2018年4月の読書記録
2018年05月17日(木) 17:03
本&映画の紹介小説をはじめとする楽勝系が多めになった3月の反省を生かして、4月はなかなかのバランスです。『ウォッチメイカー』は引き続きオススメだけど、それ以上に『羆撃ち』が良い。犬好きさんには絶対に響く。大泣き覚悟で読んでください。UXリサーチ業界の方は『インタビュー』、読んでおいて損はないです。山や自然が大好きだったり、気軽に読んで笑える本をお求めの方には『北緯66.6°』かな。
ところで、久しぶりに10冊じゃなくて11冊。このまま上り調子で行こう!っていうか、行ってる。5月は中旬にしてすでに二桁ですぞ。
読んだ本の数:11
読んだページ数:3194
ナイス数:47
ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)
花見しながらコレ読んでるって、ちょっと頭わるい人みたいだけど、途中でやめたら訳がわからんくなるから仕方ないわ。それにしてもキャサリン・ダンスのキネシクス分析が気になって、どちらかと言うと彼女主人公のシリーズのほうを読みたくなってしもーた。あ、それよりも、これだけの布陣で闘って犯人に逃げられるとかどういうこっちゃねん。人助けと思って殺人やってみたら性に合ったとかって、良心もってない系の人が犯人でした。最後、アメリアの転職取りやめを心から喜ぶ男子二人が読後感を爽やかにしてくれましたとさ。
読了日:04月01日 著者:ジェフリー ディーヴァー
北緯66.6°
予習⑥ – ラップランドの大自然とそこにある厳しい気候と、そしてその中にただ身を委ねるではなく毅然と立ち向かう山男の麗しい山行を、それは流麗な文章で綴ってくれているであろうことを表紙から勝手に期待して読み始めて、ぜんぜん違ってビツクリしたなぁ、もー。いやはや笑いっぱなしでしたわ。しかし、時折りマジ発言くる。“登山の本質は(中略)いかに、自然の一部として森や岩や土と繋がって自分の判断力を信じて生きていくかにある”とか言ってくれちゃってグッときた。ラップランドのロングトレイル…行くか?行けるか?たぶん無理。
読了日:04月02日 著者:森山 伸也
ミレニアル起業家の 新モノづくり論 (光文社新書)
ミレニアル世代がミレニアル世代のことを語ってくれている良書。若者たちと戯れてわかった気になって語っている人の話よりもずっと参考になる。時代の流れが速すぎてついていけていないオジサンオバサン向けの用語解説もすごく良い。この世代にもUIとUXをきちんと分けて捉えられている人がしっかりいて嬉しい。“ミレニアル世代の消費行動や労働は「トライブ」と強く結びついている”と。トライブってなに?と気になったオジサンオバサンは本書を読みましょう。“ユーザーに聞くのではなく問う”という言葉も響いた。
読了日:04月05日 著者:仲 暁子
グッド・バイ (新潮文庫)
『御伽草子』からの『グッド・バイ』で、太宰治の多才ぶりや人間味を堪能…とまではいかないというか、様々な角度から描かれた短編が折り重なって、そして最後に遺作となった未完の表題作でモヤモヤしたまま終わりました笑。随所に許しがたい男や女が出てきて、いつの時代もせんないなぁ…。でも自殺しちゃイカンよなぁ……とか思いつつ、きっとこの次は『人間失格』か『斜陽』あたりが勧められるんだろうなぁ、重いな……、重すぎる、ということでいったん太宰治からは距離を置きたいです。さようなら。
読了日:04月12日 著者:太宰 治
ファンタジア
「身近にあるモノに向き合い観察し、その上で分析し解明された、「創造行為」を掌る人間の本能的な能力」をムナーリはファンタジアと呼んだ…というのは訳者の解釈ではあるが、とてもしっくり纏まっていて分かりやすい。発明はファンタジアなのか? ファンタジアが発明なのか? ファンタジアとイマジネーションのつながりは? 冒頭のそんな問題提起に丁寧に応えてくれる良書。すべての子ども達が持って生まれるファンタジアを育むための学びの場のデザインがいずれも秀逸でウットリする。勉強になりました。
