2020年7月の読書記録

2020年08月12日(水) 17:06

本&映画の紹介

出だしの3冊を見ると、まるで病んでる人だけど笑、ぜんぜん元気です。

殺人犯はそこにいる』は、とても暗く悲しい本当にあったコワイ話です。冤罪の恐ろしさが読了後もしばらく頭から消えません。

「ついやってしまう」体験のつくりかた』は、UXなんちゃらに関係する仕事をしている人やしたい人にはぜひ読んでほしい一冊です。ゲームあんまりしなくても読んで、理解できるように書いてくれています。『コンテクストデザイン』のほうは、UXというバズワードに対してすこしモヤモヤを感じ始めた人におすすめかな。

小説は『肝、焼ける』が良かったけど、女子向けかなー。北海道好きにも笑。


 

読んだ本の数:13
読んだページ数:3732
ナイス数:119


殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―(新潮文庫)殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―
『危険な読書』からの選抜7冊目です。嘘を隠すために嘘を重ねていった挙げ句の冤罪が、記者の執念で暴かれてもなお、真犯人をあげようとしないという信じがたい日本の司法の在り方をつきつけられます。警察も検察も政治家だって人間なので認知的不協和はあるだろうし、逃げたくなる気持ちを持つのは認知の仕組みとして自然ではあるけれど、そこを逃げずに踏みとどまる倫理観を持った人たちがそういう仕事についてくれているものだと信じている国民を裏切らないでほしい。こうして正義を追求してくれる記者がいることが大きな救い。
読了日:07月01日 著者:清水 潔


怒り(上) (中公文庫)怒り(上)
3人の怪しい男。だれが犯人なのか。だれもが人に知られたくない過去を背負っていて、複数の顔を持っている。近づけば逃げようとしたり、逃げるときにはだれかに追いかけてきてほしいとすがる気持ちにもなったりもする。人間って弱い。たったひとりで世捨て人のように生きられる強い人はきっといない。“怒り”という感情を他人に見せない男こそが犯人なんだろうな……とぼんやり。でもこの著者、時間軸をこっそりずらすの得意な人だったよな……と思い出して、3人の男の物語がおなじ時の中にいるのかどうか自信がなくなるなど。速攻下巻へ。
読了日:07月04日 著者:吉田 修一


怒り(下) (中公文庫)怒り(下)
泉が辛い過去を忘れられるように、最後まで男気を通す辰哉の心中察するに余りある。信じていた人の言葉がペラペラの嘘だったことに気づいたときの喪失感は、特に子どもにとっては計り知れない大きさだったことだろう。愛子が田代を信じ続けられたことだけが救い。お父ちゃんはそんな愛子をこれからも信じてあげてほしい。直人のことを信じられなかった優馬は早いとこカミングアウトして堂々と生きてくれ。いちばん心配なのは辰哉の父ちゃんと母ちゃんってことで。結局3人とも同じ時間軸上にいたんですね。深読みし過ぎました笑。
読了日:07月05日 著者:吉田 修一


「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ
著者のセミナーに先立ち再読して予習。今回は自分のセミナーや授業の設計に生かすつもりで読んでみました。参加者が前のめりでわたしの話に耳を傾け、演習に「つい」取り組んでしまうようにするにはどうすれば良いか。そして、すでにまあまあ上手に体験設計できていることに気づく(自画自賛笑)。でも、テンポとコントラストのモチーフを最大限に生かすべくいかに「戦闘」モードを取り入れるかは新たに考えなければならない課題です。初頭効果をねらった構成とスライドをめくるときの接続詞の使い方なんかも検討して取りこみたい。
読了日:07月06日 著者:玉樹 真一郎


海外で研究者になる-就活と仕事事情 (中公新書)海外で研究者になる-就活と仕事事情
海外で研究者になるどころか、研究者になる予定も意欲もないのだけれど、がんばって読了。日本を飛び出し、世界レベルの研究をしながら、第二言語を駆使して後人の育成にも尽力する人たちがこれほどいるという事実に安堵するのがひとつ。海外の大学が日本の大学よりも絶対的に優れているということではないことがチラホラ語られるところで胸をなでおろすのがひとつ。社会のため、世界のため、未来のために意欲満タンで研究に邁進したいと考える人たちががんばれる場所が減らないような社会をつくり、維持していくことが課題かと。
読了日:07月09日 著者:増田 直紀


草野心平詩集 (ハルキ文庫)草野心平詩集
ジャケ買い笑。詩集なのでかなり考えたけど、初志貫徹(カエル表紙は即買い)ってことで。1章の『蛙』の中では『ぐりまの死』がお気に入り。悲しい死だけれど、ぐりまというステキな名前の蛙の口に添えられた菫に花の持つ力を観る。2章『マンモスの牙』からは『わが抒情詩』ですかね。生きるって辛くて大変だけど、がんばって足を前に出していかないとね、と、ちょうど某俳優さんの自殺ニュースの直後だけに響きました。擬音語がものすごい臨場感で迫ってくる。そんな詩の数々でした。
読了日:07月14日 著者:草野 心平


