2025年2月の読書記録

2025年03月11日(火) 13:14

本&映画の紹介

2月は28日しかなかったけれど、仕事もなかったので笑、もりもり読みましたー。

小説が5冊と多めになってしまったのは、月末に読み(聴き)始めた『存在のすべてを』が止まらなくなって、2月中に読了してしまったから。恩田陸、司馬遼太郎、伊坂幸太郎、そして塩田武士と、ハズレるはずのないラインナップ。恩田陸祭りを開催しようかと思っていたけれど、信頼してる著者を毎月ひとりずつ選んで読んで(聴いて)いこうと、なんとなく決まりました。

ものづくり界隈の人には『スマートシティとキノコとブッダ 人間中心「ではない」デザインの思考法』と『これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話: イノベーションとジェンダー』はぜひ読んでほしい。ジェンダー観を改める必要性があること、人間のことばかり考えていられないこと、しっかり考えていかないと。 



読んだ本の数:14
読んだページ数:4949
ナイス数:167

上と外上と外
二度目の『ユージニア』から、恩田陸まつりを開催するかどうか検討すべく『上と外』を読んでみたら面白過ぎて止まらなかったわー。しかし、ヘリから子ども二人を落っことしておいて放置とか、無血クーデターを企んでるのにおかしくないか?みたいな細かいことは気にせずに練と千華子の冒険を追うべし。焦点や話者が動くときにも改行のみで境目がぼんやりしているから、話を追いかけるのに夢中にならざるを得ないというつくり。親も子もなにも諦めない。ぶっとい精神力を持った家族の物語でした。次はどの恩田陸を読もうかな…。
読了日:02月01日 著者:恩田 陸

スマートシティとキノコとブッダ 人間中心「ではない」デザインの思考法スマートシティとキノコとブッダ 人間中心「ではない」デザインの思考法
新しい技術が急速に発展し、人間を助けたり脅かしたり。そんな不確実性の高い時代を生きていかざるを得ない今とこれから、多くの矛盾や不便を受け入れながら自然や地球に感謝し、無分別智による創造性を発揮して人間だけを中心に据えた考え方や価値観や生き方から脱していくための方法とその必要性を超真剣に考える書。さまざまな分野のエキスパートと対話することで開眼していく著者たちの思考をたどる構成。随所で紹介される参考書籍。デザインの思考法#11の「5年寝かそう」をやってみようかなっと。勉強になりました。
読了日:02月02日 著者:中西泰人,本江正茂,石川初

50歳になりまして50歳になりまして
50歳になって気づくことや感じることがマジたくさんある。世の女性たちはどんなかな?と思い、どストライクなタイトルのこちらを読んでみたら、脱毛とか、歯列矯正とか、やっぱりね!感のある話題がずらずらと出てきました笑。体重ふえるのも更年期障害なのか……。みんなが通る道なんだなー。そして著者は留学へと進むわけだが、本書はコロナで足踏みさせられてる間のお話いろいろ。妹さん宅での居候生活とか、かなり面白い。清水ミチコさんと友だちってかなり羨ましい。カナダで伸び伸び生きた後、どうするんだろ?そっちの進路が気になる。
読了日:02月06日 著者:光浦 靖子

おかげで、死ぬのが楽しみになったおかげで、死ぬのが楽しみになった
Audibleにて。ジョギングしながら聴くのに程よい物語だった。かなりの頻度で登場するオヤジギャグで吹き出しちゃっても大丈夫。もっとも脳裏に焼き付いたのは「ジビョハラ」と「シャザイニング」かなー笑。昔話のできる仲間がいるって素晴らしいね。わたしも、あの連中とのつながりを大事にしよう!って思わせてもらいました。死ぬことは楽しみにならなかったけど、歳をとることは怖くなくなったかな。なんか最近、エイジングとか介護とか終活とかに関連する本ばっかり手に取っちゃって、まるで病んでるようだけど元気です笑。
読了日:02月09日 著者:遠未真幸

北条氏と三浦氏北条氏と三浦氏
金沢文庫で購入。『吾妻鏡』は北条寄せの記述ばかりだから信用できないってのは当然として、その他の原資料と照合し、日時や天候の記載があれば信じるに足ると判断するという研究手順を踏んだ結果、北条氏と三浦氏は最後までまあまあ仲良く幕府を支えてきたと言えそうだと。三浦が世代交代を受け入れた結果の宝治合戦。なるほどですわ。鎌倉時代を伝える資料が少ないからこそ、いろいろ研究のし甲斐もあるのでしょうね。研究結果を読ませていただきながら、引き続き金沢暮らしを楽しみたい。
読了日:02月10日 著者:高橋 秀樹

ケアマネジャーはらはら日記ケアマネジャーはらはら日記
Audibleにて。この職に就こうとする人は基本的に善人だと思う。他人のために自分の時間や気持ちを差し出せる人。著者はそれを地で行ける人。でも、それ一辺倒で鳥瞰的に状況を見られないとビジネスが成り立たなくなるから後半に出てきた包括支援センターの若手たちがパワハラまがいの態度に出てしまう気持ちもわからなくはない。そういう彼らもすでに病んでいるのではないかと思うし。自分を含む読者のほぼすべてが直接間接的にケアマネのお世話になる日が来る。当たりはずれがあって良い仕事じゃないぞと。国がなんとかしてくれ。
読了日:02月13日 著者:岸山真理子

