2018年9月の読書記録

2018年10月21日(日) 21:04

本&映画の紹介

9月前半はカンファレンスに通って勉強していたので読書ペースが落ちました。半月の折返しで3冊とかだと焦る…。日本一時帰国の往復でなんとか二桁まで到達しました。いやー、それにしても小説ばかりで反省しかない。でも『影武者徳川家康』は本当に面白かった。本来は表舞台に出ることのない忍の人たちの主人公さながらな活躍と人間味がこの物語をとても温かいものにしてくれていました。『How to Be Swedish: A Quick Guide to Swedishness – In 55 Steps』はとても役立つ内容だった。スウェーデン人のことを知りたいと思う人(は少ないと思うが……)はぜひ。

読んだ本の数:10
読んだページ数:3255
ナイス数:97


影武者徳川家康〈中〉 (新潮文庫)影武者徳川家康〈中〉 (新潮文庫)
中巻は甲斐の六郎がメインだな、これ。おふうに母として生きるか、妻として生きるかを選ばせるくだりは、六郎の優しさと厳しさが全開だった。続いて、風斎がおふうの代わりを買って出たもんだから風魔の人たちの優しさがしみて涙腺ついに開放でした。秀忠は前巻につづきアホ笑。二郎三郎は周囲をどんどん味方につけて着実に足場を固めていく。他人のふりをして生きる人生、心身ともに疲れるだろうなー、秀忠がアホだけになおさら。そういうわけで、なんちゃって親子の頭脳戦もさることながら忍の人たちの物語がおもしろくて止まりません。
読了日:09月02日 著者:隆 慶一郎


さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポさびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
スウェーデンの本屋に翻訳版がありまして、驚きまして、そんな世界展開するような売れっぷりを納得すべく読んでみました。親離れできないできた女子が勇気を出して親離れするために頑張ってレズ風俗に行ったという、うんうん、がんばったねぇ。たぶん。違う頑張り方もあったのではないかと思うけど、本人がそれで幸せへの一歩を踏み出せたのならそれでいいよね。とか書いていたら、そうか、心を開けずに救いを求めている人がたくさんいることの証左なのね、この売れ行きは。という感じに納得しました。
読了日:09月09日 著者:永田カビ


恩讐の鎮魂曲 (講談社文庫)恩讐の鎮魂曲 (講談社文庫)
御子柴シリーズは、実際にあった事件をモチーフにして、しかも複数を巧みに絡ませてくるのでおのずと読み応えが増していき、瞬く間に引っ張り込まれて夢中になって読んで終わりな感じ。どの物語もすっきり気持ちの良い終わり方ではないのだけど、実際の社会もそんな感じだし、そういう意味でも適切な描写なんだろうな、と。ひとつ残念だったのは、ホームでのいじめ虐待という展開が簡単に読めてしまったことかな。そういう現場は減ってきていると思うけど、実際のところはどうなんでしょうね…。
読了日:09月12日 著者:中山 七里


アフリカにょろり旅 (講談社文庫)アフリカにょろり旅 (講談社文庫)
大事な現地協力者の連絡先を持ってくるの忘れましたー!な著者に怒ったりしない教授は懐の広い人なんだ。そんな事態にもかかわらずまず観光行ったりするから驚くわ。ラスト、30匹めざしてがんばれ!というシゴキにも似た指令を聞かなかったことにして、逃げるようにアフリカを後にした二人。日本に戻って恐る恐る教授と対面した後、数時間とせず学会発表しているとかってスゴイ。教授は鬼だった笑。立派な教授の指導はスゴイけどシンドイのだよ…というのをなんとなく思い出しました。これからも研究がんばってください。
読了日:09月16日 著者:青山 潤


