2023年1月の読書記録

2023年02月03日(金) 18:05

本&映画の紹介

幸先の良いスタートです。2桁達成はもちろんですが、UX界隈人としては目を通しておくべき本の積読があまりにも多くて怯んでいたのですが、1月中に3冊も読めました。そんな中でもおすすめは、断トツで『コ・デザイン —デザインすることをみんなの手に』です。上平先生の奥深い引き出しから出てくる、しかもとても読みやすくミスのない文章に感動すら覚えました。デザイナーさんは文章が下手だったり雑だったりタイポが多すぎたりする傾向があると勝手に思っていたのですが(失礼笑)、上平先生の書く文章はぜんぜんちがいましたー。本当に読みやすいし、そのうえいろいろ考えさせられる。業界人は絶対に読むべし。

小説はゆるいエンタメを2本+甥っ子から借りた深海に生きる意味深船長の物語。いずれもスルスルと読める楽しい物語でしたが、ひとつを選ぶなら木内一裕さんの『小麦の法廷』かな。次回作に期待。

そして土偶です。今年は土偶を見るために全国津々浦々へ行ってやるぞ。まずは近場で開催中の「縄文人の環境適応」と題するかながわの遺跡展から。これもおすすめ。



読んだ本の数:12
読んだページ数:3104
ナイス数:107

海底二万マイル海底二万マイル
甥っ子への誕生日プレゼントを渡す前に読んでみている年初。SFというジャンルの生みの親として知られるジュール・ヴェルヌの物語はなにげに初読。めちゃくちゃ面白いじゃん! 1869年、日本では年号が明治に変わって間もない頃、深海の様子を正しく推測し、描写したフランスの知性に驚愕しました。愛する家族を奪われた苦しみからと思われる復讐に燃えるネモ艦長とノーチラス号の謎が明らかにならないままなのはモヤモヤするけど、こんな物語を読めるほどに甥っ子が大きくなっていることにも驚いた。良き借り読みでした。
読了日:01月02日 著者:ジュール・ヴェルヌ

三谷龍二の10センチ三谷龍二の10センチ
松本のお宿で借り読み。「10センチ」の店主にして木の器をつくる作家さんがお店をつくるに至った経緯や想いを綴ってくれています。古いたばこ屋さんの建物をリノベーションする苦労が、はた目にはとても贅沢な苦労でしかなくて、やはり中古物件のリノベーションは極上っぽい。やるか?どこで? お店を持ったからこそできる贅沢も語られていて、本当に羨ましい。松本、良いところだなぁ。2年連続年初にお邪魔して、移住する人の気持ちも教えてもらって、ちょっと盛り上がってしまってるので少し落ち着こう笑。
読了日:01月04日 著者:三谷 龍二

信州の縄文時代が実はすごかったという本信州の縄文時代が実はすごかったという本
茅野市のお宿で借り読み。昨年、函館で「中空土偶」を拝見したのです。そして今回、茅野市出土の国宝土偶2体を見にいくのです。その前の予習ということで読んでみましたが、なんと学びの多いことか。縄文時代のことなんて、知ってるつもりで何にも知らない部類ですねコレ。顔面把手土器とか、釣手土器とか、魅力的すぎて、博物館へ行くのが待ち遠しいです。いやー、考古学は果てしなく楽しそう。老後にジワジワ勉強したいかも。
読了日:01月05日 著者:藤森英二

記憶のデザイン記憶のデザイン
記憶を辿るにはまず「知りたいが不明なことがある」という出発点(動機)が必要で、かつ「それを調べるのに適した検索語」を長期記憶の箱に持っていなければならず、かつ関連づけてそれを引っ張り出せないとならない。なるほど。途中で記憶の仕組みの確認が入ってて助かります。「記憶のデザイン」というタイトルがなんとなく最後までしっくりこなくて、途中で読むのをやめてたのを再読してみたけれどやっぱりしっくりこなかった。まぁ、著者も備忘録的なエッセイだと言ってたのでまとまってないんだな、うん。
読了日:01月05日 著者:山本 貴光

小麦の法廷小麦の法廷
オリンピック強化選手になるくらいまで大真面目にスポーツに取り組んだ人って強いな。身体だけじゃなく心も。というか、心が。それにしても、新米弁護士が(父親が塀の向こうに…というう事情があるとは言え)いきなりフリーで国選弁護とかってあり得ることなのかな? 指導教官が頼りになるような、ならないような感じだし笑。頼りになったのはその塀の向こうにいる親父で、彼をパラリーガルにして親子で悪に挑む次回作(があると信じてる)が楽しみじゃないかー。
読了日:01月09日 著者:木内 一裕

