2017年2月の読書記録

2017年03月28日(火) 18:44

本&映画の紹介

3月狂ったように働きながらもこんなに読書をしたのか~スゴッ、と思わせてしまうかもしれませんが、2月の記録である(笑)。3月はもうムリですわ…。それにしても『オービタル・クラウド』は本当に面白かったです。『京の大工棟梁と七人の職人衆』も、真摯に仕事をしていきたいと思っている人には座右の書になり得る一冊です。ともにいわた書店から届いた一万円選書から。後半の小説もオススメですが、『「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済』も、調査や研究を仕事の一部とする人には勉強になる。

 

読んだ本の数:10
読んだページ数:2776
ナイス数:48

 

オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)
【一万円選書⑥】解説を読んで、岩田さんがこれを私にオススメした理由がはっきりと分かった。一万円選書の中で、これまでのところこちらのSF小説がぶっちぎりの一位です。さて物語は、あいかわらずよく分からない専門用語に満ちておりましたが、日本SF大賞選考委員の一人篠田節子さんの言うとおり“なぜか理解できた気になって”すんなり読み進められる。丁寧な視覚描写が読者の頭に魔法をかけてくれた。とてもうれしいエンディング。でも、博士をこちら側へ呼び込めなかったのだけが残念だけどリアル。シアトル行きたい。
読了日:02月01日 著者:藤井太洋


UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのかUXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか
垂直統制型組織から水平協働型組織への移行がIoT社会を生き残っていくためには重要で、ユーザーエクスペリエンスを強く意識したサービス設計をしていかないと世界に追いついていけないですよ、という(最近よく聞く)話を、読み終えてみればひたすらくり返し書かれていた…ように思わなくもない。ちょいちょい自分と自分の会社自慢みたいなのが入ってくる笑。いや、ケーススタディみたいなつもりで読めばむしろ好感持てるかもです。会社経営や組織づくりにお悩みの方には参考になるかも、くらい。
読了日:02月02日 著者:松島聡


まだまだ知らない 夢の本屋ガイドまだまだ知らない 夢の本屋ガイド
よし、プックス高円寺へ行って『世界から私が消えたら』を買おう!とか、“カマドメガ”なんて名前、沖縄ならあり得るか…とか、『HOLE』いくらすんの?セレブじゃないと買えないの?とか、本気で思いながら読んでしもーたわぃ(笑)。ありそうなの出だしにきちんと持ってきているところに編集さんの腕と本気を感じる。とりあえず小林書店は普通にあってほしい。どこかの小林さん、作っておしまいなさい。みんな、どのあたりで気づくのかな? 私はアトム書房で「ん?なんかおかしいな…」と思いました。
読了日:02月04日 著者:


京の大工棟梁と七人の職人衆京の大工棟梁と七人の職人衆
【一万円選書⑦】棟梁として、師匠として、下請けで仕事をする職人として、そして人間として、本当に素晴らしい方だったんだということがはっきりと伝わってきました。著者も凄腕のインタビュアーです。インフォーマントの言葉を臨場感たっぷりに伝える工夫の施された名著。ホント。棟梁はもちろん、他7人の職人衆もそれぞれに人間の出来た立派な方たちだし、仕事ぶりはおそらく文句の付けようのないレベル。それでも皆さん、謙虚だし、目先の仕事を片づけるだけみたいな心持ちは欠片もない。人の上に立つプロ職人はかくたるべし。
読了日:02月05日 著者:笠井 一子


自分はバカかもしれないと思ったときに読む本 (河出文庫)自分はバカかもしれないと思ったときに読む本 (河出文庫)
自分はバカかもしれない、と思っている人に向けて書いているだけあって、やさしくて、わかりやすくて、あたたかい、そんな本です。考えることをやめないこと、違う見方をしてみること、先生の言うことを鵜呑みにする必要ないこと、算数大事! やっぱり英語も大事だってこと、なんだか、こないだ翻訳した本に書いてあったことそのままだなーって思いつつ、うんうん頷きながらあっさり読了です。疲れた大人の箸休めにどうぞ。
読了日:02月08日 著者:竹内 薫


