手続き記憶を見せる仕事

2018年04月03日(火) 18:18

UXいろいろ, 日本発信四方山話, 東京, リサーチャーの知恵袋
WANT TO SEE MY PROCEDURAL MEMORY?
Worked on a usability testing project with a novice moderator. The idea was that I set a great example, and the learner emulates the model. We worked in relay, session by session. It was pretty challenging, because I had to guarantee the quality of all sessions. Whenever he misled the informant, my heart hit my throat. Whenever he was about to move on to the next task without necessary probing questions, I had to cut in. Well, it was super tiring, to be honest. But, it could be an ideal on-the-job training, as doing it is the best way to share the procedural memory of mine. Does anybody want to pay for the similar training? This is a limited time offer!

先日お手伝いしたとある案件。ユーザビリティテスト(以下、UT)のモデレーターをクライアント(調査会社)のジュニアスタッフ(以下、A氏)と交代で担い、お手本を見せると同時に、A氏が担当するセッションにもアシスタントという名目で同席し、進行をフォローしつつ、休み時間には指導もするという山盛りのリクエストでした。

依頼を聞いてまず心配したのは、わずか8セッションを2人のモデレーターで分担することにエンドクライアント(調査の依頼主)が同意してくれるのかどうかということ。力量に(自分で言うのもなんですが)これほどにも差がある2人で分担することに、普通なら同意してもらえない。経験値豊富なほうに全セッションを担ってもらうほうが確実であり、業務としてはそうあるべきだと考えるのが普通です。で、調査会社がどう依頼主に提案したのかは知りませんが、あっさりOKが出ましたとさ。ビツクリ。ま、それで良いというならお請けしましょう。1セッションずつ交代で臨みます。

そして実際に分担制でやってみてわかったこと。他人(しかも初心者)がモデレートする調査の質を担保するのはとても大変で、胃がキリキリするってーことです。明らかな誘導教示が出るたびに「わぁっ」って声が出そうになるし、深掘りせずに次へ進もうとするたびに「その前にちょっといいですか…」と口を挟むことになるし、休み時間のたびに厳しいことを言わなくてはならなくて全然休めないし(A氏はもっと休めなかっただろうけど…)、いやホント疲れました。

もう一つわかったこと、というか、ビツクリしたこと、というか、激しくショックなこと。全セッションを観察された依頼主の皆さまが、モデレーター2人の力量の差に気づいていないらしき現実。これは、自負するほどには差がないということか…笑。いや、依頼主の皆さまの目が節穴なのだ…と、信じないと生きていけない泣笑。

そういうわけで激しく疲れる仕事の仕方ではあるのですが、そんな体制でモデレーションの訓練を積みたい!というやる気みなぎる方はぜひご連絡ください。モデレーターの教育という視点で見ると、この二人交代制には数々の利点があります。その中でも最上級の利点は、お手本モデレーションと未熟なモデレーションの両方をビデオに記録できること。納品物として録画したものが、そのまま社内向けの学習教材になるということです。ま、それを見ても差に気付かないとか、何が悪くて何が良いのか判断できないということであれば教材にならないですけど、なんならそれを一緒に見て、解説するというところまでをお手伝いすることもできそうです。終始、自画自賛という気持ちの良い仕事になるやもしれない笑。

それから、“お手本”を示さなければならないとなると、こっちの気合いもいつもの2倍増しくらいでした。休み時間に指導した内容を、次のセッションで、「どうだぁ!」と心の中で叫びつつ実践して見せたりなんかもして、我ながらスゴイぞ、コレ!とか思った(誰も褒めてくれないのでやっぱり自画自賛)。育成といえばセミナーだ、講義だと、そればっかりをお引き受けしてきましたが、手続き記憶化しているモデレーションの極意を伝えるには、やって見せるが一番なので、自社プロダクトのUTをやりたい!みたいな皆さん、早めに連絡ください。5月末までの期間限定なので。いや、意外と6月でもやれるかもしれないけど……ボソッ。