VTMの発表オスソワケ
2009年05月05日(火) 05:29
UXいろいろ, 本&映画の紹介, アメリカ縦横無尽, イベントの話, サンフランシスコ今回参加した学会(Voices That Matter)では、Krug以外にも興味深いトークがたくさんありました。備忘録として記しつつ、少し皆さんにもご紹介しようと思います。
▼Marketing Obama: Social Media Gets a Seat at the Table
by Rahaf Harfoush
オバマ大統領陣営が従来のメディア(テレビ、ラジオ、新聞など)に加えて、新しいメディア(ソーシャルネットワーキング、eメールなど)をフル活用してキャンペーンを展開したことは日本でも周知のことと思います。FacebookにMySpace、YouTubeにTwitterなどソーシャルメディアをキャンペーンに利用することで、支援者の結束を固め、多額の支援金回収を実現し、そして初のアフリカン・アメリカン大統領就任を現実のものとしたオバマ陣営の内幕と苦労、そして成功の秘訣を伝えてくれたのがこの発表でした。
単に新しいテクノロジーを使って”場所”を用意するだけではなく、その”場所”を活用した行動につなげること、一度で終わりにせず繰り返し行動し続けること、気持ちを伝えることを疎かにしないこと、些細なことを軽視しないこと、そんな気持ちと取り組みが大統領選の勝利につながったということが真っ直ぐに伝わってくる発表でした。
『Yes We Did: An Inside Look at How Social Media Built the Obama Brand』と題する著書がNew Ridersから2009年6月に発売される予定だそうです。楽しみな一冊。
▼Case Study: The Social Website
by Christina Wodtke
ソーシャルウェブのセッションでは、この発表がいちばんでした。どうして人はSNSにたむろするのか? ”人は他の人がいるところに集まってくる”というのが根本にあって、それを支える理由として、(1) Reciprocity(人間関係は相互依存のうえに成り立つ)、(2) Reputation(人は誰もが他者に認められたいと思っている)、(3) Increased sense of efficacy(人は効率のよさを求める)、(4) Attachment to and need of a group(人は何かに属していたいと思っている)の4つが考えられる、と。なるほど。
もう一つ、”Who are your users?”ではなく、”What are your users doing?”と問いなさい!という話もかなり頷けました。前者の問いで満足しがちですが、後者まで考えることがUXリサーチには大切ですよね。
▼Web Anatomy: Usable Design with Frameworks
by Robert Hoekman, Jr.
日本でもソシオメディアさんがデザインパターンの利用によるUI設計の効率化とユーザビリティの向上を提唱しています。この発表は、コンテクストを無視してデザインパターンを使っていると真の問題解決にはならない(=ユーザのニーズを満たせない)という現状を懸念し、ユーザのニーズや行動パターンまで勘案したデザインフレームワークの中でデザインパターンを活用することを提案するものでした。具体例の紹介もあったのですが、うまく解説できそうにないので、興味のある方は2009年9月に発売予定の新刊『Design Anatomy』をご参考ください。この本、世界最大規模を誇るユーザビリティ・コンサルティング会社のトップJared Spoolとの共著のようです。
ちなみに、デザインフレームワークから飛び出したデザインというのも検証中らしく、その例としてNew York Timesの”article skimmer“というのが紹介されていました。まだプロトタイプだそうです。確かに、新聞社のウェブサイトとしては斬新で明らかにフレームワークから外れているように思います。
▼Elements of User Experience
by Jesse james Garrett
IA SummitでpptなしのクロージングトークをかましたJJ。内容的にも物議を醸しているらしいですが、著書『The Elements of User Experience』の2nd editionが近々発売されるということでこの学会でも登壇していました。内容は、UX designの重要性を提唱する王道トーク。任天堂のWiiが、MicrosoftのXbox、ソニーのPS3を抑えて堂々黒字になっているのは、エクスペリエンスにフォーカスすることの重要性に気づいたからだ!とか、ちょっと今さら…な話だった気もしますが、個人的には新しい情報もあったのでよかったです。
・MicrosoftがiPodのパッケージデザインをしたらどうなるかビデオ。笑えます。
・シンプル携帯電話Jitterbug phone。Yes/Noボタンに注目。
・仮想プロジェクトCharmr。医療機器を作るときは医者ではなくて患者の話を聞くべし。
▼Neuro Web: What Makes Them Click?
by Susan Weinschenk
脳科学や神経学の研究成果をウェブのデザインに生かすために作り手側が知っているべきことを教えましょう!というのが骨子。感情を司るNew brain、生存本能に関わるMid brain、理性を重んじるOld brain、それぞれの働きに加えて、相互作用も忘れてはなりません…、すごく難しい話のように聞こえますが、具体例はどれもシンプルで分かりやすく、ウェブデザインの参考になりそうなことばかりでした。キーワードとして挙げられていたのは、”Choices”、”Fear of Loss”、”Stories”、”Excitement & Hope”、”Social validation”などなど。ウェブサイトを見たときに人の脳のどの部分が意識的、あるいは無意識的に何を考え、その過程でどんな葛藤が起き、最終的な意思決定にどんなことが利いてくるのかなどをウェブサイトの具体例とともに紹介してくれて、ものすごく納得できました。この本は買いです。
— 以上、ガンバッテ5本も紹介しました。出版社の回し者っぽい雰囲気ムンムンですが、特に関係はございませんのであしからず。皆さんのお仕事の参考になれば幸いです。