はじめての認知科学 (認知科学のススメ)はじめての認知科学 (認知科学のススメ)
大変勉強になりましたー。ミトメ先生とまなぶさんのくだりははっきり言っていらないけど(笑)、認知科学という学問のはじまりと経緯が簡潔にまとまっています。簡潔過ぎて足りなかったり、理解しにくかったりするところもありますが、もっと紐解きたい人のための参考図書もちょくちょく紹介されているので、入り口としては申し分ないでしょう。ウィノグラード先生やノーマン先生、戸田先生に波多野先生、間接的にですがお世話になった先生方の研究が、どのタイミングでどのように影響を及ぼしたのかもわかります。入門書としてぜひ。
読了日:02月11日 著者:内村 直之,植田 一博,今井 むつみ,川合 伸幸,嶋田 総太郎,橋田 浩一


最高殊勲夫人 (ちくま文庫)最高殊勲夫人 (ちくま文庫)
玉の輿三重奏が見事に奏でられましたー、おめでとうございます(笑)。桃子、梨子、杏子の三姉妹が、一郎、次郎、三郎の三兄弟へ嫁ぐ話。楢雄(三姉妹の弟)の影が薄すぎて笑うわ。とりあえず三原商事には公私混同しかない。社長が社長室で愛人とイチャこくとか、もうベタ過ぎて面白すぎる。杏子がモテすぎな設定も強引だし、杏子に粉かけたおかげで転勤させられそうになる平社員あわあわだわ。その辞令があっさり引っ込むところもスゴイ。こんなんで商社が成り立つんかいな~(笑)。とにもかくにも、楢雄、ガンバレ。
読了日:02月13日 著者:源氏 鶏太


美しき一日の終わり (講談社文庫)美しき一日の終わり (講談社文庫)
健気に粛々と新しい生活に臨み、拒否されながらも前を向こうと努める義弟に対する母からのあからさまないじめ、愛人の子を我が子として愛し、育てよと背負わされ、その子に辛く当たるより他に取る術を見つけられない母の心情、そして何もできずにいる父の姿、そんな家庭をつぶさに観察しながら育った美妙はいつしか義弟を大切な存在として認識し、しかしそれを表に出すことはできず…、苦しみの末に嫁ぐ。嫁いでなお、想いは募るばかりだというのに。切なすぎます…。美妙にNYの摩天楼を見せてあげた旦那は偉かった。彼も辛かった。
読了日:02月18日 著者:有吉 玉青


「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)
祖父母の世代くらいまでは、日本でも“その日暮らし”というのが当たり前だったのだろうと思う。そこから抜け出すためにと社会全体が頑張ってくれたのだと。今も、そういう生活で成立している社会・国が確かにあるということを文化人類学者が、学者の視点で、フィールドから赤裸々に伝えてくれる奥深い一冊。“調査”や“研究”に少しでも関心があるならば読むべし。フィールドの面白さと難しさがぎっしり詰まってます。商業目的のユーザー調査なんて足元にも及ばないな…と少し省みつつ、しかし同じように真摯にフィールドワークを続けていきたい。
読了日:02月20日 著者:小川 さやか


美人薄命 (双葉文庫)美人薄命 (双葉文庫)
カエ婆ちゃんオモシロイし、カワイイ。私もユーモアたっぷりの婆ちゃんになりたいぞ。で、主人公の磯田総司。ボンクラでズルイ若者でスタートしたのに、ものすごい勢いで成長して、今後の自分の人生考えてせっかくの遺産をまるっと寄付できるくらいにまでなってしまったぞ、おいっ。それにしても戦時中の描写がかくも読者を引き込むとは…。ずっとこの旧字むかしの語り口で進むのかと思って最初は怯んだが、今と昔を文体も含めて行き来するのが見事な緩急になっていて読み止れない。辞世の句への名前の埋め込みはちょっと無理がないカエ?
読了日:02月25日 著者:深水 黎一郎