2023年4月の読書記録
2023年05月09日(火) 16:07
本&映画の紹介4月も短かったっけ?と、同じ言い訳をくり返しそうになるくらい、3ヶ月連続のギリギリ2桁です。
しかも、10冊中3冊は小説。しかし、小説はハズレなしに面白かった。上橋菜穂子に司馬遼太郎だもの、ハズレるわけないか。そんなことより、今年のノルマ小説を積読にしたまま、『義経』とか読んじゃって、面白すぎてもう大変。司馬遼太郎がスゴイのか、義経の人生がスゴイのか。
読書が意外と進んでいないのは、2月からずっと校正仕事をしていたからなんだな、きっと。校正しながら活字を眺めていると疲れちゃって、他の本を読みたくなくなる。そしてそこにタイポがあったりすると気になっちゃって気になっちゃって笑。だから、絶対にタイポがないであろう優秀な小説(しっかり校正が入っていると思われるから)を選ぶというのは理にかなった行動選択だったのであろう。ということで。
読んだ本の数:10
読んだページ数:3284
ナイス数:96
ずこうことばでかんがえる[新装版]
自由にものづくりに挑むべし。まちがいは何一つないし、気に入らなければやり直せば良いし、しかし意外と最初のトライがいちばん良かったりすることも多いし、でもそれは何度もやってみたから気づくことだし、自分の気持ちや感性を大事にして、とにかく手を動かしてみること! 子どものころには無意識に、無邪気にできていたことが、年齢を重ねるにつれてだんだんとできなくなる。それは自分で狭めてしまっているだけで図工の時間の気持ちを思い出せばできるよ!と教えてくれる、子ども向けと見せかけて実は大人に語りかけているにちがいない一冊。
読了日:04月03日 著者:きだにやすのり
香君 上 西から来た少女
植物が放つ香りを捉えられてしまうというのは、実際にはかなり生きにくいのではなかろうか。植物に触れたり接したりした人間のニオイもわかってしまうわけだし、オッサン臭とかも混じって笑、毎日がすごく臭そう……。と、そんな余談はさておき、上橋菜穂子が描く新たな世界は、嘘で塗り固められた稲の秘密(どんな秘密かまだわからんが)、単一種に依存することの危うさ、それに気づき鳥瞰して対策を講じようとする頭脳を切り捨てる庶民の愚、叶わぬ恋の橋渡しをする鳩などいつもどおり盛りだくさんです。間髪入れずに次巻へいきます。
読了日:04月04日 著者:上橋 菜穂子
プロダクトリサーチ・ルールズ 製品開発を成功させるリサーチと9つのルール
タイトルを読んで「また新語だ…」とか思ったけれど、内容はほとんど「ユーザーリサーチ」の話でした。プロダクトデザインチームが、リサーチャー任せにせず自分たちでユーザーリサーチをすべきだという主張とそのためのノウハウが良い感じにまとまっています。リサーチの結果を分析して次へつなげていくこと、リサーチをし続ける文化を醸成することなどにも注目していて良い。たしかにこれからは「写真も名前もないペルソナ」が必要になっていくかもね。しかし、終始「深堀り」と誤字を連発していたところは残念でした笑。
読了日:04月09日 著者:アラス・ビルゲン,C.トッド・ロンバード,マイケル・コナーズ
香君 下 遥かな道
ただ嗅覚が良いだけではなく、植物が香りを通じて放つ想いが「言葉」になって聞こえてくるということか。上巻ではそこまで理解できていなかったな…。根を通じて植物同士は助け合い、香りを放って昆虫を呼び自らの生存を託す。その自然界の営みの奥深さとそこにエゴ全開でかかわる人間の罪深さみたいなものを壮大なスケールで伝えてくれる物語でした。オリエとマシュウが夫婦になってお散歩できる日が来て良かった。初代香君やアイシャの生い立ちもうっすら見えてきて見事な回収でした。弟はどこいった?というのだけが気がかり。続編か?
