2019年9月の読書記録
2019年10月02日(水) 18:26
本&映画の紹介9月は書くほうの進捗がイマイチだったので、読むほうは二桁ギリギリ作戦。
『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』をずっと読みたいと思っていたけどなんとなく重たそうで躊躇し続けて5年くらいたってからのやっと読了ですが、思いのほかすんなり読めるスゴイ本でした。ユーザーなんちゃらに関わるお仕事の人はぜひ。
小説は藤原伊織祭りが始まりました。おもしろいよー。しかしロンドンで藤原伊織本が在庫切れになったので浮気して前に買ってあった木内一裕さんの『藁の楯』を読んだら、負けず劣らずおもしろかったので、次は木内一裕祭りにしよう!ってことになりました。とりあえず清丸はクズ過ぎた。
読んだ本の数:10
読んだページ数:2790
ナイス数:76
テロリストのパラソル
藤原伊織祭りをどのくらいデカくしたいかを自分に問うためのチョイス。全共闘時代に青春真っ只中だった3人の物語。と書いてしまうといろいろネタバレですが、青春時代の嫉妬を抱えたまま大人になるとこじれるのはどの時代も同じなのかな。それにしても、ヤクザ屋さんを良い人に描きがちな著者ですな。良いヤクザは存在しなくても、心根の優しいヤクザというのは存在するということなのだろう、たぶん。そして、ヤクザじゃなくても逃げ続ける人生はおそらく想像を絶する過酷さだろう、たぶん。想像しにくい世界の連続にドキドキしました。
読了日:09月04日 著者:藤原 伊織
藁の楯
本当に本物の、救いようのないクズなのかどうかを判断するのはむずかしい。読者には、清丸がクズ以外の何者でもないことが早い段階で示されるけど、たまたま居合わせた不良少年たちも、まさかの奥村も、自分が人殺しになるか否かの境界に立ったときに、判断できずに後手に回るのがまともな人間だと思う。銘苅も結局ズルズルしたし。そして大切な相棒と愛することになったかもしれない人を失うなんて悲しすぎる。こういう理不尽な職務に苦しんでいる人って、たくさんいるんだろうな……。
読了日:09月07日 著者:木内 一裕
影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか
私たち人間が、お返しをせずにはいられないこと(返報性)、筋の通った人間として見られるように行動してしまうこと(一貫性)、周囲からの影響を無視できないこと(社会的証明)、印象操作に簡単に屈すること(好意・権威)、機会を失いかけるとしがみつきたくなる習性を持っていること(希少性)をガッツリ教えてくれる最高のテキストでした。紹介されている研究がほとんど既知だったので大昔に読んだのかもしれないけれど、何度目だろうとかなり勉強になることを確認しました。初版は1991年。約30年前からヒトは変わってない。
読了日:09月10日 著者:ロバート・B・チャルディーニ
東京プリズン
コレはムズカシカッタ。主人公が途中で指摘するとおり、日本の近代史は学校でほぼ触れられることなく終わるように……なっているのかどうかは知らないけれど、実際に明治維新のあと近代化を進めて、勢い余って戦争……みたいなところで中学も高校も終わった記憶がある。だから、この小説を読んで新たに知ったこともあった……というのは大人としてカミングアウトするのがかなり恥ずかしいけど書いてしまう。異国に放り込まれた女子高生が、国を代表するかのごとくの立ち位置でディベートに立ち向かう様には教わることがたくさんありました。
読了日:09月14日 著者:赤坂 真理
Lilla syster Kanin och alla hennes vänner
スウェーデン語の絵本。古典というほど古くはないようだけど、子どもたちに人気のシリーズっぽい。アニメにもなっているし、実写化もされている様子。主人公のウサギちゃんのお友達にカエル君がいて、そのイラストが可愛かったという変な理由で購入。動物の名前はスウェーデン語でもだいたいわかるようになりました(イラストもあるし笑)。動詞の語彙が足りなくてストーリを追うのはまだ少しキツイ感じ。得意なことや好きなことがバラバラな動物たちが一緒になにかして遊ぶなら読書だねってことに落ち着く物語。
