重鎮のお宅訪問
2009年10月02日(金) 18:51
UXいろいろ, アメリカ縦横無尽, ベイエリア少し(かなり?)前の話になりますが、ユーザビリティ業界の重鎮の一人、Aaron Marcus氏を訪ねてBerkeleyへ行きました。以前はニューヨークにオフィスを構えていたそうですが、まぁ色々とあって数年前にオフィスをたたみ、今はBerkeleyの自宅兼オフィスで仕事をしているそうです。常勤のスタッフはゼロで、お抱えのデザイナーさんたちは全員、やはり各自の自宅で仕事をしてもらっているのだとか。代わりではありませんが、Aaronのところには常時、インターンシップの学生さんが1〜4人いて、厳しいAaron先生の元で社会勉強に励んでいるようです。わたし達がお邪魔したときも、学生さんが二人いらっしゃいました(写真[1]の左から二人/右端がAaronです)。
Aaronは厳しい?と聞いたら、即、「Yes」と答えが返ってきました。「プライベートはとても穏和で、一緒にいると笑いが絶えないけれど、仕事や研究の話になると途端に厳しく、真面目な表情になる。いつも真剣勝負になるから大変だけど、すごくイイ勉強をさせてもらっている」、と100点満点の回答! さすがアメリカの学生だ。私がAaronを見かけるのはいつも学会の席で、たいてい変な帽子をかぶって談笑している様子。厳しい一面をしっかり持っていることをやっと確認できました(笑)。ちなみに、写真[2]は、彼の変な帽子コレクションです。そして、子どもの頃から大事にしているテディーベアも見せてもらいましたぁ。さすがに年季が入ってます(写真[3])。
それはさておき、せっかく恵まれたこの機会を利用して、彼のこれまでの軌跡と最近の取り組みをいろいろと聞いてきましたので少しご紹介します。元来、デザインコンサルティング会社ですから、クライアントからの依頼に応じて結果を出すという仕事ももちろんたくさんしているようです。中でも、テレビ会議システムの評価とインターフェイスのリデザインを求められたプロジェクトで、世界6ヶ国同時ユーザビリティテストを実施したという話は、私の仕事にも直結するので大変興味深かったです。時差や文化差を乗り越えてユーザビリティテストを準備、実施するのは本当に大変なことでしょう。しかし、テレビ会議システムはそもそも、そんな時差や文化差を乗り越えて使われるものですからね。その評価の段階でそこを軽視したり、手を抜くわけにはいきません。Aaronは、文化が違えば、受け入れられるインターフェイスが違うのは当たり前、というスタンスで長く研究やプロジェクトを行ってきた人ですから、テレビ会議システムのような製品の仕事はまさに得意分野なのかもしれません。
インターンシップで来ている学生さんが手伝っているという研究もご紹介いただきました。“Green Machine: Mobile Decision Displays to Promote Eco-Action”というプロジェクトです。温暖化が進み、地球が悲鳴をあげていることは今や誰もが知っている。それでも人々の行動は変わらないというのも事実。ではどうすれば人々にエコな生活を送ってもらえるか? それを支援、後押しするソフトウェアを開発し、iPhoneに載せよう!という、ざっくり言うとそんな研究のようです。この研究を先へ進めるには、企業からの支援がどうしても必要で、現在、大々的に募集中なのだそうです。この不景気ですからね。難しいとは思いますが、ご興味をお持ちの企業の方は、よかったらAaron Marcus and Associatesまで連絡してみてください。
CHI、UPA、HCIIなど、関連学会に行けば必ず会えます、Aaronに。日本のことも大好きな人なので、見かけたら是非、声をかけてみてください。必要あらば、私が仲介します。