世界を変えるデザイン展
2010年05月21日(金) 15:11
UXいろいろ, 日本発信四方山話, 東京, イベントの話, モノ+コトの話東京ミッドタウンで開催されている世界を変えるデザイン展へ行ってきました。発展途上国の貧困層は世界総人口の約70%を占めるといわれています。また、先進国におけるデザインは、世界総人口のほんの10%を対象にしているに過ぎず、その他90%の人々のニーズは見過ごされているというのが現状なのだとか。いま求められるのは、貧困層の人々の暮らしや考え方を変え得るデザイン、見過ごされてきたニーズを受け止めてカタチにするデザインなのです。
東京ミッドタウンにあるDESIGN HUB(デザインハブ)に、発展途上国で実際に使われているプロダクト約50点が展示されています。安全な水にアクセスできず、コレラや赤痢など水を媒介とする病気にかかって命を落とす人の多い発展途上国のためのプロダクトやプロジェクトが多く目を引きました。たとえば写真[1]のQ Drumは、女性や子供の水汲み仕事に対する負荷を軽減するための転がすタンクです。汲んだ容器を頭にのせて運ぶことで首の神経を圧迫したり、何よりこれまでは一度に運べる量がかなり限定されていましたが、このタンクを使えば一度に約50リットルの水を子供の力でも容易に運ぶことができます。
写真[2]はペットボトルに水を入れて、直射日光に約6時間さらし、水中のウィルスやバクテリアを殺菌・消毒するというアイディアの紹介。「それだけ?」と思うかもしれませんが、その“それだけ”のアイディアが大事だということを教えてくれます。水道から安心でおいしい水が出るのが当たり前と思っているわたし達にしてみたら、目から鱗ですよね。都会の先入観を捨て、現地の人々や暮らしに受け入れてもらえる実現可能なアイディアこそが求められているということが分かります。
最後、写真[3]の小道具はコーンシェラーと言って、収穫されたトウモロコシの粒を手で剥く作業を効率よく行えるようにする器具です。現地で手に入るブリキ缶や金属の薄板などを使って作れることや、トウモロコシの形に応じて器具の形を簡単に変形させられるようにしている点がポイント。先進国で作った器具をただ押しつけるのではなく、現地で手に入る素材を使って、現地の人が自ら作成や修正をできるようにすることまでをトータルにデザインした素晴らしいプロダクトです。
この他にも思わず唸ってしまうようなアイディアがたくさん紹介されていますし、入り口に展示されている世界の課題についてのパネルも見応えがあります。6月13日まで開催されているようですので、ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。