惜しい日本語三選

2009年07月06日(月) 15:12

UXいろいろ, アメリカ縦横無尽, サインやUIの話, サンフランシスコ, ベイエリア, ポートランド

ポートランドにJapanese Garden(日本庭園)があります。日本国外に作られた日本庭園の中では一番の出来として知られているらしく、大勢の観光客を集めています。その日本庭園で見かけた注意喚起の立て看板(写真[1])。道や階段の表面には凹凸があって平坦にはなっていませんとか、斜面の角度が急だったり、滑りやすくなっていたりするのも日本庭園を日本庭園たるものにするために必要なことだということを記し、用心して歩くようにと呼びかけています。

日本語は、“御注意”と書かれているだけで残りは全部英語。日本人であれば言われずとも分かるだろう!ってことでしょうか? いやそれにしても“御注意”ってなんかおかしい…。

この場合の“御”は、大辞泉によりますと、接頭辞としての用法の一つで、“他人の行為や持ち物などを表す語に付いて、その人に対する尊敬の意を表す”のだと思います。文法的には間違っていないのでしょうが、看板の見出し語としては少々奇妙。単に“注意”と書くか、“御注意ください”とするのが日本語としては自然かもしれません。

 

[1] 日本庭園の立て看板 [2] 17マイルドライブの途中 [3] サンフランシスコのお土産屋

続きまして、モントレーとカーメルを結ぶ17マイルドライブの途中、ローン・サイプレス(崖の上にたたずむ糸杉の木。ペブルビーチ社のロゴになっている木です)を臨む崖の上で見つけたやはり注意喚起の看板(写真[2])。英語をはじめとする日本語以外の言語では“-(ダッシュ)”になっている部分が、日本語では“ー(長音符号)”に置き換えられています。

ここで使われている“-(ダッシュ)”はウィキペディアによりますと、正確には“emダッシュ”と言いまして、“文と文の間、字句と字句の間に用いられて、時間の経過を表す”記号です。日本語の“ー(長音符号)”は先述の大辞泉によりますと“長音に読まれるべきことを表す文字、または記号。片仮名表記に用いられる”もので、二つの記号は似て非なるものなのです。見た目に同じだからと言って、適当に使っちゃイカンのですよ。

そしてそれ以上に頭を傾げてしまうのは、日本語だけ記号が二つになっていること。単なるタイポでしょうか? 他の理由がまったく思いつきません。

最後はサンフランシスコ。ダウンタウンからゴールデンゲートブリッジへ向かうと、橋のほんの少し手前にゴールデンゲートブリッジをキレイに眺められるビューポイントがあります。毎日、観光バスが何台もやってくるくらいの人気スポット。橋を渡らなければ通行料かかりませんから(外へ出るのは無料ですが、サンフランシスコに向かって戻ってくるときに6ドルの通行料がかかります)、皆さん手前で橋を眺めて満足するんですね。渡った先からの眺めも素晴らしいのに、ちょっともったいない気がしますけど、私は。

で、そのビューポイントには観光客狙いのお土産屋さんがあります(写真[3])。お土産屋さんは確かに“ギフトショップ”ですが、そうですか、“GIFUTO SHOPPU”と書きますか…。一瞬、どこか違う国の言葉かと思いました。

地域に暮らす日本人か、日系の方が、おそらく善意で書いてくれた看板なんでしょうね。でもどれも惜しい。でもでも、私も日々英語で適当なことを言ったり、書いたりしているのかもしれないから気をつけないとならないなっと、少し気を引き締めました。少なくとも、ネイティブチェックは怠らないようにしよう。