モデレータのいらないユーザーテスト

2009年06月15日(月) 06:34

UXいろいろ, イベントの話, モノ+コトの話

WebExなどのアプリケーションを使って評価対象のウェブサイト画面を共有し、遠隔から教示を出してユーザーさんにタスクを実行してもらい、その様子を観察する。リモート・リサーチと言えば、そんな仕組みが基本だと思っていましたが、最近は“Unmoderated Usability Testing”と称するモデレータ不在のテスト形式が流行りつつあるようです(以下UnmoUT)。今年のUPAでは、このUnmoUTに関する発表もありましたし、専用ツールの展示も複数ありました。その中から2社のツールを紹介します。

とその前に、UnmoUTの仕組みを簡単にご紹介。一口に言うなら、ユーザビリティ・テストとサーベイを合体したようなものです。通常のユーザビリティ・テストには、時間やコストの制約からセッション数を小さく抑えなければならないという難点が常に付きまといます。逆にサーベイは、数を集められる点は良いけれど、つっこんだインタビューを出来ないため行動の真意、意図までは測れないという不利点があります。この2つの手法を合体させて、いいとこ取りをしてしまおうというのがUnmoUTの骨子です。

 

[1] userzoom展示ブース

たとえば、出展企業の一つ UserZoom(写真)が提供する“UZ Self-Serve Edition”を使うとしましょう。

テストに参加することになったユーザーさんは指定のURLへアクセスし、同意書を読んで内容に同意し、テストを始めます。サーベイと同じく、期限内であればいつでもテストに参加することができます。

テストは、通常のユーザビリティ・テストと同様に“タスク前のインタビュー+タスク+タスク後のインタビュー”という手順で設計されます。タスク毎にタスク前後のインタビューを入れることももちろん可能ですし、インタビューの形式も選択式と自由回答式などを好きにアレンジできます。

タスクの内容は画面の下に文章で教示されます。教示はタスクが終了するまで常に表示されているのでユーザーさんが暗記をする必要はありません。注意事項などもあわせて記されます。タスク後のインタビューは別ウィンドウで表示されるようになっていたと思います。回答時、ウェブサイトを見直して正解を探索することはできないよう工夫されていました。

タスクの様子はすべて録画・記録され、どのユーザーがどんな順序で、どこをクリックしたかがデータとして蓄積されます。タスクが達成されたかどうか、各タスクにどれだけの時間を要したかなど必要とされる量的なデータも自動的に記録されます。

予定の人数が終了した段階でテストは終了。統計データが自動的に集計され、グラフなどもすぐに見られるようになっています。簡易報告書として使えるよう、結果をプリントする仕組みも整っていますし、アプリケーションが自動生成したデータに所見などを追加して立派なレポートを仕上げることもかなり簡単にできるようになっていました。

結果をフィルタリングして見ることもできるようなので、分析の負荷も軽減されるでしょう。また、特定のウェブサイトを評価するときだけでなく、商品のフリー探索なども追跡可能だそうです。検索の入り口や検索ボックスに入れる文言なども記録として残りますから、ウェブ上でのユーザ・エクスペリエンスを収集するときにはなかなか重宝しそうなツールです。

モデレータを大の得意とする私としては、モデレータ不要のテスト手法が流行ってくることに少なからずの不安を覚えますが、モデレータ不在だからこそ、テストのシナリオやタスクの教示文などを丁寧に作る必要があると思います。そこに私の出番を見いだすしかないか?!

UserZoomの紹介だけで長くなってしまったので、2社目の紹介は明日に延期。
UserZoomに関心をお持ちの方は、こちらをどうぞ。
“quick tour”というオレンジのボタンを押すとツールの紹介ビデオをご覧になれます。