隣町のMalmö（マルメ）はスウェーデン第三の人口を誇る都市で、博物館や美術館がたくさんあります。しかし、なにを隠そうひとつも行ったことがなかったので、とりあえず「Disgusting Food Museum（以下ゲテモノ食の博物館）」へ行ってみることにしました。一番に行くのがこのチョイスってすこし頭悪いっぽいですけども笑。

「Disgusting Food」は「吐き気をもよおす気色悪い食べ物」のことです。入場料185SEK（約2,360円）を払うと、入場券の代わりに「ゲロ袋」をくれます[1]。そして、開館以来まあまあの人数がリアルに吐いちゃってますという表示[2]もありました。カウントされないように慎重に見て回ろう笑。

[1] 入口で渡されるゲロ袋	[2] 吐いちゃう人いるっぽい	[3] 博物館のコンセプト

Lagom（ラーゴム）を美徳とする国に、ゲテモノ食の博物館があるのは、なにげにしっくり来ます。Lagomは「多すぎず少なすぎず程よい塩梅」のような意味で、スウェーデン人は何ごとに対しても過度に無理はせず自分にとっての程よい塩梅で上手に生活していくことが幸せの秘訣だと考えるようです。Lagomを考えるときに大事なのは「自分にとっての」程よい塩梅というところで、塩梅は人によってちがうのがあたり前です。ゲテモノ食も同じで、なにをゲテモノと感じるかは人それぞれ。

日本で生活をしたことのあるスウェーデン人も納豆（↑右）を積極的に食べようとはしませんが、私からすると鼻がひん曲がるのではないかと思うくらいに臭い塩漬けニシンの缶詰（↑左）「Surströmming（シュールストレミング）」は平気で食べられる。これはもうお互いに「子どもの頃から慣れ親しんだ味」かどうかですよね。

「フォアグラ」をつくるために、ガチョウにチューブで強制的に給餌しているえげつない映像が流れていて顔をしかめましたが、活き造りのお刺身の映像を見たときには「美味しそう」と思ってしまった……。塩味リコリス（↓左）は結局飲み込めなかったけれど、わさび味のKitKat（↓右）はふつうに美味しそうだな～とか思う。いろいろ刷り込まれていることを自覚しました。

ゲテモノかどうかの判断は時代によっても変わります。ロブスターは、日本で言うなら伊勢海老みたいなもの。最近では高級食材として世界中で食べられていますが、1600年代、ヨーロッパ人が新大陸への移住に忙しかった頃は超安物のマズイ食材とされていて、釣りの餌にするか奴隷や囚人の食事に使われていたそうです。マサチューセッツ州では囚人食としての利用を週に1回までに制限する法律があったらしい。そうしないと毎日そのゲテモノ（ロブスター）を囚人に食べさせるようなお粗末な事態になりかねなかったから。今なら、そんな獄中食を求めて悪さをする人が現れるかもしれないくらいの豪華な食事です。

これからの時代、今の食生活をし続けるのは難しくなると言われています。昆虫食や人工培養肉など代替タンパク質の研究が盛んに行われていますが、ゲテモノ食の博物館にもたくさんの昆虫がいました。最後に味見をした旦那曰く「香ばしい小エビ」みたいな味だったそうです。エビを食べられるなら、この虫もきっと食べられる……日がくるたぶん。

ゲテモノの写真をたくさん撮ったのですが、改めて見るとかなりえげつないモノばかりなので自粛します。WebサイトやInstagramに写真があるので、興味のある人はそちらでどうぞ。