
とても信心深い人。無宗教の私から見ると、彼女を救ったのは運と学問と、そして生きたいと強く思い続ける心。でも彼女は神に”生かされた”と信じ、大切な人たちを奪った敵を”赦す”ことが神の導きだと信じてやまない。宗教の力ってやはりいろいろな意味でスゴイですね。その宗教が争いをなくし、憎しみからは何も生まれないということを人々に伝える方向にもっと働くことを願わずにはいられません。
読了日:08月18日 著者:イマキュレー・イリバギザ,スティーヴ・アーウィン

国マニア―世界の珍国、奇妙な地域へ! 国マニア―世界の珍国、奇妙な地域へ!
わたしの知らない国や地域がたくさん。主に天然資源の利権問題を背景に大国があ〜だこ〜だ言ってるところが肝心かつ大問題。それでも大国の傘下にいることを選ぶ国民がいたりもして地元の事情も興味深いです。著者の文章も小気味よくて結構わらえます。旅好きにはオススメの一冊。
読了日:08月17日 著者:吉田 一郎

パワー (西のはての年代記 3) パワー (西のはての年代記 3)
“自由とは…ほかの選択肢があるのを知っているかどうかという問題なのだ。” 奴隷として生きることを、奴隷とはかくあるべきもの、と信じて疑わなかった子どもが”自由”を探し求め、つかみ取るまでのお話。500頁弱に及ぶ長編ですが、物足りない感じで終わります。第一巻ギフトで軟弱な青年だったオレックが立派な賢者っぽくなって再登場。歴史を知り、広い世界を見て、学を積むことの意義、大切さが物語の骨子かな?
読了日:08月15日 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン

セックスボランティア (新潮文庫) セックスボランティア (新潮文庫)
オランダの売春婦の台詞に激しく同感。100パーセント市から補助金の出る障害者と日銭をコツコツ貯めて売春婦を呼ぶ生活保護受給者。保護や支援の内容を国も社会も実はもっと考えなければならないのだと、わたしも思います。蔑視されることを嫌がりつつも、保護を受ける権利を声高に主張する障害者に対して、どんな面でどの程度の支援を社会がすべきなのか…。あぁ、オランダへ行く前に読んでおけばよかったです。
読了日:08月14日 著者:河合 香織

ベランダで野菜を育てる本 (趣味の教科書) ベランダで野菜を育てる本 (趣味の教科書)
いろいろと作りたくなってしまったが、我が家のベランダに吹き付ける運河からの強風がベランダ菜園には致命的な感じにも思われてきた。それはともかくとても参考になる本でした。
読了日:08月12日 著者:平野編集制作事務所

ヘタな人生論よりイソップ物語―こんなに奥が深い“大人の童話” (河出文庫) ヘタな人生論よりイソップ物語―こんなに奥が深い“大人の童話” (河出文庫)
もっとイソップな内容を期待していましたが、イソップ物語をうまいこと活用した自己啓発本という感じ。著者のポジティブ・シンキングっぷりに驚かされます。イソップ物語の奥の深さは同意。きちんと読んでいない人は、イソップ、アンデルセン、グリムなどをまず読破すべし。欧米人のモノの見方や考え方を知るためにも必読だと思います。この本じゃなくて。
読了日:08月11日 著者:植西 聰

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション) キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)
思春期の若者の心の葛藤が綿々と綴られています。わたしはもっと単純だったよなぁ〜とか、そんな風に思ったこともあるかもね…とか、共感したり反発したりしながら読みました。妹の存在がとても大事。わたしにとっての兄弟がそうであったように。人や社会との付き合い方をグルグル考えさせられました。
読了日:08月10日 著者:J.D. サリンジャー

ヴォイス (西のはての年代記 2) ヴォイス (西のはての年代記 2)
舞台は海沿いの町アンサルに移りました。高地の外の国々でさまざまな経験を積んだグライとオレックがアンサルの町と人々の転換期に立ち会います。主人公は神々の”ヴォイス”を聞く(”読む”のほうが正確かな?)ことのできるギフトの持ち主。このメマーとオレックの成長がとてもゆっくりで、読んでいてかなり歯がゆい感じです(笑)。現代にも通じる人間くさい争いや考え方が満載でいまひとつ没頭しきれなかった。そうやって考えさせるのが著者の狙いなのか?
読了日:08月07日 著者:アーシュラ・K. ル=グウィン

ギフト (西のはての年代記 (1)) ギフト (西のはての年代記 (1))
舞台は西のはて。高地で受け継がれる不思議な力”ギフト”の使い手たちの物語が第一巻。ル=グウィンが紡ぎ出す世界に冒頭からグイグイ引き込まれて一気読みしました。昔は前向きに、人や社会のために使われていたギフトが、いつの頃からか後ろ向きに、人や動物を殺め、貶める使い方に変わってしまったのではないか…というグライの視点が印象的で考えさせられます。
読了日:08月05日 著者:アーシュラ・K. ル=グウィン,Ursula K. Le Guin

ドラえもん学 (PHP新書) ドラえもん学 (PHP新書)
単純にドラえもんを読みたくなった。いや、どちらかというと映画のほうを見て、頑張っているのび太くんを応援したくなった感じかな。”学”と付けるほどの学問にはなってなかったです。研究の基礎にあるべき情報収集は立派。でもあんまり考察がない。さらっとドラえもんの歴史を復習するつもりで。
読了日:08月03日 著者:横山 泰行

要するに (河出文庫) 要するに (河出文庫)
“無原則で日和見”を自負する山形浩生があちこちで小出しにしてきた思いをなんとなく一冊にまとめた本。この人はいつも色々と考えていてスゴイなぁと思う。考えた内容はスゴイことばかりでもないけど(笑)、いつも好奇心いっぱいで、考える頭と意欲を持っていて、そういうところを見習いたいな、と。歯に衣着せぬ物言いも好きです。
読了日:08月02日 著者:山形 浩生

ウンコな議論 ウンコな議論
勘違いしてはなりません。これは哲学のお話で、案外むずかしくて疲れます。物事の実態について無関心を決め込み、適当なことを言うことは”ウンコ”だというのが著者の持論です。山形さんもこれに同調したからこそ訳を買って出たのであろうと。真面目に人付き合いを考えたい人とかにオススメ、かな…。
読了日:08月01日 著者:ハリー・G・フランクファート