2018年10月の読書記録
2018年11月06日(火) 19:58
本&映画の紹介10月も小説多めになってしまったなー。中でも『静かな水のなかで』は、スウェーデンのここ10年くらいを知るのに良い物語だということが判明したので続編も楽しみ。『記憶破断者』は近い将来に読み直し確定。人の記憶の特性から考えて、間を置かずに読み直すべきのような気がしなくもないが。勉強本があまりにも少ないので月末に駆け込みで『UXリサーチの道具箱』を読んでみたけど、中身はいいけど装幀が許せないという気持ちは変わらなかった笑。
読んだ本の数:11
読んだページ数:2940
ナイス数:235
欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)
とりあえずレクター博士のことばが良いです。教えてくれてありがとうという気持ちでいっぱい。「われわれは日頃目にするものを欲求する」とな。そうそう、ユーザーの「これが欲しかったんだよぉ」は、見える状態で提示されて初めて言えることで、自らそれを意識し、言語化できるわけではない。だって人間だもの。例外として見るか、予兆として見るか…という話もメモメモ。今年追加したスライドで伝えようとしていることはまさにそれだった。そういうわけで、とても参考になる一冊でした。マーケの人とも分かり合えそうだと久しぶりに思った笑。
読了日:10月01日 著者:嶋 浩一郎,松井 剛
静かな水のなかで 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
スウェーデンで人気の女流作家シリーズ一作目。ミステリー小説としての面白さ以上に、スウェーデンのいろいろがわかる物語。日ごろからお世話になっているシステムボラーゲットの社員がちょっと悪さしてるとかいう設定は、スウェーデン人にとってはいかにも「ありそう」なことなんだろうな。原著の初版発行が2009年ということでおよそ10年前…。妻が仕事で活躍することに対する夫の考え方とか、この10年でおそらくかなり変わったんだ。そういう時代の移り変わりを知る手がかりにもなる。夏季休暇に対する執着は変わってない笑。
読了日:10月06日 著者:ヴィヴェカ・ステン
奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの
中学生の頃、自転車でよく行っていました、くすみ書房。当時は読書意欲のないダメ中学生で、漫画にしか用事がなかったし、くすみ書房へ行くのも大事な漫画にかける透明なブックカバーを求めてのことでありました…。懐かし過ぎる笑。その後、くすみ書房がかくも斬新な取り組みを始めたり、挫折したり、大谷地に移転したり、ご家族(と最後にはご自分)の病闘にご苦労されたりしていたとは知らず、それにしても癌に苦しめられるご家系ですね…とそれはさておき、本屋の経営がそれほどに大変だということを思い知らされました。もっと本を読もう!
読了日:10月07日 著者:久住邦晴(くすみ書房・店主)
的を射る言葉 Gathering the Pointed Wits (講談社文庫)
#37-2 言葉、#48 人間、#58-1 仕事、#70 表と裏、#76 無駄、#105 正解、#106 視点あたりがお気に入りというか、心に刺さったというか、反省するしかないというか。しかしいちばん感心したのは#107 予測です。よく28号まで予算が続いたな、鉄人……と、これで馬鹿笑いできるところで歳がばれる笑。
読了日:10月08日 著者:森 博嗣
記憶破断者
前向性健忘症でも手続き記憶は定着し得る、というところに職業柄もろ食いついてしまい、そこに気を取られながら読んでいたら伏線を取りこぼしまくりで、ラストの「黄色い歯」のところで、なんかものすごく大事なことを落としてるぞ、自分!ってことにやっと気づいた。しかも、皆さんのレビューを読んで前作だのスピンオフだのがあることを知り、とりあえず全作とおしての読み直しを覚悟しました。記憶が飛んだ頃にすっきり一から出直して楽しみたいと思います。
