IA Summitで気づいたこと

2009年03月25日(水) 06:52

UXいろいろ, アメリカ縦横無尽, イベントの話, メンフィス

昨年の9月にアムステルダムで「Euro IA Summit」というのに参加しましたが、それはあくまでも支流。今回、アメリカはメンフィスで本流のIA Summitが開かれるというので行ってきました。

 

[1] ポスター発表の様子 [2] アフタヌーンティーの様子 [3] 一番おもしろかったプレゼン

Euro IAでの発表はどれもこれもWeb絡みで、IAの人たちが言うユーザ・エクスペリエンス(以下UX、またはエクスペリエンス)ってWebのエクスペリエンスに偏っているんだ!と思わざるを得ませんでしたが、今回、IA Summitに参加してその見方は少し変わりました。やっぱり、もっと広義にUXを捉えようという動きが出始めているようです。

クロージングのスピーカーJesse James Garrett(以下JJ)が会場に問いました。


“Digital mediaのIAに携わっている人は手をあげて!”

大多数の人が手をあげます。

“この中で、Digital media以外のIAにも携わっている人は?”

かなり手がさがりましたが、まだかなりの数の手があがっています。

“思ったより多かった…”とJJ。

“でも、ならばどうして、IA Summitの発表がいまだにWebの話ばかりなんだ?”


思わず「そうだ、そうだぁ〜」と言ってしまいそうになりましたが、ゴクリと飲み込んでニヤリ。なんだ、私が感じていたこと、けっこう的を射ていたんじゃん。Webだけ見ていたのでは今後のUXは語っていけないだろうし、語れなくなるはず。もっとWebというメディアに偏らず、人やエクスペリエンスを観ていきましょう。そのためには、もっと交わらなければダメ。IAが集まって語らう場所も必要だけど、デザインや開発を担う人たちとも交流していきましょう! なんてことを熱く語り、拍手喝采を浴びていました。来年のIA Summitでは、Web関連以外の発表が増えるかな? (そんなすぐには変わらないか?)

それからもう一つ。発表を聞いていて、Usability Professionals’ Association(以下UPA)とは違うなぁ、と思ったところがありました。

“自分の直感を信じろ”とか、“ユーザのニーズに応えるばかりではなく、ユーザのニーズを作り出してしまおう”とか、“ユーザの意見を聞いて作るばかりではブレークスルーはない。勇気を出して新しいことに挑戦しよう”とか、UPAではなかなか聞かないフレーズを発表の中で幾度となく耳にしました。私のような調査専門のユーザビリティ屋は、ユーザの声や気持ちを開発現場に届けること、ユーザと開発者やデザイナーとの橋渡し的な役割を担うことが仕事ですから、開発者やデザイナーさんに対して、「直感を信じて、自分の思ったように作ってみてください」なんて言葉をかけることは皆無に等しい。そんなこと言ったら、「今回の調査、いらなかったですね…」ってなって、仕事が減るじゃん(笑)。

でも、デザイナーさんや開発者が思い描いていて、しかしまだ形になっていない漠然としたアイデアのようなものが、ユーザの内に潜む、やっぱり漠然としていて表に出てこない心理や真理にマッチするかどうかを探るような調査が今後は求められていくということなのかもしれません。特に、インターフェイスだけを見るのではなく、エクスペリエンスを大きく広く捉えていくことがJJの言うように今後必要になるのだとしたら、今までのやり方では足りなくなっていくのかも…。

なんてことに気づかせてくれるイイ学会でした。開催地がメンフィスっていうのがイマイチでしたけど(笑)。

ちなみに写真は左から、ポスター発表の様子、アフタヌーンティーの様子、一番おもしろかったプレゼンの表紙(黒い人影は発表者)。プログラムを見て、具体的にどんな発表だったか聞きたい!みたいな要望があればご連絡ください。私が聞いたものであればお応えできると思います。