Normanが町にやってきた

2008年11月21日(金) 19:03

UXいろいろ, ヨーロッパ所々方々, イベントの話, オランダ暮らし

昨日、予定どおりにDon Normanの講演会が開催されました。
ポスター(写真[1])まで作って宣伝していたらしく、結構な数の人が集まっていました。 Normanの集客力は、オランダでも健在のようです。 びっしり埋まった会場の様子、写真[2]でお分かりいただけるかと。 そもそも会場が狭いっつぅ話もありますがね…。

 

[1] 講演会のポスター [2] 会場は超満員 [3] 学生に囲まれるNorman

今回の講演会は、Design Academy(日本でいう美大のような教育機関)の院生向け授業の一環で催されたようです。Normanの他にも、デザイン業界の著名人を呼んで、ちょくちょく講演会をしているらしい。普段は大学内に閉じているようですが、今回は、旦那がお世話になっているTU/e(アイントホーフェン工科大学)の先生 (Kees Overbeeke)の紹介でNormanを呼んだ(呼べた)という経緯があって、外にもオープンになったのではないかと思います。私の推測ですが。

まぁ、どんな経緯であれ、私も聞きに行けたのでラッキーでした。

最新刊『The Design of Future Things』の内容が主になると思っていたのですが、講演のタイトルは“Sociable Design”となっていて、本の紹介を意図するものではなかったようです。もちろん、話の骨子としてつながる部分はたくさんありましたが、聴衆のターゲットが学生ということで、それにあわせて調整していたのかもしれません。

いつもどおり、Norman自身が身の回りで拾い集めてきた事例を使って、モノ単体を単にデザインするのではなく、それを取り巻く環境や誰が、どんな状況でモノを見るのか、使うのかまで考えて、自分(デザイナー)からは見えないところにこそ注意を払ってデザインをするべきだって主張をおもしろ、おかしく教えてくれました。

Normanの講演は、それこそ上手にデザインされていて、いつも楽しめます。聴衆が笑うところもきちんと計算されていて、たいがい予定どおりに聴衆から笑いが起こって、Normanが満足げに話を続ける。そういうリズムみたいなものは、やっぱり通訳を入れるとなくなってしまうから、日本でも通訳なしで講演できるとよいのになぁ、と思いました。

それから、持ってる事例の数々にも改めて感心させられました。Normanはいつもデジカメを持ち歩いていて、何かあればすぐに写真を撮る。講演が始まる前もずっと、会場や聴衆の様子を写真におさめていました。きっと、何もなくても写真を撮って、撮りためているに違いないです。撮るときに何かに気づいているとは限らなくて、後から見直して何かに気づくようなこともあるんだろうな、きっと。“写真を撮る”っていう行為は、“観察する”に近い、と思う。“観察対象を絞り込む”とも言えるかな? 漠然と観るのではなく、何かを観ようとするっていう行為につながる。それが大事、なんだな、やっぱり、うん。

講演が終わったら、Normanは学生さんたちにすっかり囲まれてしまいました(写真[3])。 再会のご挨拶をしようと思って少し待ってみましたが、列が途切れることはなかった。 私が挨拶をすることよりも、一人でも多くの学生さんがNormanに直に接することのほうが重要だと思ったので、途中で諦めて帰って来ちゃいました。話はできませんでしたが、講演をきっかけにまたいろいろと考えることができたから、私にとっては大きな収穫でしたとさ。