2025年6月の読書記録

2025年07月04日(金) 16:16

本&映画の紹介

6月も、読書が順調すぎて(つまり仕事が少なくて)たっぷり18冊も読んでしまいました! 多すぎて画像1枚に入りきらないからリスト表示にしちゃったよ。

それにしても、『影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理』の新版が出ていたことに驚いたが、「はじめに」にも書かれているように、著者がご存命だということにも驚いた。生きてないと新版が出るわけもないが笑。

今井むつみ先生がもうご退官だということにもちょっと驚き。もうすこしお若い、同い年くらいの先生を想像してました。最終講義を書籍化した『人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学』はとても良かったのでおすすめ。

小説は『眩 (くらら)』が印象的。それも含めて、成長物語が多めの月になりました。お栄を見習って、わたしももうすこし頑張らないとならんかねー。



読んだ本の数:18
読んだページ数:5353
ナイス数:170

新・空き家問題ーー2030年に向けての大変化新・空き家問題ーー2030年に向けての大変化
ずっと賃貸暮らし。単に臆病者どうしの夫婦なのだが、30年ローンを組んで買っても、払い終わったときに残るのは築30年の家だよね…とも思っていた。マンションにしても、管理費と修繕積立金を半永久的に払うの大変だし。総じて考え方は間違ってなかったな。不動産投資もダメ。今後はますます地獄行き。分譲して逃げ切ろうとするデベロッパーとは一線を画すビジネスモデルで成長を続けるニュータウン「ユーカリが丘」の存在、戸建て賃貸住宅シリーズ「Kolet」の盛況ぶり、相続土地国庫帰属制度の概要などいろいろ教えてもらって満足の読書。
読了日:06月01日 著者:牧野 知弘

老人ホテル老人ホテル
Audibleにて。前情報ゼロで聴き始めたので、ホテルに掃除婦として潜入する主人公の意図がなかなかわからずドキドキした。ダイレクトにお金を奪取するのではなく知恵を分けてもらうという展開にのけ反ったりホッコリしたりしていたら、最後に盗みを働いちゃうのね…。かなり残念。たしかに知恵はついたけれど、毒親からも逃げられたのだろうけど、盗ったお金がスタートだと幸せになれないと思うぞ。たとえ逃げおおせても一生つきまとうよ、犯罪者のレッテルが。まぁ、若い子に不動産投資を勧め、死の幇助を託す老婆もどうかと思うが。
読了日:06月04日 著者:原田ひ香

翻訳者の全技術翻訳者の全技術
翻訳家のスキルには「読書の経験値や想定読者の理解なども含まれる」って、そうですよねー。翻訳で差が出るのは「どんなことばを選ぶか、だ」とも言い切ってくださってる。彼が翻訳した本は、彼が読む価値あり!と認めた本だと思っているので、それだけで信頼感アップなのだ。たまに、あとがきで内容をこき下ろしているケースもあるが笑。松岡正剛がキライなんだなーとか、承認欲求がまだ満たされてないんだなーとか、本業はコンサルだったのか!とか、終始たのしい読書でした。まだまだ足元にも及びませんが、精進しよう!
読了日:06月05日 著者:山形 浩生

しゃぼん玉しゃぼん玉
義母からの頂き物。久しぶりの乃南アサ。ひったくりで生計を立ててきた男の成長物語。大学受験を乗り越えた男が宮崎が九州にあることも知らないっていうあたりに現実味はないが大事なところはそこじゃない笑。おスマじょうを助けたことで堂々と居候でいられるようになった男が村の人たちに愛され、頼りにされるうちに変わっていく。ギリギリのところで踏みとどまり続け、婆ちゃんの息子登場で生まれ変わりの道が開ける。シゲ爺に交番へ送ってもらうところでグッときたなー。罪を償ってからの再会まで読ませてもらえてうれしいラストでした。
読了日:06月07日 著者:乃南 アサ

ブランディングの誤解 P&Gでの失敗でたどり着いた本質ブランディングの誤解 P&Gでの失敗でたどり着いた本質
「価値を創造し、得た利益を再投資して、価値を再創造する活動」がマーケティングで、「創造した価値の記憶化と想起率を上げるために行う社内外への活動」がブランディング。商品を「永遠のベータ版」と捉えて、便益と独自性を強化し続ければブランド力が続くってさ。言うは易く行うは難しという感想にならざるを得ない感じがするけれど、まず定義を見誤るな!ってことで、なにごとも目的を明確にするのが大事だぞ。次に函館へ行ったときには必ず函館ラッキーピエロでハンバーガーを食べる!
読了日:06月08日 著者:西口一希

