野生動物との距離

2009年04月29日(水) 22:45

UXいろいろ, アメリカ縦横無尽, サインやUIの話, ナショナルパーク, ベイエリア, モノ+コトの話

熊がゴミ箱を荒らすことのないように、ヨセミテ国立公園内のゴミ箱にはいろいろと工夫が施されていました。

 

[1] ゴミ箱のフタは簡単に開きません [2] さらに開けにくいゴミ箱のフタ [3] 注意喚起の看板

鉄製で、殴ったり蹴ったりしても簡単には壊れないようになっています。また、フタがついているのは当たり前ですが、そのフタも、ただ被せるだけの仕様ではなく、金具を持ち上げて、45度ひねってからでなければ開かないようになっていたり(写真[1])、カバーの奥にあるラッチ(かんぬき?)を押し込んでロックを外してからでなければ開けられなくなっていたり(写真[2])と、まるで熊と人間の知恵比べのような様相を呈していました。

熊に限らず、野生の動物に人間の食べ物を覚えさせることは生態系を狂わせることにつながるので避けなければなりません。もちろん、観光客の身の安全を確保することも大切ですが、動物たちが本来の環境で、本来の生活を送られるようにすることも大切です。ヨセミテで出会うリスや鳥は、人間が近づいても血相を変えて逃げ出したりしないのです。逆にこっちのほうが驚いてしまいました。私の前に現れたとあるリスは、「何か食べ物くださいな!」と言わんばかりに手(前足?)を前に出してきました。思わずカワイイッ!なんて思ってしまったのですが、いかんいかん、リスがこんな仕草をすることはオカシイことなのです。まるでこうやってカワイク手を出せば、カワイイ小動物に弱い人間が何かをくれることを知っているかのようでした。これはまさしく、餌を与えてしまう人間がいる(あるいは、かつて餌を与えた人間がいた)ことの証、なのでしょうね。

ヨセミテ国立公園は本当に素晴らしいところでしたが、観光地化し過ぎていて、場所によっては趣のないところもたくさんありました。人間のほうがよそ者だという意識を観光客ひとりひとりが忘れずにいることが何より大切だと思います。園内で見つけた注意喚起の看板(写真[3])には、“公園内の全ての動物から、あなたの食べものを護ってください。”との記述がありました。事故を防ぐために必要な注意喚起ではあるけれど、“あなたの食べものを護ってください”という表現は間違っているんじゃないかな? “野生の動物に人間の食べ物を与えない”のは、自分(人間)の安全のためであると同時に、動物たちのためでもあるという根本的な話を省略してはならないように私は思いました。