読了日:09月20日 著者:Ulf Nilsson, Eva Eriksson
動物学者が死ぬほど向き合った「死」の話 ──生き物たちの終末と進化の科学
まさかのジャケ買い笑。王冠をかぶったカエルちゃんがとても可愛かったのだ。しかし中身は「死」について。なかなか乗り気になれなかったが、“フロッグ・ヘルプライン”なる電話相談サービスの話がはじまった7章からエンジンかかりました。カエル相談窓口。そんなんニーズあるの?と思いきや、めっちゃあったっぽいぞ笑。とりあえずカエルの破裂死の謎が解けて満足。絶滅も誕生も生命の歴史には必要不可欠なことであって「ヒトが因子になってなぜ悪い?」の一言にちょっと痺れました。怒る人たくさんいそうだけど、わたしは共感しちゃう。
読了日:09月21日 著者:ジュールズ・ハワード
岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。
穏やかな人格者。妥協をしないプロフェッショナル。極上のメタ認知保持者。良いお父さん。そして、同郷の偉人。南高のご出身だったのですかー。岩田さんが見つけた“天才の定義”に、首がもげるのではないかと思うほど頷いた。そして、ご本人はきっと否定するのだろうけど、岩田さん自身がやはり天才なのだと思った。ものづくりの流儀や極意、人付きあいや人を育てることの意味と価値、そして楽しむことの大切さなどなど、岩田さんが残したたくさんのキラキラが凝縮された一冊でした。
読了日:09月22日 著者:ほぼ日刊イトイ新聞
Made in Sweden: 25 Ideas That Created A Country
これはとても勉強になる一冊でした。スウェーデン人がどうやって今のスウェーデン人になったかを紐解いてくれました。出典も添えられているのでかなり信用できる。男女平等をはじめとする公平性、高い社会福祉、子どもの人権保護、家で靴を脱ぐ習慣、個人認証番号などなど、スウェーデン自慢の考え方や社会政策が、近代になって確立したものであることとその経緯が簡潔にまとまっていました。コレまで読んだスウェーデン関連本の中でいちばん勉強になったし、ぜったいに再読する宣言。
読了日:09月23日 著者:Elisabeth Åsbrink
私がオバさんになったよ
著者がしゃべり過ぎだぞ……と前半ですこし思ったのだけど、インタビューじゃなくて対談なんだから良いんだコレで!と思い直して気楽に読んだけど、著者が良い家のお嬢さんだった事実を知り、逆にモヤモヤが増えた。ただのジェラシーだけど笑。その劣等感に自ら追い打ちをかけるべく山内マリコさんの『あの子は貴族』を読むこと決定。酒井順子さんが「介護にしか見えなかった」と言ったくだりがいちばん吹いたかな。40歳をすぎた悩み多きオバさんたち(2人オジさん)にいろいろ共感できてなかなかの時間つぶしになりました。
読了日:09月25日 著者:ジェーン・スー,光浦 靖子,山内 マリコ,中野 信子,田中 俊之,海野 つなみ,宇多丸,酒井 順子,能町 みね子
Greta’s Story: The Schoolgirl Who Went on Strike to Save the Planet
話題の吠えるスウェーデン女子が政治家たちに地球温暖化の深刻さとそれに対する国としての対応のぬるさを訴える活動をはじめるまでの経緯とその後の展開を紹介してくれる子ども向けの読み物です。きちんと取材をして書いてくれたと信じるならば(子ども向けの本である以上そうであってほしい)、彼女は本気で地球の将来を心配しているし、彼女の行動がこうして世界に広まることで、これまで関心を持っていなかった人たちが良くも悪くも関心を持つようになったというだけで成果はあったと言える。とりあえず自分になにができるか考えよー。
読了日:09月28日 著者:Valentina Camerini