理科系の作文技術 (中公新書 (624))理科系の作文技術 (中公新書 (624))
理科系のための内容に終始するわけではなく、人に読んでもらうことを前提に文章を書くときの心構えや基本的な技術をかっちり教えてくれる良書です。先輩からオススメいただいたので、執筆前の予習(というか復習)のつもりで読みました。が、おそらくこの本のおかげで、かっちりガチガチで面白くない文章になってしまっているっぽい。編集さんにもっとやんわり書くよう、なんならビール飲みながら書いてしまえ!とか言われた笑。いや、とは言え、この本に書かれているような基本がわかったうえで崩すことが求められている…はず。
読了日:09月19日 著者:木下 是雄


How to Be Swedish: A Quick Guide to Swedishness - In 55 StepsHow to Be Swedish: A Quick Guide to Swedishness – In 55 Steps
ちょっと留学のつもりが10年以上の年月を暮らすことになったスウェーデンを第二の故郷として愛する著者が、外国人がスウェーデン人に混じって生活をするときに気になること、苦労することを実体験にもとづいて丁寧に教えてくれています。これまで読んだ本のなかでおそらくもっとも実用的。鍵を握る言葉や表現はスウェーデン語と英語のダブル表記にしてくれているのも助かります。スウェーデン語でどう言うのか、が大事なのですよ、そうそう。スウェーデンで浮いたアジア人にならないよう、溶け込んでいけるよう、わたしも頑張ります!
読了日:09月22日 著者:Matthias Kamann


影武者徳川家康〈下〉 (新潮文庫)影武者徳川家康〈下〉 (新潮文庫)
二郎三郎がんばった。六郎もよく守った。豊臣を守れなかったことは悔やまれるかもしれないけれど、十分よくやったよ。下巻に入って、淀君と秀忠の描写がみるみる酷くなっていって笑えたな…。この二人がもう少し理性的で謙虚でメタ認知が高ければ歴史は違っていたのかもしれない。と、著者も思っているに違いない。それでも、この後200年以上つづく徳川時代の太平な世に、秀忠も多少の貢献はした…んだよな、たぶん。いや、そうあって欲しい、せめて。とにかく、桜を愛でながらの5人の静かな宴が美しくて泣けました。
読了日:09月23日 著者:隆 慶一郎


十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
長く読み継がれるミステリーだけあって、なかなかの読み応え。電子書籍で読んだので、冒頭に用意されていた島の地図や十角館の見取り図を確認しながら唸りつつ推理を楽しむことができなかったのが少し悔やまれる。愛が歪むといろいろな形で悲劇が生まれるのですね。どんな形の死も、相当の心の準備がなければ受け入れがたく辛いものだと思うけれど、人の命を奪う側にも苦悩がつきまとうのも確か(なのだろう、たぶん)。最後に彼が、罰を受け入れる覚悟をできたことが大きな救い。
読了日:09月26日 著者:綾辻 行人


方言でたのしむイソップ物語方言でたのしむイソップ物語
昨年京丹後へ旅行したときに著者 安野光雅さんの美術館を訪ねました。そのときの記憶で勝手に京都のご出身と思い込んでいましたが、そうですか津和野のご出身でしたか。津和野の方言こんな感じなんですねー、文字にするのもご苦労だったと思いますが、読むほうもかなり大変でした笑。イソップ物語が伊曽保物語になって、さらに方言になって…なので込められた教訓はおそらく歪んでいるし、ところどころにある「下心」と称された解説が絶妙に解説になっていないし笑、つまり案外に難読でした。
読了日:09月27日 著者:安野 光雅


妻が椎茸だったころ (講談社文庫)妻が椎茸だったころ (講談社文庫)
スウェーデンでの暮らしが始まり、肉厚の椎茸が食べられなくなったのが残念で、そこで以前から気になっていたこの本(笑)。お料理を楽しめる人は、自分が椎茸だったとか、じゅんさいだったとか、思いながらお料理するの?そうなの?そこにはまったく共感できないけど、亡くなった奥様の代わりにお料理教室へ行ったご主人は、おかげでその後の人生が変わりましたね。他の短編もファンタジーやらミステリーやらいろいろ混ざっていてゾワっとか、ゾクっとか、そういうのが続く、飽きさせない構成でした。
読了日:09月29日 著者:中島 京子