エコ&アートアワード

2010年03月23日(火) 16:29

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KONICA MINOLTAエコ&アートアワード2010作品展へ行ってきました。文字どおりエコとアートをテーマにした作品の展示会です。16歳から35歳までの若手クリエイターやアーティストの一般公募から選ばれた優秀作品43点が一堂に会していました。

先日の日本クラフト展とは違い、今回の展示会場では存分に写真を撮ってイイとのことでしたので、遠慮なく撮影してきました。敬意を表して(大袈裟…)できる限りたくさんの作品 を紹介したいと思います。

 

[1] リサイクル作品の紹介 [2] 啓蒙作品の紹介 [3] わたし的にはこれが一番

作品は、エコロジーに対する提言を意識したファインアート(ビジュアルアーツ部門)とプロダクト化を意識して作られた工芸やデザイン、コンセプト作品(プロダクト&コミュニケーション部門)の二つに分かれていましたが、ざっと見たところ私の目には、“エコを体現するという発想から生まれた作品”と“見る人や使う人にエコを啓蒙することを意識して作られた作品”の大きく二つに分類できるように思いました。仮に前者を“リサイクル作品”、後者を“啓蒙作品”と呼ぶことにします。

▼リサイクル作品(写真左)
左上:本当のエコバッグ(得能慎司さんの作品)
素材が分かるでしょうか? レシートです。レシートの裏面を黒く塗りつぶして繋ぎ合わせただけ。内側はレシートの雰囲気そのままでした。何枚も重ね合わせているようで、作りはかなり丈夫そう。ただ、どうしても雨には弱いという欠点があります。雨に濡れて素材が弱くなることや、黒いインクが洋服にうつりそうで心配な点などを考えると製品化は難しそう。(ということでビジュアルアーツ部門での受賞なのかな?)

右上:ECO FISH(村田勝彦さんの作品)
我が家から毎日大量に排出される空き缶をリサイクルした作品です。とてもカワイイお魚に仕上がっていました。作者のリサーチによると40年後には地球上のすべての魚が消えてしまうかもしれないのだそうです。最近の子供達は魚を見たことがなくて、魚の絵を描かせると“切り身”の絵を描いてしまうような子もいるのだそうです。悲しいですね…。廃材を利用して、こんな魚を作り、子供に魚の形とエコ意識を伝えてみてはどうでしょう?という少し啓蒙的な作品 でもあります。

左下:ビンテージ・デニム「紙漉き」による再生(mmmさんの作品)
古くなったジーンズを粉々にして、紙漉きの要領で生地として再生してみました〜という作品です。すごくイイ感じに仕上がっていました。強度はどうなんでしょうね? ビジュアルアーツ部門での受賞だったので作品化は意識されていないということのようですが、製造が大変なのでしょうか? 着衣としての可能性、ジーンズを作っている企業さんにぜひ考えてもらいたい一品です。

右下:シュレッダーシェード(長野耕大さんの作品)
シュレッダーした紙は繊維が細かくなりすぎてしまうだか何だかで紙に再生することができないらしいですね。そこで別の再利用方法を考えてみたということでした。発想は素敵なのですが、作品を作るために使われた紙がどうやら白紙のようで、まだ使える紙をわざわざシュレッドして使うのは本末転倒なのではないか…と、少し思いました。ランプシェードにするには白がいちばんですが、エコではないですね、少し残念。でも、作品としてはキレイにできていました。

▼啓蒙作品(写真中)
左上:木のふせん(高木 恵さんの作品)
この作品がわたしの一番のお気に入りです。付箋紙に木の絵が描かれています。“付箋を貼る”という行為を“木を植える”行為になぞらえて、森林保護の意識を高めていこう!というわけです。伐採した木を使ってこの付箋が作られているわけですから本末転倒の主張にも聞こえますが、付箋に描かれた木を見て、この付箋や紙を大事に使おう!と思うかもしれないし、何より、すごく上品にデザインされているので、一度つかったっきりで捨ててしまうようなもったいない付箋の使い方はできなくなるのではないかと思います。モノを大切に使うこともエコの一つですよね。商品化されたら絶対に買います!

右上:「ゴミュ」ニケーション(Keio Design Platform/銭屋侑さんの作品)
たとえばペットボトル用のゴミ箱に、写真にあるように「どっちにリサイクルしたい?」という問いを付けて、ゴミを捨てる人がゴミを入れる穴を選べるようにしています。ゴミを捨てる行為を通じてユーザーとコミュニケーションをとってしまおうということで付けたタイトルが「ゴミュ」ニケーション。何が気に入ったって、この絶妙なネーミングです。場所の問題、回収の手間やコストの問題など実用化するには解決すべき問題がいろいろとありそうですが、たとえば出るゴミが限定されるような場所であれば、導入して、リサイクル資源の回収率アップを狙うことができそうです。

左下:+2℃(KAWANO Takeshiさんの作品)
シロクマやペンギンが溶けるようなことはあり得ないけれど、地球温暖化が進み、極地の氷が溶けてしまえば彼らの生活の場がなくなるわけです。そういう危機の存在をありありと伝えてくれる作品でした。

右下: Forest in the earth(大湊 昌史さんの作品)
文字が大地になっていて、文を書くと大陸ができあがるというコンセプトだとか。カワイイ。わたしが使う機会はなさそうですが(絶対に読みにくくなるからユーザビリティに反するもんね…笑)、使う機会を探したくなるような、そんなデザインでした。作者のかたは、“より楽しく愛されるデザイン”をコンセプトに神奈川を拠点に活動しているデザイナーさんです。他にも面白いフォントを作っているみたい。余裕を感じます。

▼UXデザイン大賞(写真右)
わたしの独断と偏見で決定。受賞作は“本当のエコバッグ”ではなく、各作品を紹介するボードにつけられていた“吹き出し”です!「この解説は、この作品についてのものですよ〜」ということをさりげなく、かつ確実に来場者に伝える工夫がなされていました。エコとぜんぜん関係ありませんが、エクスペリエンスデザインとしては最高だと思います。このくらいの規模の展示会であれば迷うことはありませんが、大規模な展示会や博物館では、作品の右にある解説と左にある解説のどちらが正解か、内容を読まないと特定できないようなことがよくあります。見に来た人が余計なことを考えずに見たいものを見られるように場をデザインすること、とても大切だと思いませんか?

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長くなりました。最後まで読んでくださった方、ありがとう。そしてお疲れ様です。