サービスデザイン思考 ―「モノづくりから、コトづくりへ」をこえてサービスデザイン思考 ―「モノづくりから、コトづくりへ」をこえて
かなり寄せ集め的な印象です(かつ一部コンテンツ泥棒を感じさせる部分あり笑)が、あとがきにあるように「一般的なビジネスパーソン向け」に書いた「縦書きのサービスデザイン本」が狙いだとしたらうまくまとまっているし、入門書として申し分ないように思う。ただ「サービスデザイン思考」というタイトルには出版社(または編集者)の戦略が見え隠れしてて内容はそこまで行っていない感じがしました。どこが足りないのだろうか?に応えるには自分がもうすこし勉強しなくちゃならない(ということに気づかせてもらえたということで)。
読了日:01月14日 著者:井登友一

土偶界へようこそ――縄文の美の宇宙土偶界へようこそ――縄文の美の宇宙
茅野市尖石縄文考古館の売店にて購入。楽しすぎる一冊でした。正面からのお顔だけでなく後ろ姿や横顔なども撮影してくれていて、すんげえ上を向いてる!とか、おっぱい飛び出しすぎ!とか、たしかに女性器が!とか、ページを捲るたびに大騒ぎ。稀有な男性土偶とか、眠る土偶とか、この目で見てみたい!と思うものがたくさんありました。欲を言うなら、どこの所蔵かだけじゃなく、公開されているかどうか、どこで見られるかなどの情報も添えてほしかった。自分で調べて見に行ってやるぜ。
読了日:01月15日 著者:譽田 亜紀子

800年後に会いにいく800年後に会いにいく
著者が原発に対していろいろ言いたい人であることがわかる、そういう物語(違っ)。アメリカで飛び級しまくった天才女子が良いこと言ったり、妄想したり、暴走したりして、当初頭わるそうに描かれていた日本男子が意外に物知りだったり、伸び代あるように見えたりして、エンゼル空野が結局良い仕事をしたのかそうでもないのかよくわからなくなったりして、総論としてはなんとなく消化不良。とは言え、コロナ禍以前に書かれたとは思えない(そうだよね?)現実とのリンク感に身震いするので、SFに抵抗を覚える人もきっと楽しめるエンタメです。
読了日:01月20日 著者:河合 莞爾

おはなし人間工学おはなし人間工学
1989年初版。旦那が工業デザインの道へ進むきっかけをつくった本らしい。シレッと本棚にあったので読んでみました。ものづくりの現場へ人間工学という学問がどのように貢献してきたかというか、貢献するための道筋をどうつけてきたかを教えてくれる良書でした。T芝の事例が多いのが気になったけれど笑、縁が濃かったんでしょうかね。ケーススタディ「鉄道車両用座席の改善」は、行動観察から改善提案へ繋がる展開がまんま人間中心設計でした。わたしは認知科学から攻めましたが、人間工学も勉強したくなったかも。いや認知科学の勉強も道半ば。
読了日:01月21日 著者:菊池 安行

神主はつらいよ――とある小さな神社のあまから業務日誌神主はつらいよ――とある小さな神社のあまから業務日誌
親が倒れて跡を継ぐことになった著者。神社や地域を実名で書くうえで、氏子さんが読むことも視野に入れざるを得ず、かなりオブラートに包んだ表現になってしまっていてすこし残念でした。心を込めて書いた御朱印がメルカリで販売される世の中ですから、自分の首を絞めるようになりかねないことは書けないと。つまり、企画倒れ…か笑。でも、8割以上の宮司が年収100万円以下だとか、お賽銭にキャッシュレスを導入している神社もあるとか、ちょっとした雑学は手に入りました。キャッシュレス賽銭を体験したい…。
読了日:01月22日 著者:新井 俊邦

コ・デザイン —デザインすることをみんなの手にコ・デザイン —デザインすることをみんなの手に
著者の引き出しの多さと深さに感動しっぱなし。モノからコトへは、単に製品からサービスへと説明される場合が多いけれど、コトは「つかう中でかたちづくられ、そして日々少しずつ変化」していくものであり、そのデザインをデザイナー任せにしていてはうまくいかないですよね。ってことで結論に飛ぶと、参加型デザインでも共創でもインクルーシブデザインでもなく、コ・デザインなのだと。デザインの歴史と背景を丁寧に抑えながら、きっちり腹落ちするように編んでくれていて読み応えも抜群。もっと早く読むべきでした。
読了日:01月25日 著者:上平崇仁

メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界
メタバース原住民1,200人に実施した「ソーシャルVR国勢調査」の結果を元にメタバース界隈の様子を原住民自らが解説してくれました。回答者の約9割が日本人なので、日本人メタバース原住民の話と思って読みましょう。生まれ持った肉体を脱ぎ捨てて「なりたい自分になれる」ことの価値がくり返し語られて、自分はどんなアバターを選ぶかな?とちと妄想したけれど「よしやってみよう!」とはならなかった。なんでだろう?リア充だから?ヘッドセットがめんどくさいから?それほど魅力的な世界には映らなかった。一度は行ってみたいけども…。
読了日:01月29日 著者:バーチャル美少女ねむ