UXリサーチ会社のご紹介

2009年05月06日(水) 03:15

UXいろいろ, アメリカ縦横無尽, サンフランシスコ

サンフランシスコに拠点を置く Bolt|Peters という会社を訪問してきました。

 

[1] Bolt|Peters を訪ねました

ユーザ・エクスペリエンス・リサーチを専門にする会社で、創業8年目。7人のスタッフでウェブサイト、ゲームアプリ、そしてドライビング・コンテクストなどのリサーチを行っています。一番の特長は、ラボを持たず、すべてのリサーチをリモートで行っていること。ウェブサイトやゲームアプリのリサーチでは、画面共有ソフトを使って評価対象を共有し、ユーザには自宅やオフィスなど自分の好きな(あるいは普段の)環境でテストに参加してもらいます。移動にかかる時間と費用を節約できること、より自然な環境で評価対象に接してもらえることなど利点も多く、複数都市や複数国でテストを実施したいときにはその利点が特に効いてきますから、アメリカやヨーロッパでは日本よりもニーズが高いと言えるでしょう。

Bolt|Petersでは、ドイツの某自動車会社からドライビング・コンテクストのリサーチ依頼を請けたのをきっかけに、リモートリサーチに加えて”ポータブルリサーチ”を行うようになったそうです。リモートリサーチで使っている画面共有ソフトではドライビング・コンテクストリサーチの場合は使い物にならないため別の手法を考えざるを得なかったというのが正直なところだと思いますが、それが思いの外うまくいったということで、3月に行われたIA Summitでもこの手法を紹介していました。

では、そのポータブルリサーチ手法を簡単にご紹介します。

モデレータとカメラマンの二人が被験者宅を訪問し、書類手続きと簡単なインタビューを行います。このときのポイントは、従来の守秘義務契約書の他に、”安全運転誓約書”にサインをしてもらうことだとか。カメラを回しますし、運転しながらタスクもやってもらわなければなりませんので、万が一にも途中で事故など起こしてしまっては厄介な訴訟問題に発展しかねません。実験者としてはとても大切な事務手続きと言えます。

続いて、被験者の所有車に3人で乗り込み、実際にドライブをしながらインタビューに応えてもらったり、タスクを行ってもらったりします。自宅でインタビューに応えたときは、「運転しながら携帯電話で話をするような危ないことはしたことがないわ」なんて言っていた被験者が、テスト中に何の躊躇もなく電話をするのを見て、人の言うことは本当にあてにならないと思った、なんていうエピソードも紹介していました。

テストの様子は、助手席のカメラマンがビデオで記録します。必要に応じて静止画も撮るそうです。後部座席には、パソコンを携えたモデレータが乗り込み、ウェブカメラでとらえた被験者の様子と音声を各自のオフィスで観察しているクライアントとBolt|Petersのプロジェクトリーダーへ配信します。また、モデレータと観察者とはIMで常時つながっており、追加の質問や状況の確認など、必要に応じてコミュニケーションをとれるようにしているそうです。モデレータは、テストを進行しながら、ノートもとって、観察者ともキーボードを介して会話をするということです。しかも車の中で。めちゃくちゃ大変そうですね…。

ネットワークが途中で切れてしまうようなアクシデントもないわけではないけれど、臨場感たっぷりにテストを観察できて、クライアントは大満足だったそうです。ドライビング・コンテクストのリサーチの場合、一台の車に乗れる人数は限られてきますから、クライアントがわざわざ現場へ行っても、何も見られないのが実情です。であれば、オフィスに居ながら観察できるようにするのがもっとも費用対効果が高いですよね。クライアントはドイツの会社だったので、時差の問題も経験済み。車のリサーチではないですが、同時通訳をかました経験もあるそうです。

リサーチ結果のレポートもしっかりしていて、安心して任せられそうな感じでした。テスト中に撮影した動画や写真はFlickrを使って共有できるようにし、タグクラウドを作成して、検索も容易にできるようにしていました。リサーチの準備から、レポーティングまで手抜きなしで、臨機応変。一緒に仕事をしてみたくなりました、正直な話。

さて、最後は気になるお金の話。基本的にはものすごい明朗会計。時間ベースの工数計算をして、作業内容に応じて170ドル〜300ドルの時間給を掛け合わせた合計が費用になります。計算に使うExcel表もウェブサイトで公表しているので、予算内で収まるよう、依頼内容を調整したりすることもできそうです。ドライビング・コンテクストのリサーチにかかった費用はというと、具体的な数値をここに記すことは控えますが、少し高いかな…という印象でした。でも、クライアントが現地へ赴く費用を一切必要としない点を差し引きすれば、十分納得のいく数字ではないかと思います。

ご興味のある方は、Bolt|Petersのウェブサイトご覧になってみてください。