ブックカバーの歴史

2010年07月21日(水) 17:13

UXいろいろ, 本&映画の紹介, 日本発信四方山話, 東京, モノ+コトの話

今年のUPAでボランティアに勤しんでいた香港生まれの青年が一ヶ月ほど前から日本での生活を始めました。そしてその生活の中での気づきをブログに書いてくれています。日本人とは違う目線が楽しいブログです。

 

[1] ふすま地ブックカバーを購入 [2] 文庫本に付けてみました [3] 三省堂の紙ブックカバー

その彼のブログで少し前にBook Reading Lady in Trainというポストがありました。電車の中で読書をしている日本人を観察し、気づいたことが紹介されています。確かに最近は、文庫や新書に素敵なブックカバーを付けている人をよく見かけます。そしてそれは必ず“女性”ですね。かくいう私も、先日の東京国際ブックフェアにて“ふすま地”のブックカバー(文庫本サイズ)を購入したばかりなのでした(写真[1])。蚊帳の製造を専門とする奈良の丸山繊維産業株式会社が高級ふすま紙(奈良蚊帳の素材である粗目織物と紙の貼り合わせ)で作成しているもので、ブックフェアでは出版社のブース以上に大人気でした。写真[2]は、とある文庫に購入したカバーを付けたところです。

ブックカバーが外国人の目に留まったのは、本にカバーをかける習慣が日本独特のものだからですね、きっと。欧米で本にカバーをかけている人に出会うことはありません(私の知る限りですが…)。そもそも電車通勤とかあまりしないですしね。先述のブログで分析されているように、汚れるのを防ぐとか、何を読んでいるのか周りに知られたくないとか、ブックカバーを使う理由はそのとおりだと思うのですが、その始まりは実は“書店の広告”だったのではないかと思います。紀伊國屋で買っても丸善で買っても、三省堂で買っても本の中身は変わりません。でも写真[3]のように書店独自のブックカバーを付けてお客さんにお渡しすれば、通勤途中でその本を読むお客さんが“歩く広告”になるわけです。書店が溢れる昨今ではあまり効果がないかもしれませんが、今ほど書店が乱立していなかった頃なら、「あ〜、この辺りに三省堂があるのかな? 私もちょっと寄ってみよう!」くらいの広告効果はあったのかもしれません。

しかし世界的にエコが叫ばれるようになり、また書籍の売り上げが落ちる一方の書店としても、この書店独自の紙ブックカバー、最近はあまり安売りしたくないって感じですよね。少し前までは買った本すべてに半ば強制的にカバーが付けられましたが、最近は必ず「カバーはお付けしますか?」と聞かれますし、「結構です」とお断りすると、「ありがとうございます」となぜか感謝される展開(笑)。書店も生き残りをかけて必死なのです。そんな買い手のエコ感覚と売り手の経費削減志向がうまいこと一致して、素材やデザインに凝った繰り返し使える素敵ブックカバーが巷で流行っているのでしょう(女子限定)。

では、本にカバーをかけて渡すという慣習は、はて?いつ、どうやって始まったのでしょう? 

気になってしまったので三省堂書店の社員さんに聞いてみましたが、分からないし、考えたこともない…との寂しい返事。私の質問のおかげで、彼女は今頃気になって仕方なくなってますね、きっと(笑)。で私はGoogle先生に助けを求め、あっさり回答を発見しました。歴史は大正時代の古本屋まで遡るようです。

書店がブックカバーを提供するようになった理由は、私の予想どおり“広告”の役目もありますがそれは二番目で、一番は“お代済みの印として”だそうな。なるほど! 昔はビニールの袋なんてなかったから(紙袋はあっただろうけど…)、カバーをかけることで“この本は購入手続き済みです”ってことを区別できるようにしたんですね。最近は、カバーをかけた上にビニール袋に入れてくれちゃったりするから、帰宅後ゴミ箱へ直行するゴミの多いこと多いこと。日本の過剰包装は書店に限らずなんとかして欲しいものです。

というわけで、人のブログを皮切りに色々と考えてみたというお話でした。