年に一度の晴れ舞台〜EXPE
2009年06月07日(日) 00:11
UXいろいろ, アメリカ縦横無尽, イベントの話, スタンフォード, モノ+コトの話春学期が終わりを迎えたスタンフォード大学では最近、各種イベントが目白押しです。
そんなイベントの一つ、EXPE(The Stanford Design EXPErience Design Fair)を覗いてみました。機械工学やデザインを学んでいる学生さんたちが、企業と共同で進めてきたプロジェクトの成果を発表する年に一度の晴れ舞台です。
プレゼンには学内関係者および出資企業の皆さんしか入れないので、私は一般公開されているブース見学のみ。ビルの周囲のオープンスペースにテントを張ってという簡単な会場でしたが、雨の予報を覆す晴天に恵まれて大盛況の様子でした(写真[1])。
精度の高いワーキングプロトタイプがたくさんあって驚きです。特にお金と気合いが入っていたのはAudiのステアリング(写真[2])。ステアリングを握る強さや指のかけ方、指先でハンドルの表面をこすったりというちょっとした操作でミュージックプレーヤーを動かしたり、エアコン操作をできるようにしてみようというのがコンセプトの研究で、その成果は内部構造も含めて惜しげもなく公開されていました。ステアリング上に操作ボタンを置くという解決策をとっている車はたくさんあると思いますが、ステアリングの中に埋め込んでしまおうというのは新しいのかな?たぶん。あまり運転しないし(笑)、車にもさほど執着がないので、この有り難みはよく分かりません。それに素人考えでは、ちょっと力んだり、汗ばんだり(今回の展示では手のひらの汗や温度でどうこうという仕組みはありませんでしたが…)しただけで何かが動いてしまいそうなステアリングはむしろ怖いと思うのですが、どうなんでしょう? この研究結果がどんな形で市場にお目見えするのか(そもそもするのかどうかも分かりませんが…)期待して待つとしましょう。
プリウスをはじめとするハイブリッドカー人気を受けて、充電の悩みを解消する方法を模索する研究もありました(写真[3])。解決策としては誰もが思いつきそうな日中の太陽光発電です。いやそれにしても、車の上にこんなに不格好にソーラーパネルを載せるだけなんて、ちょっと辛くない? 発電量を可能な限り最大にする、ソーラーパネル1枚は常時露出させる、実験車に搭載できるようにするのはもちろん車体からはみ出ないようにするとか空気抵抗を存外に増やさないとか、大人二人で軽々装着できるようにするとか、たくさんの制約を乗り越えて実現されたプロトタイプだから感慨ひとしおなのかもしれませんが、“魅力的なデザインにする”っていう目標が完全無視されているような気が…。“魅力的”かどうかはスポンサー企業の人が判断するということになっていたようですが、スポンサー的にこれでOKだったのでしょうか? ちなみに、展示しているプロトタイプの状態は、駐車中により多くの発電を実現できるよう走行中は隠れているもう一枚のソーラーパネルを引っ張り出した状態だと思うので、走っているときはもう少し不格好さが軽減されるものと思われます。車好きな人は、駐車中もカッコヨク見せたいだろうから、絵的にダメなのは変わらないと思いますけど…。
車関係の研究ばかりをご紹介しましたが、他にも、コーヒー1杯もっと楽に入れられるようにしようぜ!というコンセプトで作られた全部一体型コーヒーメーカー、ポストイットに書いたメモをスキャンして共有やソーティングをしやすくするツール、遠く離れた友達を抱きしめたり、ドついたり、逆に抱きしめられたり、ドつかれたりする感覚を楽しめるブレスレット、燃費などを自動的に計算してWeb上のコミュニティにアップしてくれるデバイスとSNSで“ECOった度”を友達と競い合ってみよう!みたいなECO推進グッズ、などなど、どれも製品化するにはまだまだ詰めないとならないものばかりでしたが、学生の取り組みとBay Areaの研究トレンドのようなものが見えて、とても面白かったです。毎年開催されるようなので、ご興味のある方は来年どうぞ。企業の皆さんなら、お金とテーマを持ち込んでみるという手もありますね。ちなみに今年は、Panasonicさんのロゴをずいぶんと見かけました。