読了日:04月13日 著者:上橋 菜穂子
校正のこころ 増補改訂第二版: 積極的受け身のすすめ
著者のもとを離れた言葉のもつ自律性を汲み取り、読者がどう受け止めるかを考え、理想的なかたちの高みへ言葉自体がもつ力を引き出そうとするのが校正の仕事。言葉や文字と徹底的に向き合う大変な仕事。それなのに「ネガティブな減点法」で評価されるとは切ない。『校閲ガール』のブレイクで、誤字脱字や表記揺れをチェックする形式的な仕事が校正であり「校閲のほうが上」という誤解が生まれてしまったというのも悲劇。校正さん達の影なる努力のおかげでわれわれ読者は物語の世界へ没入できるということを心の片隅に置いて、読書を楽しもう。
読了日:04月17日 著者:大西 寿男
はじめての統計学 レジの行列が早く進むのは、どっち!?
子どもの頃、算数や数学が好きだった。いや、計算が好きだったというのが正確か。しかし確率や統計でコケた笑。数学の中でももっとも生活に役立つ部分だったのにー。という後悔を引きずっている大人に向けた統計学の入門書。大数の法則から標準偏差あたりまではスルスルと読み、後半のベイズ統計学とプロスペクト理論でスローダウン。しかし身近な話題に照らして説明してくれるのでわかりやすい。日立のAI対マーケの事例には興味津々ですぞ。総じておもしろかった。賢い消費者でありたい。
読了日:04月19日 著者:サトウマイ
人間中心設計入門 (HCDライブラリー)
誤字脱字や表記揺れなどをチェックしながらの再読。改めて、内容はとても良い。入門編としては理想的な網羅性。しかしやはり編集や校正が入ったとは思えない揺れっぷりと脱字っぷりで、ペーパーピロトタイプのあたりで吹き出してしまった笑。界隈の本で頻出する誤字のトップ3は「仮説」が「仮設」に、「深掘り」が「深堀」に、「ユーザビリティ」が「ユーザービリティ」になっているといったあたりで、本書でもしっかり網羅されていました。そういう意味でも網羅的(失礼っ)。修正され、改訂されることを切に願っております。
読了日:04月21日 著者:山崎 和彦,松原 幸行,竹内 公啓
新装版 義経 (上)
『ギケイキ』を一層楽しむために、松山旅行に絡めて司馬遼太郎の『義経』を手にしてみたら、面白すぎてドはまり。愛を知らないまま純粋に父の仇討ちを目指す義経と不合理な公家支配の律令国家から独立するため、冷静に時宜を得た判断を下そうと心がける頼朝。後ろ盾する北条政子が怖すぎるとか、叔父行家がアホすぎるとか、弁慶と梶原の出番が案外すくないとか、終始義経目線の『ギケイキ』であまり触れられない部分が丁寧に語られていてほんとうに面白い。そして、日本史全般苦手だけれど、源平合戦の頃の知識皆無に近いことを自覚した笑。
読了日:04月23日 著者:司馬 遼太郎
英文法は絵に描きやすいルールでできている
「YOUは何しに日本へ?」の英語タイトルはやっぱりおかしいよね。明言は避けてるが。それはさておき総論は、日本語はプロセス重視で英語はゴール重視。誰がどこを向いてなに(どこ)を基準に喋っているかを踏まえるとわかりやすくなるという話。「学校で習ったこの話は一度忘れてください」という前フリがけっこう出てくる。学校での教え方をちょっと(いや、かなりか?)修正すれば英語への抵抗感を薄められそうだけどなかなかむずかしいですね。全般的に「絵に描く」というよりも「まずイメージを掴む」ことが推奨されているのだと思う。
読了日:04月25日 著者:オールライト千栄美
医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者
医療従事者が行動経済学の視点を持って患者に対峙することの必要性と重要性を説く一冊。人間は参照点を基準に物事の判断をしてしまう生き物であること、どんなときにどの方向にどのくらい振れるのかを知るためにプロスペクト理論を理解すべきこと、行動変容を促すにはナッジ(ちょっと小突く)が、フレーミングを踏まえたナッジこそが有効だということ、そしてなによりも、こうした認知バイアスの影響を受けるのが患者のみならず、医療従事者も同じ人間で同じように歪んだ意思決定をしがちであることなどがわかりやすくまとまっていました。
読了日:04月27日 著者:大竹 文雄,平井 啓