梟の城梟の城
月一ノルマ小説2冊目。歴史に刻み込まれた大将軍たちの陰で密かに大役を果たした人たちの物語。『塞王の楯』からの良い流れ。いやしかし、これがデビュー作というから度肝を抜かれる。「女」を分解して「くノ一」みたいな日本の文化や歴史の雑学をシレっと文中に差し込んでくれているので小説を楽しみながらも勉強になってしまう。優秀なくノ一を愛しつつも利用する乱破。利用されていると分かっていながら離れられないくノ一。なにげにジェンダー問題の根っこも考えさせられる物語だった。そしてまさかのハッピーエンド。
読了日:02月15日 著者:司馬 遼太郎

これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話: イノベーションとジェンダーこれまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話: イノベーションとジェンダー
「ガールイヤー」なる単位をご存知ですか? 「母なる自然」という表現に違和感を覚えたことは? 女が薬を調合すれば魔女、男がやれば錬金術師。女性の秀でた部分は「生まれ持っての特性」で能力がなくてもできる仕事。だから賃金は安くて良い。育児や介護は女子の仕事となんとなく誰もが抵抗なく思ってしまう風潮はおかしいのだぞ!と「男性は女性を従えるための存在」とするジェンダー観のままに「母なる地球」を単なるエネルギー容器とする価値観で捉えてこれまで同様にイノベーションを進めるわけにはいかない。かなりの良書。
読了日:02月16日 著者:カトリーン・キラス゠マルサル

赤と青のガウン オックスフォード留学記赤と青のガウン オックスフォード留学記
Audibleにて。皇室の方々がなぜオックスフォードに留学するのかがわかった。日本の皇室並みの貴族と接して生きてきた人たちが教員や学友になるからだ。プリンセスを特別視せず自然体で接してくれる。陰に日向に支える存在はあっただろうし、皇室からの留学生だからということで特別だったシーンもたくさんある。わたしのNZ留学と比べたらはっきり言って雲泥の差だが笑、プリンセスだからこそ粗相の出来ない、途中で投げ出すことが許されない、うっかり羽目を外せないといったストレスもあったに違いない。お疲れさまでした。
読了日:02月20日 著者:彬子女王

自分とか、ないから。教養としての東洋哲学自分とか、ないから。教養としての東洋哲学
350ページを超える大作ですが、文字数はめっちゃ少ないです笑。東洋哲学をこんなにもかんたんに書けてしまうのか!というほうに驚く。かなりわかりやすいです。でも、わかったつもりになって終わりそうなのがちょっとコワイかも。世の中に生きにくさや居場所のなさを感じていて「自分探しの旅に出よう!」と思っている若者に、あくまでも導入として概要を伝えるための本と割り切ってみれば良書だと思う。ってか、近頃の若者も「自分探しの旅」に出るのかな? インドで価値観を揺すぶられてきたりするのかな?
読了日:02月23日 著者:しんめいP

認知症になっても自分の財産を守る方法 法定後見制度のトラブルに巻き込まれないために!認知症になっても自分の財産を守る方法 法定後見制度のトラブルに巻き込まれないために!
親のために手続きが必要か?と思っていたので読んでみたら、とんでもない話でしたー。法定後見は100%ダメ。任意後見を使うなら「監督人」オプションを絶対に外すこと。外せないなら任意後見もダメ。弁護士や司法書士などの後光効果に負けないこと。利用者の立場を慮って良い仕事をしてくれると闇雲に信じるのは危険。行政も侮るなかれ。なんというか、親のことよりも、自分の老後のほうが心配になったぞ。認知症にならないように気を付けるのが一番という結論なわけだが、どうやって?
読了日:02月25日 著者:宮内 康二

逆ソクラテス逆ソクラテス
Audibleにて。子ども達がハッとさせてくれる物語たち。伊坂幸太郎さんの小説は殺人だらけ…という印象でしかなかったので笑、こんな柔らかくてあたたかいストーリーでほっこりさせてくれることもあるのだという良い驚きでした。大人の背中を見て育つ子ども達。悪い背中しか見せない親もいて残念だけれど、著者の恩師の名前で登場する教師など、子ども達の感受性に寄り添って良い方向へ育てようと努力してくれる専門家の存在に救われるし、自分も何度も救われたんだろうな(おぼろげな記憶…笑)などと過去に想いを馳せてみたりして。
読了日:02月26日 著者:伊坂 幸太郎

旅行業界ぶっちゃけ話 日雇い添乗員が見た懲りない人々旅行業界ぶっちゃけ話 日雇い添乗員が見た懲りない人々
『介護ヘルパーごたごた日記』が良本だったので、同シリーズの添乗員バージョンを書いた人ものということで読んでみたが、これは駄作だった。仕事や業界に対する愛がまったく感じられない。しかもたいしたぶっちゃけではなくてどれも想像の範囲内。井の中の蛙だー。介護ヘルパーもケアマネジャーも、他者のために奮闘する様子や理不尽と向き合う真摯な態度に共感できたし、読んだ若者がその仕事を目指すときの教訓めいた記述もあったように思うけれど、これにはほぼない。まぁ、非正規雇用を目指すべからず!という反面教師と思えば良いのか…。
読了日:02月27日 著者:梅村 達

存在のすべてを存在のすべてを
Audibleにて。1.7倍で聞いても3日くらいかかる分量だったけど、後半は寸暇を惜しまず聴き続けた。事件から3年後の別れの日。「このまま一緒にいたい」という子どもの台詞で涙腺崩壊しましたー。母子を守るために姿を消した育ての父。誘拐犯である実の兄と刺し違えるくらいのことをしてくれていそうだけれど、そこをはっきりさせないままの幕引き。絵を描きながら父との再会を待つ子と、傍らで生活を支える母との日常が美しくて穏やかで、せめて母子だけでも幸せに着地してくれてよかったと。生みの親より育ての親。
読了日:02月28日 著者:塩田 武士