植物の体の中では何が起こっているのか植物の体の中では何が起こっているのか
まあまあお手上げ笑。高校で生物を履修してないからな(履修してた物理もぜんぜん覚えてないが笑)。それでも、植物には重力を感知する力が備わっているから茎や根を伸ばせるとか、この重力屈性に変異を起こすことで枝垂れ桜がつくられたとか、葉の表と裏で葉肉細胞の並び方が違うのは光合成を効率よく行うためだとか、休眠と休眠打破を制御する植物ホルモンの作用で種は適切なタイミングで発芽できるとか、自信を持って理解したと言えるのはこのくらいだな(少なっ笑)。
読了日:06月09日 著者:嶋田 幸久

ぼくらの時代の本ぼくらの時代の本
本を愛する著者が、電子書籍の登場で「本」や「読書」に関わる環境や体験がどう変わっていくかを考察する書。10年前の発行だが、「形を問わないコンテンツはデジタル形式に移行する」との予言どおり、小説はほぼすべて電子で読むようになった。そして最近「読む」のではなく「聴く」環境も整ってきて読書体験は三つ巴状態。それでも紙の本もまだまだたくさん買ってるし、電子で買ってから後悔するケースもある。逆もある。読書体験をシームレスにつなぐ仕組みがほしいのだけど、そのあたりの挑戦もしてくれませんかねー?
読了日:06月11日 著者:クレイグ・モド

小泉今日子はなぜいつも旬なのか小泉今日子はなぜいつも旬なのか
初読ほどのインパクトはなかった…。KYON2が高いメタ認知力の持ち主で、自分の弱さを自覚して受け入れる強さを持ち、社会の変化に敏感でそれに合わせたり拒否ったりする意思と行動力も併せ持つミラクルな女子であったことは間違いない。素直にとりあえずやってみる態度も周囲の好感を呼ぶから可愛がられる。苦労もたくさんあっただろうし、それを表に出せない立場は辛かっただろうけど、彼女の人生はきっと幸せだった。過去形にするのは早いがな笑。それにしても、最後の「メタ認知」の説明が間違ってるからもうオススメできないのが残念。
読了日:06月13日 著者:助川幸逸郎

ともぐいともぐい
Audibleにて。北海道の山や森には羆がいる。独特のニオイがあるらしい。個体ごとに違うのか。人間も体臭いろいろだもの、羆だってそうだよね。熊爪に染み付いた獣のニオイを想像する。鼻曲がりそう笑。若い漁師が集まれば殺れる…と考えちゃダメなのが羆だ、たぶん。穴持たずを阿寒から連れてきて手負いにしたアホのおかげで雄羆2頭の闘いに同席することになってしまった熊爪が生きて帰れたのは奇跡。でもそこから人の温もりを求めるようになったのが終わりの始まりか、それとも熊爪が野生から人に生まれ変わった瞬間か。
読了日:06月13日 著者:河﨑 秋子

新・臆病者のための株入門新・臆病者のための株入門
Audibleで2回連続で聞いてしもーた。読まずに聞くと、大事なところに線を引いたり、角を折ったりできなくて不便だなーと。Audibleはやはり小説オンリーにしようと思った。それはともかく、内容はとても勉強になりました。投資はギャンブルでゼロサムゲーム。わたしは「そこそこ成長の現実」を信じるので全世界株式のインデックスファンドに新NISAで積立投資。入れたら入れっぱなしで一喜一憂しない作戦しかないぞと。この本を読んで、少しでも理解に苦しむところがあれば、先の作戦しかないと思う。あるいは投資は一切やらない。
読了日:06月16日 著者:橘 玲

役所のしくみ役所のしくみ
昔、北海道庁で2年ほどアルバイト(臨時職員)をして、「公務員は思ってたより働いてる」と感じたのを思い出した笑。それにしても「島根県の19市町村はすべて過疎自治体」なのかー。大変だろうけど、現状に甘んじているわけにはいかない危機感があって逆にがんばっている雰囲気。「ふるさと応援基金」をつくってふるさと納税の寄附金を積み立て、寄附額が減少したときに備えるとか、浜田市に限らないとは思うけど財政運営もがんばってる。首長次第で市民の生活は変わるのだ。そこにやり甲斐を感じている行動力ある首長を選ぶこと大事。
読了日:06月17日 著者:久保田章市

眩 (くらら)眩 (くらら)
月一ノルマの歴史小説6月分。恥ずかしながら、葛飾北斎と言えば「富嶽三十六景」しか浮かんでこない歴史音痴なので、娘の存在はおろか、天才絵師にもふつうの(いや、普通ではないか笑)生活があったことに想像が及んでいなかった。「我が孫なる悪魔」の拵える借金を返済するがために描き続ける親父どの。中気を患ってからの復活ぶりも知らなかったなー。そして、北斎の仕事と生活を支え続けた弟子であり娘のお栄。「先々のあたしから見たら、今日のあたしがいっち若いじゃないか」という最後の言葉に、それこそクラっときたわ。わたしもがんばろ。
読了日:06月20日 著者:朝井 まかて