贅沢貧乏 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)贅沢貧乏
恥ずかしながら森鴎外の娘が名のある作家さんであることを知らなかった。鴎外が名付けた孫(著者の息子)の名前が「𣝣」と書いて「ジャック」と読むって、すごいキラキラネームの元祖って感じ笑。著者のお嬢様ぶりもスゴイし、それを自虐的に書きまくった本書の中身は驚きの連続でありました。成金奥様を「贋もの贅沢」と切り捨ててくれるのは爽快だけれど、本人リアルお嬢様で本物贅沢に生きてきた人だから、正直ちょっと鼻につくね。生まれが人生にもたらす影響は大きいということで。
読了日:07月18日 著者:森 茉莉


コンテクストデザインコンテクストデザイン
「弱い文脈」でつながっているお店でしか販売しないらしく、それを帰国したときにたまたま見つけたわたしはエライ。強い文脈を背景に持つデザインが弱い文脈しか持たない読み手に誤読され、その読み手が文脈を強めて発信する側に回り、別の弱い文脈を持つ読み手にちがうなにかとして渡し、誤読を促す。そうやって織りなしていくものが「コンテクストデザイン」。コンテクストをデザインするのではなく、コンテクストなデザイン。エクスペリエンスデザインのモヤモヤを晴らしてくれそうだけど、わたしの文脈が弱いままなのでもうすこし……。
読了日:07月20日 著者:渡邉康太郎


肝、焼ける (講談社文庫)肝、焼ける
言うかな、肝、焼けるって?北海道の中でも北のほうの方言かな?あまり耳に馴染みがない。でも銭湯で交わされる会話全般は馴染む。親が友だちと喋ってるみたいだ笑。トラックの運ちゃんが怒鳴るところも、口調が父とめっちゃかぶる。脇から口を挟むヤンキーたちの「なっまら、受けるべや」ってそれ私のセリフだわー笑。という感じで、北海道生まれの作家さんが北海道のあちこちを舞台に書いた短編はどれも私の頭の中でかなりリアルに変換されました。楽しかった。『田村はまだか』をもう一度読みたくなっちゃいましたね。
読了日:07月22日 著者:朝倉 かすみ


マッピングエクスペリエンス ―カスタマージャーニー、サービスブループリント、その他ダイアグラムから価値を創るマッピングエクスペリエンス ―カスタマージャーニー、サービスブループリント、その他ダイアグラムから価値を創る
ずっと先延ばしにしていたコレやっと読了。以前つくったマップを「カスタマージャーニーマップ」と言って納品しちゃったけど、あれ「エクスペリエンスマップ」だったわ…みたいなことに気づかせてくれる一冊笑(笑い事ではないが…)。言葉の使い方が人それぞれで混乱を生んでいる現状に対する指摘があるのも助かるし、この流れでやっぱり棚上げし続けてきた『メンタルモデル』を読んでみようという気にもなった。でも、モデルの描き方までで、それをどう活用してデザインにつなげるのかってところは実践あるのみ。
読了日:07月26日 著者:James Kalbach


サイレント・ブラッド (角川文庫)サイレント・ブラッド
協力者を装って電話してきた村山さんが敵側だってきづかないのはおかしいぞー。いやそれより、深雪のナイスボディを赤裸々に描写して一成を誘うオババがおもしろかった。二人がよっぽどお似合いに見えたのかねぇ。霊能力的な物語はあまり好きではないのだけど、長野の山河の美しさが愛情いっぱいに描かれていて、そこに神秘を感じたにちがいない著者の気持ちを慮って信じながら読みました。やっぱり地元密着型の著作は地理的な描写にリアリティがあって、その分だけ読み応えが増しますね。
読了日:07月27日 著者:北林 一光


Symbols: A Universal Language (English Edition)Symbols: A Universal Language
知らないことがたくさんあるもんだというのがざっくりした感想です。5大陸を象徴する輪を絡めた五輪マークをデザインしたのはフランス人だけれど、5大陸すべてから参加国が出揃ったのは1912年のストックホルム大会で、そのときアジア代表として日本が初参加したのは歴史的瞬間だったらしいですよ。というのをスウェーデン滞在中に知って軽くグッときました。あと、火災保険のマークというのがあるのは知らなかった。ロンドンに行って探し回りたい笑。
読了日:07月28日 著者:Joseph Piercy


Svenska däggdjur - lekfullt illustrerade fakta om våra vilda vännerSvenska däggdjur – lekfullt illustrerade fakta om våra vilda vänner
スウェーデンに生息する哺乳類についてやさしく教えてくれる絵本。もちろんスウェーデン語。イラストがとびっきりにかわいくて勢いで買ってしまったが、テキスト量もまあまああって読むの大変でした。読んだというか、なんとか英語に変換して読む準備ができたくらいのところ笑。再読しながらスウェーデン語の勉強をしたい。イーゲルコット(ハリネズミ)は生まれたときはハリまだ生えてないんですってよ!ってあたり前だい。ハリビンビンの赤ちゃん産んだら母ちゃん死んじゃう。おんなじ感じの植物の本がないものか……。
読了日:07月30日 著者:Sara Hjelmstedt