読了日:04月13日 著者:ブルーノ ムナーリ
インタビュー
“取材者というのは見られる存在でもあるのだな、と痛感する”との言葉からもわかるとおり、インタビューが相互作用であることをしっかりと理解しているプロのお仕事ぶりと心構えが綴られていました。出向く前にどれほどの予習をするか、自分の身なりにどれほど気を使うか、どんな相手と対峙するときにも“楽しもう”とする姿勢など、ユーザーリサーチの仕事に通じる世界観が、異種同業?!の仕事をしている私には心地よかったです。以後、私も気を引き締めて現場に向かいます。
読了日:04月14日 著者:木村俊介
かにみそ (角川ホラー文庫)
蟹に食われて行方不明扱いという最期は避けたい。それにしても蟹の最後が潔くて、蟹のすべてを胃におさめた主人公もなにげにけじめをつけた感じで、意外と清々しい読後感…と言うと語弊があるか笑。『百合の火葬』のほうは、我が子を失い、心を病んでしまえば、こんな幻想もあり得そうで映画にもなれそうな雰囲気でした。こちらはコワイというより悲しい。
読了日:04月15日 著者:倉狩 聡
河童が覗いたヨーロッパ (新潮文庫)
予習⑦ – “だから「ヨーロッパは…」と、一口でかたづけるわけにはいかない”と、各国の窓の作りを観察比較して語る河童さん。オペラが始まる時刻はイタリアとドイツでこんなに違う。だって、“イタリアはイタリアで、ドイツはドイツだから…”ね。添えられているイラストの丁寧さや精密さはもちろん、視点と観察眼の鋭さが素敵すぎて尊敬しかない。河童さんのようなイラストを描けるようには絶対になれないけど、同じような視点でヨーロッパ各国を観て、感じて、伝えられるように頑張ろう!と誓った。
読了日:04月19日 著者:妹尾 河童
ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?
確証バイアス、選択的注意、ヒューリスティクス、認知的不協和(の回避)などなど、ヒトの認知特性を知っておくことはスタートアップを成功へと導く…というよりも、ビジネスモデル症候群に陥ることを回避するための強力な武器になる、と。スタートアップやUXリサーチに限らず、ヒトの認知特性がわかれば普段の生活や人間関係の悩みが減るだろうし、学びの効率は格段に上がるだろう。やはり、学校で教えるべきだと思うぞ認知科学。とりあえず、起業の予定はありません笑。
読了日:04月23日 著者:和波 俊久
羆撃ち (小学館文庫)
野生の生き物には、種類や大きさに関係なく怖さを感じる。ただ生きるために必死な姿には凛とした美しさもある。都会で生活しているとそんな出会いは皆無であり、それを望んで山へ行くかと言えば、それもあり得ない。だから羆撃ちとしての人生など想像すら叶わないわけで、そんな別世界の様子や実態、そこに挑む人の態度、心情、いずれもが貴重で崇高で、読ませていただけることに感謝しながら大切にページを捲っていった。そして後半、フチとの別れはこれまた想像を絶する悲しさで大泣きでしたわ…。
読了日:04月29日 著者:久保 俊治
にょっ記 (文春文庫)
これは…、面白すぎだ。日々の生活の中にあるちょっとしたモノやコトやヒトをゆる~く観察して、さらっと感じて、バシッと言葉にした感じ。『おばさんたち』を読んで吹き出し、「うっかりバスの中でアホな話できないな…、穂村さんに聞かれたら書かれてしまう…」とか思ったり、『うこん』を読んで、「こういうことしれっと書けるのが羨ましい…」と思ったり、『由美かおる』を読んで「意外と深いな…(いや、深くない)」とか、ひとりでノリツッコミしたり、『昔の時代劇』では、穂村さんの観察眼に脱帽。そ、そんな感じでとにかく面白かった。
読了日:04月30日 著者:穂村 弘