読了日:10月14日 著者:小林 泰三
老人の取扱説明書 (SB新書)
老後に備えて亜鉛をたくさん摂取することを意識した食生活を送ったり、発生訓練をつづけて声をキープすることを目指したり、やっぱり歳を取るって大変ですね。唯一、読書が認知症予防になるというのは朗報だったかな。加齢による衰えを感じることが日に日に増えて、さいきん老眼も始まったっぽいし、すでにツライわけですが、ぜんぜん元気な親とかを見ていると、こちらが弱音を吐くわけにはいかないとも思いまして、読んでいてツライ読書もなんとか終了です笑。
読了日:10月16日 著者:平松 類
この世界はあなたが思うよりはるかに広い ドン・キホーテのピアス17
よし、わたしも一年の終わりに「七味五悦三会」を思い、その年をふり返ることにしよう。と、それはともかく、20年も連載しているのですね。書き続けるエネルギーがすごい。20年も続ければ、世の中の変化とそれに対する自分の想いの変化と、それをメディアで綴ったことに対する世間の反応の変化と、ほんとたくさん感じることがあるでしょうね。それをギュッと凝縮すると「日本は窮屈になった」ということなのだろうと思いました。お疲れ様です。見習ってがんばります。
読了日:10月18日 著者:鴻上 尚史
コンビニ人間
「変な人って思われると、変じゃないって自分のことを思っている人から、根堀り葉掘り聞かれるでしょう?」と、主人公が妹に語った言葉がすごい沁みた。内省が必要だと思った。それなのに、白羽の言動に逐一イラ立ち、こいつ頭おかしいんじゃない?とか思ってしまうあたりで内省が足りないとも思った。二人が一緒にいることを知った後の周囲の変わりようが恐ろしいレベルでしたね。それにしても、主人公の観察力や洞察力は素晴らしい。差別する人を2種類に分けた見解にも唸ったわぃ。
読了日:10月20日 著者:村田 沙耶香
羊と鋼の森
「小学6年生にしては力強さが足りない」と調律師さんに言われて、「なんでこのおっちゃんにそんなん言われてんの、わたし」と思ったことがあったっけ…。ただ習わされていただけだったんだな、ピアノ。この物語を読んで、もっと違う音楽との出会い方をしたかったな…と素直に思った。和音が奏でるピアノを聞きながら、たとえ話が上手な柳さんの結婚式に列席して、板鳥さんと社長に遠回しに褒められる。悩みながら苦しみながら、羊と鋼の森を進んでいく一見ふつうの、でもとても素敵な外村くんの人生を心から応援したいと思う、そんな清々しい読後。
読了日:10月22日 著者:宮下 奈都
砂の女 (新潮文庫)
カマキリ先生(香川照之さん)がコレを読んでハンミョウの虜になったと五時限目に言っていたけれど、その気持ちは最後までわからなかった笑。そんなことより、人間の愚かさと逞しさをじわじわと考えさせてくれる、いろいろな意味でコワイ物語でした。砂時計のごとく毎日が仕切り直し。同じことの繰り返し。耐えられず新しい何かを試しては失敗し、でも生きることへの欲は決して失わない。枯れることがない。毎日淡々と慣れ親しんだ生活を繰りようになりがちな現代人に対する深いメッセージが込められている…とか、いないとか。
読了日:10月26日 著者:安部 公房
UXリサーチの道具箱 ―イノベーションのための質的調査・分析―
インタビューの本とペルソナ本、わたしが関わった本を2冊も紹介してくれていて感激。内容も端的によくまとまっていてUXリサーチする人には良い教科書になりそうです。この著者のスゴイところは、手法や蘊蓄の土台になっている研究や研究者のことを丁寧すぎるくらいに引用するところ。そういうリサーチをずーっと続けてこられているところには頭が下がります。しかし装幀がダサいところは許せない笑。UXリサーチャーはデザイナーではないからダサいの仕方ないよね…と読者に思われそうで嫌、ホント。
読了日:10月31日 著者:樽本 徹也