UPA 2009@Portland

2009年06月11日(木) 03:44

UXいろいろ, アメリカ縦横無尽, イベントの話, ポートランド, モノ+コトの話

UPA(Usability Professionals’ Association)という学会に参加するためにポートランドへ来ています。

 

[1] UPAの横断幕 [2] レジストレーションエリア [3] オープニング・キーノート

ユーザビリティに関連する仕事をする人たちが世界中から(大半はアメリカの人たちですが…)集まる学会で、参加するのは今回で3回目。過去の大会とは違う雰囲気やトレンドが垣間見えてたいへん勉強になります。

はじめて参加したのは2002年。フロリダ州オーランドで開催されたときでした。当時は、UCD(User Centered Design/ユーザ中心設計)という言葉を啓蒙し、その活動を推進すること、ROI(Return On Investment/投資対効果)をどのように計算して、どう売り込めばいいかといった話題と具体的なユーザビリティ評価手法に関する発表が多かったと記憶しています。

その後、2005年にカナダはモントリオールで開かれた大会に参加しました。UCDに代わってUX(User Experience/ユーザ・エクスペリエンス)という言葉が多く聞かれるようになったと感じたのはそのときです。流れはもう少し早くからあったのかもしれませんが、私がそれを目の当たりにしたのは2005年の大会でした。

そして今年のテーマは、“Bringing Usability to Life – Making everyday things better”です。より豊かなUXを実現する、あるいは提供するために私たちユーザビリティ・スペシャリストができることは何か? そんな議論が中心と言っていいでしょう。UCDやROIという表現は発表論文のタイトルからほぼ姿を消しました。代わって、”UX(User Experience/ユーザ・エクスペリエンス)”は随所で見かけます。ざっとプログラムを見た感じですが、実験室で行うユーザ・テストよりもフィールド・スタディやエスノグラフィ調査といった調査手法が好まれるようになっている雰囲気が感じられます。”エクスペリエンス”という大きな枠組みに焦点をあてることを考えると、そういう流れになるのも然りです。また、同様の理由でリモート・リサーチが好まれるケースも増えてきているようです。リモート・リサーチであれば、テストラボのようなファシリティへの投資が抑えられますし、被験者に対する謝礼も少なくて済みます。コスト削減の意味合いから言っても、時流に合っているのかもしれません。リモート・リサーチ用のツール展示も複数ありました(後日ご紹介します)。

発表を聴きながらtwitterをしている人が多いのは、他の学会と変わりありませんが、一つ、UPA独特で過去の大会ではなかったと思うことがあります。それは、“発表を録音・録画する場合には、UPA事務局と発表者本人の了解をとらなければなりません”という注意が、各発表の前に必ずアナウンスされること。YouTubeなどにアップされることを嫌っているのだと思いますが(UPAは権利関係にウルサイのです)、毎回聞かされるといい加減うんざりしますね(笑)。2日目は朝食会場が違いますとか、プログラムに間違いがあったので訂正しますとか、私が欲しいと思う情報はアナウンスしてくれないくせに…。ユーザビリティ・スペシャリストがこれだけ集まっても、誰もが満足できるエクスペリエンスを実現するのはなかなか難しいってことが分かりました。これが今のところ一番の収穫です(笑)。