影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理
手元にある2005年発行の第24刷を読み直したのが2022年。改めて、参考書として推薦しようとしていたところに新版の存在を知り、急いで読了です。構成や事例を見直したうえに第7の原理「一体性」を追記して充実度が増しました。増補部分は主に「内集団バイアス」の解説かな。ポジティブな方向へ働かせる使い方を推奨する意味で「バイアス」という言葉はなるべく使わないようにしている(と思う)。7つの原理を悪用しようとする人たちに抗い、搾取されない静かな人生を送り続けるために、しっかり頭に叩き込んでおきたい武器です。
読了日:06月25日 著者:ロバート・B・チャルディーニ

人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学
著者のSFC退職にあたっての最終講義。彼女の研究者人生がギュッとまとまっていた。理解することのむずかしさや人間が持つ認知の歪みを踏まえた研究をされてきただけあって、慎重かつわかりやすくむずかしい理論が解説されていました。記号接地とアブダクション推論については中でもかなりむずかしいので、これで「わかったつもり」になるのは危険。というメタ認知を持って、システム2を使ったふり返りを行い、システム1でアブダクション推論をできるようになるための練習を続けること。こうやって説明すれば良いのか…まで教えてもらいました。
読了日:06月25日 著者:今井むつみ

大内氏がわかる本 入門編大内氏がわかる本 入門編
瑠璃光寺の駐車場脇にある売店で発見! 読みながら、隣にいる山口出身の旦那に地理などを確認できて便利だったが、書かれている内容については旦那の知らないことばかり笑。大内から毛利に殿様がいつ、なにきっかけで変わるのか気になっていたあたりもなんとなくわかりました。将軍を超えて公卿レベルまで到達した人もいたとかスゴイぞ大内! 発掘調査の進んでいる大内氏館と山口市歴史民俗資料館には、次回の帰省でぜひ行ってみよう。それにしても西国(に限らないが笑)の歴史を知らなすぎる道産子がわたし。
読了日:06月25日 著者:山口市交流創造部文化交流課/編

マタギ 矛盾なき労働と食文化マタギ 矛盾なき労働と食文化
新潟の宿で借り読み。『ともぐい』の読了直後なのも良かった。山は怖いところ。自然の中で当たり前に暮らす動物たちを狩らせていただくマタギは獲物を全員で分ける。マタギ勘定と言う。その勘定に入れてもらったときは嬉しかっただろうなぁ、著者。マタギは哺乳類だけではなく、魚も茸も獲る。山の恵を丁寧にいただく。猟も漁も茸採りもぜんぶ命がけ。無事に見つけて仕留めた後の宴会はさぞ楽しかろう。そういう生き方がもうなくなっていくのは残念だけど、その流れに喰らいついて新しい生き方を見つけるのもマタギの在り方だぞと。
読了日:06月27日 著者:田中康弘

美食の教養 世界一の美食家が知っていること美食の教養 世界一の美食家が知っていること
新潟の宿で借り読み。世界中の名だたるレストランへ足を運び、美食を味わい紹介することを生業とする著者の軌跡と現在地が記された一冊。富山の山奥の「なぜここに?」という立地のレストランが、世界に影響を与えている10軒のひとつとして紹介されていた。「デスティネーションレストラン」なる言葉があるとは、わたしの知らない世界……。それにしても、こういう文脈で寺門ジモンさんを見直すことになろうとは笑。著者の美食の師匠らしい。やっぱり、南米に一度くらい行ってみたいかもなー。行く時は、レストランの予約してから旅程を組もう。
読了日:06月28日 著者:浜田 岳文

リラの花咲くけものみちリラの花咲くけものみち
義母のおすすめ2冊目。Audibleにて。舞台のモデルは酪農学園大学かー。継母にイジメられて引きこもりになった少女が立派な獣医師となるまでの成長物語。継母もひどいが実父も情けない奴で、それなのに、3年間の養育費に「ありがとう」と言えた聡里はえらかったな。言えたから縁を切って、もっと大切な人たちと貴重な時間を過ごすことができた。残雪の初恋が実ったのも良かった。雪道での事故からの生還も分かっちゃいたけど良かったね。余談ですが、獣医学部の学生がどんな勉強をするのかを垣間見られるのが楽しかった。
読了日:06月30日 著者:藤岡 陽子