CHIの発表オスソワケ
2009年04月18日(土) 05:21
UXいろいろ, アメリカ縦横無尽, イベントの話, ボストンボストン観光の話ばかりに夢中で、CHIの話をほとんど書いていませんでした…。
思い出せなくなる前に、聞いた発表の中で面白かったモノを3つほどご紹介します。
▼A Survey of Software Learnability: Metrics, Methodologies and Guidelines
by Tovi Grossman (Autodesk Research)他
ユーザビリティの一要素である学習容易性を特に検証したい、学習の阻害要因となっているユーザビリティ上の問題を抽出したい、というときには、Think-aloud protocol(被験者に頭の中で考えていること、感じていること言語化してもらうことで問題点を抽出していく手法)よりも、Question-suggestion protocolという著者らの提唱する手法を使ったほうが有効な場合がありそうだ、という研究発表。ソフトウェアを評価対象として、被験者10名ほどで実験を行った結果に過ぎないので、Question-suggestion protocolの方が確実に有効だと言い切れないところは痛いけれど、Think-aloudにも、Question-suggestionにもそれぞれ長短があるということを認めた上で、状況に応じてはQuestion-suggestion protocolの方が効果が高くなり得るとして発表している真摯な姿勢を評価(笑)。
具体的には、評価機を熟知したエキスパートユーザ1人が被験者とともに実験室に入り、被験者がタスクを実行している様子を観察しながら、タスクの遂行に迷ったり、困ったりしたときにsuggestion(提案)を与えたり、被験者から出た質問にただ答えるのではなく、より効率的な方法を示唆したりする形でテストを進めるというのがQuestion-suggestion protocolです。
エキスパートユーザがモデレータまで担うのは無理なので、与えられたタスクを一定時間内で、できるだけ最後まで達成できるように被験者に頑張ってもらうことが前提となり、タスクをそもそも自力で達成できるかどうか、それにどのくらいの時間を要するかという辺りの評価を諦めなければならないのがこの手法の最大の短所。一方で、Think-aloudを使ったときの2倍〜3倍の学習阻害要因を抽出することができるというのが一番の売りということでした(写真[1])。学習容易性の評価に特に注力したいという仕事が来たら、それこそ提案してみると面白いかもしれないです。
▼Beyond Usability: Evaluating Emotional Response as an Integral Part of the User Experience
by Anshu Agarwal (Salesforce.com)他
タスクにはものすご〜く苦労した被験者が、終わってインタビューしてみると、「分かりやすかった」とか、「特に直して欲しいところはない」とか(おそらく)真意に反してポジティブに製品を評価してしまうこと、少なからずあると思います。でも、タスクの様子をしっかり観察していた実験者としてはその言葉を鵜呑みにすることはできない。かといって、ユーザによる評価を変えたり、削ったりすることもできない。そこで、被験者のEmotion(気持ち、感情)をもう少し正確に拾うための手法としてEmocards(エモカード)の利用を提案するのがこちらの発表です。
各タスクの後に、16枚のエモカードを被験者に見せ、今の自分の気持ちにもっとも近い表情を選んでもらいます。テスト終了後、感情の強さを縦軸に、喜怒を横軸にとったチャート(写真[2])に結果を照合し、タスクそのものの結果とあわせて検証するというのが骨子。特に2〜3機種の比較評価をするときなどに採用すると、タスク結果(達成度や達成時間)に差が出ていないのに、気持ちの面には微妙な差が現れたりして面白いのだそうです。
費用も時間もさほどかからないので、既存のユーザビリティ・テストに追加する形で試してみると面白いのではないでしょうか? ちなみにエモカードは、オランダはデルフト大学のPieter Desmetという方がオリジナルのようです。
▼Perspective Probe: many Parts Add Up to a Whole Perspective
by Marianne Berkovich (Google)
Googleが、Google Financeというサービスを立ち上げるにあたって過去に実施したリサーチの手法を紹介してくれたのがこの発表です(写真[3])。
スライドは後でダウンロードできるというのであまり写真やメモをとらなかったのだけど、指定のURLへ行っても何もない…。ちょっとショックです。ということで、具体的な内容はあまり伝えられませんが、この発表を聞いて感じたのは、リサーチを設計するときに、どうすれば協力してくれるユーザに”楽しく”参加してもらえるかをかなり考えているということ。日本の会社だと、○○の一つ覚えみたいに”インタビュー”となるところを、Googleには、自分たちもユーザも楽しみながらイイ結果を出せるようにするにはどうしたらイイかを常に考える文化みたいなのがあるのでしょうかね。ちょっと羨ましいです。
San JoseにあるA社なんかも、独特の楽しいリサーチをよくしているし、日本でも少し見習いたいものですが、下請けどころか孫請けでしか仕事をできないフリーのユーザビリティ屋には、なかなか難しいハードルです(笑)。
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たった3つじゃ、参加費の元はとれていないような気がするけど、ボストン楽しかったのでよしとしましょう。次の学会は、4月末のサンフランシスコ。早起きして通います。